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感想文部

嬉しかった。

怖かった。

哀しかった。

楽しかった。

そんな陳腐なものではなく、もっと想いを感じる文を絵を書きたいけれど、そんな文をいざ書こうとしたら、そのような絵を描こうとしたら、風のように、水のように、するり筆先からすり抜けていってしまう。

そんな悩みをぼやいたら、

「そんな時は、感想文部を探したらいいよ。この学校の感想文部は、美術室と音楽室の間にあるから」

そう、先輩に教えられたけれど、美術室と音楽室の間ってどこかしら。 美術室は二階、音楽室は三階にあるのだけど。

「感想文部は何か想いを感じた時、その扉が開く。そして、その扉を開ける鍵は図書室にある」

もう一人の先輩は、こうも言っていた。半信半疑のまま、わたしは今日も図書室へ足を運ぶ。

放課後、教室から図書室へと向かうその合間、合間、風にのって運動部が発する声に、キュッキュッと靴が滑り止まる音。ボールが弾む音に、ホイッスルの音。校舎のあちこちから、吹奏楽部が楽器の音、音、音……

そんな音を聞きながら図書室に。そうして図書室の奥の本棚に見つけたのは、小さな水晶体。

誰かの忘れ物?

手にした途端、目の前に拡がったのは野球。皆の視線を集める彼らの姿。

ああ、あれはわたしが小学生の頃、連れられて行って見た球場の光景だわ。その時耳にしたのは、今、吹奏楽部が練習している音の完成形で……

それに気づいたと同時に、二階と三階の踊り場の埋め込まれた大窓から、グランドを見下ろすわたしの姿が重なり……

「あ……」

水晶を手に二階と三階の踊り場へと急ぐ。そうして窓に向かって水晶をかざす。

水晶がまるで万華鏡のように、無数の色合いを帯びて煌めきだす。

カチリ。

「ようこそ、感想文部へ」

窓が大きな扉のように開き、眩い光の中から声がした。

「この場所に辿り着いた君は、もう感想文部員だよ。この煌めきを胸に、あちこち出かけてごらん。そうして、五感すべてを使って想い感じ、綴り続ければいいのだよ」

水晶から、ううん、もしかしたら、わたしの心の中からかもしれない、夢の現実の狭間。


――わたしの学生時代が終わって、どのくらいたったのかしら。

相変わらず、風のように、水のように、うまく綴れなし、描けないけれど、万色のイメージは未だにここにある。







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