表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とあるハイヤー乗務員の運命  作者: 三笠 大和
9/24

8 再び転機

あの一件以来、光雄ととの夫婦仲は改善されてきたかに思えた。

そこそこ交わりもしたし、二人の姉妹もやんちゃながらスクスクと育っていた。

ただ、光雄には智花の裸の姿を一切自分にさらけ出そうとはしなかったことが、なんとなく気にはなっていた。。

明るい時には絶対に肌を見せようとはしないこと。

また、常夜灯であっても営みの際には必ず消すように言われる事。

行為の予想されている時には、長い時間トイレにこもっていることである。

とはいえ、光雄は智花に対して直接指摘する訳でもなく、さして問題ともせす、まあ、そんなものだろうと考えていた。

これ以上の詮索は、折角改善しかけている関係に水を差すともおもっていたのだ。


月日は流れ、愛人契約の話から約一年が経とうとしていた。

トップダウンのこの会社、ある程度予想はしていたが、光雄に対するバッシングは相当なものがあった。

まず、業務。

ひたすら資料の要約を作成する事、又、何かクレームがあれば、クレームを引き起こした当事者ではなく、光雄が客の所に赴いた。

罵声どころの話では無い。光雄個人を訴えるという事を言ってくるクレーマーもいた。

しかし、光雄は一つ一つの案件に真剣に取り組み、解決をしていった。

いつしか、光雄は、その会社のお客様窓口として機能する様になった。


そこで面白くなかったのが、室長と、黒幕である社長である。

保険募集自体嫌がっていた光雄にとって、他人の尻ぬぐいをさせれば、きっと音を上げるはず。泣きついてくるに違いないと想定していた。

プライドの高い光雄にはその方法が最も有効と考えていたのだ。

しかし、思惑と違い、光雄は上手くやっている。


次のステップとして、社長はそのコネクションを利用し、保険会社本体のクレーム対応窓口のアウトソーシングの仕事を受注してきて、光雄に責任者として振ってきた。

そこでも問題の無いように、理不尽とも言える仕事を光雄はこなしていった。


ただ、家族が生きる糧の給料は、極限まで減らされていた。

社の考えは、利益を産むものは収入を得る。というものであった。

即ちクレーム対応は利益を産むものではなく、減る利益を食い止めるものである、お金は産み出さない。従って収入には反映しないというものであった。


社長からは、何度も考えを改める様に促されたし、室長からは、少しでも対応が気に食わなければ、最早パワハラとも言える様な罵声を投げかけられた。


もう限界かもしれない。

貯金はもうすぐ底を突く。


そう思っていたある休日、インターネットを見ていた智花が、光雄を呼んだ。

「これなんてどう?」

画面には「これを最後の転職としませんか?」というキャッチコピーと、ハイヤー乗務員募集の文字が踊っていた。

「そのバナーをクリックしてみてよ」

そう光雄が智花に話しかけた瞬間、アレが襲ってきた。電流である。

「ごめん智花、あれだ。ターニングポイント。大きな選択の場面!」

これ以上のシチュエーションはないだろうという時にである。

「つまり、この会社に入ることが、一生を決めるということね。」


そこ迄の事かは後に評価出来るだろう。


智花は画面を進めて行く。

『正式採用の平均月収は41万円。』

『厳しくも日本経済を引っ張るのは私達という自負があります。』

その様な言葉が並んでいた。


智花は、光雄に悪いとは思いながらも、これだけの収入をもらえたら、あの呪縛から逃れられる。光雄との人生をまた歩む事が出来る。そうおもっていた。

智花は画面の隅々までチェックする。

つまりはこういう事だ。


ハイヤー乗務員になる為には、まず普通2種免許の取得が必要となるが、その費用は1年働けば、返済の必要は無いとの事。


但し、試験採用の期間があり、その中で適していると判断された者だけが、本採用となる。

不適格者は退職か、タクシー部門への転属もあり得る。


しかし、智花は光雄が収入面ではなく、人格的に適していると直感で悟った。

19年も一緒にいるんだもん。

あなたの事はあなた以上にわかるんだから。


光雄も意見は同じであった。

万一、不適格と判断されたらどうしよう、でもそれはどの会社も同じ事。

最低限の収入を得る為に、今の会社を退職の意思を表明するのは、まず入社が決まってからにしよう。

その様な会話を交わしながら、その日の内に人生設計を二人は練り直していた。


クレーム対応の役割りを課せられていた光雄は、今更ながら平日休みの有り難みを感じていた。

概ね中途社員の募集面接など、平日にしか行っていないからである。


面接は上手くいった。

その日の内に、指定の医院に身体検査に行くように指示をされた。

問題はないだろう。


翌日以降も光雄は、粛々と仕事をこなして行った。

周囲の人間に決して気取られないように。


ハイヤー会社の採用担当者から連絡が来たのは、丁度休日であった。

面接の8日後の事であった。

結果は内定。

いつから来社出来るか、キツイ仕事だが、本当に覚悟はあるのか、家族の了解は得られているのか等、慎重にヒアリングがあった。

光雄は決意と家族の理解の話をし、入社の意思が硬いことをつげた。

その上で、入社は1ヶ月と5日後。3月16日を希望し、了承された。


智花に何があったのかは、後日ノクターンの方で書こうと思います。

本日中に、次話を投稿する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ