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理想をつくる


ぱっちり二重のまぶたに、星降る大きな瞳。鼻筋がすっと通り、唇は薔薇の色。

――そんな理想の顔とは、ほど遠い顔。


そこそこ胸があって、ウエストはきゅっとしまり、お尻、太もも、足首のラインが、同性からも釘付けになるスタイル。

――そんな体型、夢のまた夢。


最新のハイブランド、いにしえのクラシックドレス。どんな服だって服に負けず着こなしてしまう。

――中学、高校と使い古したジャージが、いつもの普段着。


多くの人に囲まれて、みんながみんなが褒め称え、憧れの存在として好かれる。

――心許せる人なんていない。それどころか、いつも怒鳴られてばかりいる。


いるかいないのか、自分でもわからないわたし。

そんなわたしが、思い通りのわたしになれるのか、とあるSNSのアバター。

アバター。電子上の着せ替え人形。

最初はボブの髪型に、白いシャツと黒いパンツだけだったその姿が、ガチャをまわしたり、ゲームクリアで入手したり、時には交換で得たアイテムを、とっかえひっかえ自分の理想を詰め込んで変えていく。

アイテムは服だけではなく、

――わたし、こんな顔だったらいいのに。

――わたし、こんな体だったらいいのに。

――わたし、こんな服を着れたらいいのに。

――わたし、一目置かれる存在だったらいいのに……

多額の換金と、それにまつわる数多のトラブルがあると耳にしたけれども、今では幾つもの電子上の着せ替えを楽しみ、最近はSNSのプロフ画像を自作する。

自作といっても、憧れの人の顔写真に、ネットで拾った一目惚れしたプロポーションをつなげ、ファッションショーから心奪われ、保存しておいた衣装を切り取り、貼り合わせるだけ。

なかなか思い通りの画像を作ることができなかったけれど、AI画像の登場でそれは一変した。

あぁ、素敵、素敵。SNSに呟く言葉は、これはいいなと思った言葉を、写したものを書き込んで、

今日もわたしは、SNS上でなりたいわたしに、なりきり続ける。


そんな、ある日のこと。

買った覚えのないレシートが出てくることが多くなった。

まず、コスメ。ファンデーションやまぶたを二重にするためのテープ。それなら買ったかもしれないけれど。、

次に下着。ブラとパンツは買ったかもしれないけれど、矯正用の下着なんて買った覚えがぜんぜんない。まぁ、返品しようにも下着類は返せないけれど。

そして服。季節変わりに買ったのかもしれないけれど、女優さんや俳優さんが着るような衣服、特にオーダーメイドの服。さすがに注文した覚えがないけれど、店員さんは確かにわたしが注文した商品だと言う。

そうして、購入した記憶のない買い物がおきる前日、必ずSNSにこんな書き込みがあることに気づいた。

「こんなわたしになりたい」

――それは、わたしの常日頃の口癖で、プロフ画面が、その購入した品々を身につけたアバターに変更されている。

わたしは首をかしげながら、返品できるものは返品し続けた。

そんな毎日の繰り返しの中、わたしの先輩や同期次々と結婚していき、とうとう一番の友人の入籍の報告に、わたしもこんな花嫁姿になりたいと書き込んで……


目を開けてください。

耳元で囁く女性の声に、鏡に越しにわたしの顔が映り込む。電子上から集めた情報で作り上げた顔、身体つき、そしてウェディングドレス姿。

皆さん、お待ちですよ。

わたしはスーツ姿の女性に言われるがまま、先導されていく。

だけど、その行く先々が、剥がれ落ちる直前の付箋の寄せ集めのように見えてきて、ふと見た大鏡に写し出されたわたしの姿に、英字に数字が組み合わさった字がびっしり描かれた付箋が次々と浮かびあがり、

「こんなわたしになりたかったのじゃないの?」

鏡の中のわたしに呼びかけるわたしの声。

同時に、SNSに書き込まれ、ブロックしていった数々の言葉がわんわんと溢れかえり、わたしの人格が消……



お題「二重人格ごっこ」

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