83話 元凶のお出まし
カイの力により、冥界の空を覆う雲から槍のような巨大雹が降り注いできた。
『ギィイ! ギィイ!?』
巨人妖精は雹を一身に喰らい悲鳴を上げる。
しかしトドメを刺すまでには至らないようだ。
(だけど、大きな隙が生まれた!)
「今だっ!」
やがて雹が止んだ見計らい、ルキは妖精に向かって無数のツタを伸ばした。
『ギャッ!?』
氷の巨人を覆っていたツタが巨人妖精に伸び、巨人妖精を拘束。
「それっ!」
ツタが更に頑丈に巻きついたところで、銀の鎧巨人を操作していたシロガネは、自身の手元にいた別の巨人妖精を投げつけた。
銀の鎖に巻かれた巨人妖精はツタに巻かれた巨人妖精とぶつかる。
「おらっ!」
「それっ!」
そこからルキとシロガネは互いの武器で妖精を更に拘束。
2体の妖精は銀の鎖と頑丈なツタに巻かれ、完全に身動きが取れなくなってしまったようだ。
「トドメだっ! シロガネ!」
「ええ!」
ここでルキとシロガネは更に追い討ちをかける。
氷の巨人と銀の鎧巨人は拘束された巨人妖精に抱きつき、自身の身体をツタと銀で更に拘束。
『ギィ……!?』
『ゲェ……?』
これにより妖精達は完全に動けなくなった。
「これでどうだ!」
妖精達を拘束したところで、カイは空に視線を向けた。
「……」
空高くにいる、特大の火炎球を抱えたマモルは無言のまま頷くと、待ちの姿勢を崩して投げの姿勢に入った。
「カイ! 全力でこの場から離れろ!」
「よし!」
カイとルキは急いで氷の巨人から飛び降り、シロガネも後を追う。
「それっ!」
カイは地面に向かって力を飛ばす。力がぶつかった地面から大量の粉雪が発生し、カイは粉雪の山に着地した。
ルキは地面に生やした植物に着地し、シロガネは何処からともなく取り出したホウキに乗って空を飛び、優雅に着陸。
「よしっ!」
全員が妖精達から離れ、天を見上げる。
マモルの手により投げられた火炎球は、じわじわと移動して地面に接近しているようだ。
「遅い……」
「だが、あれでも十分らしい。カイ、目の前の妖精を見てみろ」
「?」
カイは素直に視線を巨人妖精に移す。
「あっ! 妖精達が……!」
目の前で拘束されている巨人妖精達が輝きを放っていた。
「マモルの火炎球で、妖精達の魔力が燃焼されてるのか……?」
「それしか無いだろ」
火炎球が妖精に接近するにつれて妖精達は更に輝き出す。
そんな光景を前にするカイにも変化が。
「……あれ? えっ!? なんかオレもやられてる!?」
なんとカイも輝きを放っていた。
「なあルキ! これって……あっ!」
「カイ落ち着け」
カイは慌ててルキ達のいる方を向くと、なんとルキとシロガネの全身が輝いていた。
よくよく見ると、カイの身体もキラキラと輝きを放っていた。
「これって大丈夫なのか……!?」
「簡単に言えば、能力者特有の現象かな……まあ、オレ達のは魔力が燃焼されてる訳じゃないし、害はないから大丈夫だ」
「そうか……」
ルキは輝く手のひらを見つめ、改めて目の前で輝く巨人妖精達を眺める。
魔力で構成された巨人妖精達は更に輝きを放ち、妖精達を拘束していたツタや鎖も輝きを帯びていく。
やがて妖精は光と消え去ってしまった。
「火炎球も消えた……」
空で輝いていた火炎球は跡形もなく消え去り、空に浮かんでいたマモルはカイの隣に降り立つ。
マモルは消え去った妖精の跡を眺めながら口を開いた。
「よし……とりあえず此処は終わったな」
「マモルのお陰で跡形もなく消え去った。さーて、残りの妖精も探しに行くとするか」
「……あっそうか! この妖精はほんの一部なのか!」
「ヴィオさんが大勢の巨人妖精と戦ってただろ」
ようやく役目を終えたと勘違いしていたカイは、ルキの言葉でまだ妖精が残っていることを思い出した。
「あとどれだけ残ってるかな……マモル、分かるか?」
「分からん」
「人に分かるわけねーだろ」
カイとマモルのやり取りにルキは呆れながら口を出す。
「携帯で周囲の妖精を把握はできるが……とりあえず範囲内には居ないようだな」
「良かった……!」
「良くねーだろ。この範囲外に妖精がいるってことだろ」
「あっ、そっか……」
「カイ。焦るのは分かるが、そんな判断を急ぐな」
ルキはカイを宥め、携帯電話をいじりながら辺りを見回す。
「とりあえず、魔力の高い方角を目指して走るとするか」
「分かった! マモル、大丈夫そうか?」
「ああ……なあカイ」
「どうした?」
「なんかこっちに来てないか?」
「えっ?」
マモルは遠くの荒れた山を見つめながら指を刺す。
「……なんか、すごい速度でこっちに来てる……?」
「やばい! 構えろっ!」
「えっ?」
遠くで土煙を巻き上げながら駆けてくる何かを見たルキは突然叫んだ。
「一体何が……」
カイはその場で構え、ルキに何が来るのか尋ねようとしたその時。
遠くで土煙を上げながら走っていた何かは突然その場から消えた。
次の瞬間。
一瞬にして人型の何かが急接近し、カイを目掛けて飛び込んできた。
「っ!?」
突然の飛び蹴りにカイは驚く。しかし、ルキに言われて事前に身構えていたので、咄嗟に氷の壁を斜めに出して攻撃を受け流した。
飛び蹴りの姿勢のまま飛んで行った相手を睨みつつ、カイは体勢を立て直した。
「危なっ……!」
「凄い反射神経だな」
「大量の魔力ですぐに壁出せたから助かった……!」
ルキが褒める中、カイ達は力を手にしながら身構え、飛び蹴りにより凹んだ地面を睨みつける。
『避けられちゃったか』
凹んだ地面から飛び上がって姿を現したのは、若い見た目をした男性。
どうやら彼は妖精らしく、冥界で彷徨いていた人工妖精とどこか容姿が似ていた。
『残る妖精は僕だけになっちゃった。あーあ、折角あんなに増やしたのに……』
「増やした……?」
「気をつけろカイ」
困惑するカイにルキは忠告を挟む。
「コイツは冥界で大量発生していた人工妖精の素だ」




