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55話 異界と人工妖精

 ファンタジーランドにて。奇妙な音を辿ったカイとヒョウは妙な異空間に移動し、その先で不思議な格好をした敵対的な人工妖精を発見した。

 その数、おおよそ20体。


「何だかよく分からないけど、こっちに危害を加えるつもりならこっちだって容赦しないからな!」


「兄ちゃん、私も手伝う!」


 ヒョウは身構えるカイの隣に立ち、カイと同様に構えの姿勢を取る。


「やあっ!」


 ヒョウは手元から水の刃を作り出すと、妖精の群れを目掛けて勢いよく飛ばした。


 幾つも生み出された水の刃は妖精に向かって飛んでいき、やがて一部の妖精に命中した。しかし……


「あまり効いてない!?」


 一部には避けられたが、相手の腕や胴体に命中。しかし妖精には軽い傷ができた程度で、致命傷からは程遠い。


『ギャギャギャーッ!」


 攻撃を受けた人工妖精達は大激怒。攻撃を仕掛けてきたヒョウに狙いを定め、全力て飛び掛かってきた。


「やば……!」


「ヒョウ下がれ!」


 カイはヒョウを手で制して下がらせると、妖精を目掛けて両手から輝く結晶を幾つも放出した。


『ギエッ!?』


『ギャ……』


 輝く結晶は妖精に次々と命中。妖精は結晶と衝突し、その場から姿を消していく。

 

「兄ちゃんすご……」


「ヒョウ! とりあえずどこかで身を守っててくれ! それと、これ渡しとく!」


「これって……!」


 カイはスカジャンに付けていたシールドバッジをヒョウに手渡した。


「シールドバッジ! それ付けて此処から逃げろ! あの変な妖精はオレが全部倒す!」


「……分かった。兄ちゃん、任せたからね」


「おう!」


 ヒョウはその場から退散し、カイは両手に氷製のバックラーを生み出し装着する。


『ギャギャ!』


「させるかっ!」


 ヒョウの後を追おうと飛び出した妖精に結晶を撃ち込んで仕留める。


「ここからはオレが相手だ!」


 カイは気合いを入れると、妖精の群れに向かって突撃を開始した。




「やはり、使えそうなのは兄だけでしたか」


 カイが次々と妖精を蹴散らしていく光景を高所から遠巻きに眺めるのは、妖精騎士団の団長リーシュ。

 彼は風を操り、カイ達にのみ奇妙な音を聴かせてこの異空間に誘い込んだ張本人だ。


「フェアリーゴーレムよりは弱いとはいえ、相手は妖精の群れ……彼に全て倒せるでしょうか」




 一方、護衛の為にカイを追いかけていたヴィオは、異空間の先に嫌な予感を察知。


 カイの行く先に目立った障害物が無いことを確認すると、ヴィオはスポーツカーを超える速度で更に奥深くへと進んでいく。


 移動するにつれて殺風景な環境へと変わっていき、やがてヴィオは切り立った崖の上に到着。



「何なんですかこれは……!」


 崖の上から景色を見下ろしたヴィオは驚き目を見張る。

 空間には裂け目が出来ており、眼下に広がるのは悍ましい数の人工妖精。数は100を優に超えているだろう。


(まさか、あの裂け目から人工妖精が……!? この人工妖精が表に溢れ出す前に、この場で片付けなくては……!)


 ヴィオは手元から大きな宝石を生み出すと、眼下に蠢く人工妖精を目掛け、さながらバレーのスパイクのように宝石を撃ち込んだ。



 宝石は空中で割れて無数に分散。力のこもった宝石の雨が妖精を襲った。



 地面に着弾した宝石は瞬く間に成長し、その場で破裂して周りに鋭い宝石を放っていく。



 無数の宝石に貫かれた妖精達により、崖下からけたたましい悲鳴が響き渡る。



「すぐに片付け、シロヤマさんと合流しなくては……」


 ヴィオは片手に美しい宝石製の剣を生み出すと、崖を垂直に駆け抜け、未だに悲鳴の絶えない妖精と宝石群に飛び込んだのだった。




 ヴィオが1人で人工妖精の群れを対峙していたその頃。


「それっ!」


 カイは囲まれないよう結晶を生み出しながら立ち回りつつ、順調に人工妖精を倒していた。


「やあっ!」


「ゲヤッ!?」


 最後の1体をバックラーで殴り倒せば、妖精は地面に倒れてその場から消え去る。この場から妖精は軒並み姿を消した。


「よし、大勢に囲まれても冷静に対処できた……」


 敵が消え去り、カイはほっと一安心。


 そんなカイの耳に、再び何かが割れて避ける音が響いた。


「何だ!?」


 慌てて音のした方に目を向けると、そこには異質な光景が。


「なんだこれ!? 空中が……裂けてる!?」


 カイの目の前で空間が裂け、そこから新たな人工妖精が姿を現し始めた。


『ケケケ……』


「まだいるのかよ!?」


 人工妖精は嫌な笑みを浮かべながら、目の前にいるカイを囲んでいく。


「……むしろ好都合だ。オレの近くで発生してくれて助かった」


 カイは両手のバックラーを構え直し、妖精を前に堂々と叫ぶ。


「オレはまだ平気だ! 全員かかってこい!」


『ケケケーッ!』


 カイの大声を皮切りに、カイを囲んでいた妖精達は一斉に襲い掛かってきた。


「さあ来い!」


 カイは四方から飛び掛かって来る妖精を前に、足元に力を溜め込んだ。結晶を足掛かりに空へと飛び上がるつもりだ。



 しかし、カイが空へと飛び上がろうとしたその時。遠目から眺めるリーシュでも想定外の事態が発生した。



「てやーっ!!」




 突如として、この場に空気を震わせるかのような凄まじい掛け声が響き渡った。


「えっ!?」


 大声にカイが驚くのと同時に、妖精の群れに大柄な男が飛び込んできた。


「それーっ!!」


 男は両腕を振り回し、群がる妖精を次から次へと薙ぎ倒していく。


『グエッ……』


 剛腕により叩き潰され、妖精は呆気なく消えていく。突然この場に現れた大男を一目見たカイは、途端に嬉しそうな表情へと変わった。


「オオガシラ!」


「カイ! よく分からん状況だが、今は力を合わせる時だと判断した。共に行くぞ!」


「おう!」


 カオルの言葉にカイは力強く頷き、残る人工妖精の群れに向かって力強く構えた。




「オオガシラ・トオル……!?」


 その光景を高所から眺めていたリーシュは、唐突にあらわれた番長に驚き戦慄する。


「あの人工妖精を素手で叩き潰した……!? そもそも、力を持たない一般市民は入れないよう手配した筈なのに、何故この場に……!?」

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