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43体目 光魔法

「ダメだ。発生させてるっぽい奴全部倒してもゲートが閉じない」

「あのお方も止まる気配がありませんわね」


 閉じないだけでなく、暴徒との戦闘もいまだ続いている。

 ゲートを閉じる必要があるのかと思い、分身で吸収してみた。


「ゲートを少し吸収したら分身が消滅した……。どうしよう」

「無茶しますわね……」


 他にも最後の1匹は、結界を通り抜けられるのではと思い実験もした。

 しかし内部にエネルギーは供給できても、通り抜けるのは不可能なようで結界にぶつけた衝撃で消滅した。


 ゲートを発生させたのがあいつ等だと仮定しよう。

 となると、冒険者を(あやつ)り内部へと侵入させた形か。


 暴れさせている目的は不明。

 先ほどから口を開く(たび)に許さないと連呼しているのが関係しているのだろうか。


「なんとか閉じる方法はないのかな……?」

「光魔法なら、浄化し四散させれるらしいですわ。しかし貯まった魔素の放流を強引に止めていいものかと議論され、基本的には禁止されていますわね」


 桜とカレンの会話で思い出した。

 記憶に留めていなかったが、ゲートを浄化できるのはどこかの記事で見た覚えがある。

 しかし自然発生? したものでなく、今回の場合使い魔が発生源の可能性が高い。


「同時6箇所なんて明らかに自然発生じゃないけど、この場合は?」

「故意に発生された物なら、より拡大する前に閉じるべきでしょうね」

「救援にはもう少し掛かるだろうし、桜がやるしかないな」

「私にできるかな……?」



 レベルが400ある桜にもできなかったら、可能な人は数えられる程度になりそうだ。

 それに今は、救援を待つ時間も惜しい。


「できなかったらその時はその時だ。桜の模写体は2体にしておくか……。おんぶと抱っこどっちがいい?」

「えっと……。じゃあ抱っこで」



 俺は桜よりも大分早く移動でき、模写体も動かないでくれると維持が楽だ。

 今日は戦闘の予定ではなかったからスパッツを履いていないかもしれない。

 一応スカートの中が他人に見えないよう気を付けながら走る。

 そして"ヘイスト"も使ってもらい、短時間でゲートへと到着した。


「そんじゃあ頼む」

「うん……!」


 地面に立った桜は、矢に光魔法を纏い打ち放つ。

 レベルの増した魔力によって、これまでに見たことのない強い輝きになっている。


 光魔法の性質は浄化と反射。

 熱量を持たせレーザーのようなことも一応可能だ。

 ゲートの渦を魔素ごと浄化しつつ、斥力(せきりょく)によって散らすことが可能なのだろう。


「余裕で消滅。見た感じ10分の1で……。余裕をもって5分の1の威力で十分だな」

「よかった! それなら全部消せそうだね」

「広場も操るのが弱まって(うずくま)ってる。3組しか居ないから次の場所行こうか」

「うん!」




 全てのゲートを破壊すると、犬の亜人は解放された。

 強引に動いていただけのようで、腕が外れたりなど重傷だ。


「これはいけません。すぐに応急処置をせねば」

「救護班が着くまで、血液は具現化で隙間を埋めて循環させます」

「では私は細かい傷の処置しましょう」




 応急処置を進めてゆくと、暴れていた人も気が付いた。

 暴れていた最中の記憶はあったようで、謝ってくる。

 なんでも、影と戦った際何かが入ってきた気がしたそうだ。

 時間が経つにつれ思考がどんどん悪い方向に進んだらしい。

 そして結界内で我慢ができなくなり、破壊衝動が暴走して止まらなくなったそうだ。


 とりあえず救護応援が到着し、開催すると言う会食の予定日時を聞いたあと解散。

 帰宅してしばらくすると、モモカがSPを使ったのが確認できた。

 水魔法の中の一覧にある≪メテオシャワー≫の個別レベルを多く上げていた。

 全体を向上させる"水魔法"もそこそこ上げているのは、限界レベルになり≪メテオシャワー≫を上げられなくなったからか。


「モモカがSPを使ったか。何かあったんだろうな」

「あの暴れてた人も心配だけど、みんなも心配だね」

「モモカが成長したいって本心から思える方向に使えてるはずだよ。試練の形態がそうなるよう、SPの使用権利だって譲渡したんだからな」

「そこまで考えてたの?」


 考える時間は大いにあった。

 どんな試練がくるかは、それぞれの性格や能力、地下入りに必要な能力に本人の成長方向を考慮すれば、ある程度予想もできる。


「地下で必要な基本はみっちり学ばせたからな。錬斗は限界ギリギリの死闘。モモカは魔法の方向性。ムギは遊撃手で、タンクに徹するか盾を捨てるかを決めさせられてると思う。個人的には盾は捨てたほうが良いと思うけどな」

「塔也君はあの頃と同じで、みんなのこと大事に考えてくれてるんだね。よかった」

「……そうでもないよ。だって今は昔と違って、仲間を全員失っても構わないって思ってる」


 強く信じればそれだけ裏切られた時の痛みは強烈だ。

 だから俺は、最初から失ってもいいという前提で行動している。


 仮に仲良くなった錬斗やムギやモモカに、背中からナイフをブッ刺されるようなことがあれば、悲しいし辛くはあるだろう。

 しかし裏切られたら俺は『やっぱりそうだ』と思い、躊躇(ちゅうちょ)なく反撃する自信がある。

 当然そうなって欲しいわけではない。

 だがそうでも思ってなければ、人と付き合ってなどいられない。



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