42体目 小型ゲート
「強いな……。あれは分身を増やしたところで勝てなさそうだ」
「それはそうでしょう! 爺は世界に1000人と居ないレベル893の猛者ですわ!」
「900近く……」
「でもレベル差以上に強そうな気がするような……。SPの振り分け次第か?」
レベル差が倍近くあっても、ステータスに倍の差があるわけではない。
能力を身体強化に突っ込んでいるのだろうか。
「それだけではありませんわ。塔也様はまだ、肉体面が達人級から進化していませんわね?」
「進化? 魔物が同種でも格があるみたいな?」
「お嬢様……。いえ。塔也殿はその内知ることになるでしょうな……」
攻撃の直後戻って来た爺が止めようとするも、思い直した。
この反応からして、国家機密のようなものなのだろうか。
最近まで地上層に居た俺には回るはずもない情報なのは確かだ。
「ただの称号ですが、地下入り冒険者は、レベルだけでは測れない強さがあるのはご存じ?」
「ああうん。安全レベルとかないからな」
「ええ。ですから、ステータスと能力の強さで階級が作られてますの。上から順番に、聖人、仙人、超人、達人ですわ! 超人認定される基準は、ステータスの数値が3種類以上4桁になって、≪気力操作≫と≪魔力操作≫が一定レベル以上にあることですの」
話してる最中にも、倒壊した建物から人が飛び出てきた。
酷い攻撃を受けたにもかかわらず、ダメージがなさそうに見える。
『許さない……』
「あれでも立ち上がりますか。次は少々強く致しましょう」
「階級のことは分かったけど、進化ってのは?」
「達人の時点でもそうですが、心技体が高いレベルにあれば、細胞は人間の限界を超えますわ。すると、ステータスが異常発達しますの。その数値が丁度、階級と同じぐらいの区切りですのよ」
俺は今も戦い続けてる執事のほうを見て、訊いてみた。
「なるほどね。じゃあ執事さんは超人?」
「≪ヴァイス≫は仙人級ですわ! 仙人は2種類のステータスが3000を超えて、気力と魔力操作が40以上。あとは相応の能力を所持していることが条件ですわね」
「レベルは倍差なのにステータスは4倍近い差か……」
気づいた時には、戦っている両者が地面から20メートルほど上空へ飛んでいた。
仰け反った姿勢からして、暴徒は打ち上げられたらしい。
追撃のかかと落としが肩へ命中すると、回転しつつ血飛沫を飛ばしながら地面に墜落した。
切り離された腕を見て、桜が呟く。
「う、腕が……」
「飛んじゃったな」
「やり過ぎですわよ!」
「失礼しました……。ダメージの少なさからこの程度かと思ったのですが……」
砂煙が上がっていて、それが数秒して晴れてゆく。
そこには、ボロボロながらに立ち上がる暴徒が居た。
「立ち上がりますか……」
『ゆ゛るさない……。絶対に許さない!』
「おいあんたら! そいつになにをしてもムダだ! 治っちまうんだよ!」
時間稼ぎをしていた冒険者の言うように、腕が黒いオーラに引っ張られくっついた。
エネルギーの流れを感知しようと集中してみる。
一番簡単なのは目に生命エネルギーを集め気を目視したり、対象が魔力なら捻じれのような痕跡を感じとったりだ。
「なるほどね……」
「塔也殿も気づかれましたか」
「何かありましたの?」
「治る時、地面下から6本に分けてエネルギーが供給されてた」
「地面……確かにありますわね。薄くて気づけませんでしたわ!」
呪いらしき気配をかんじた際にも、一度探りはした。
しかしその時とは違い、治る瞬間はエネルギーが多く提供されたようだ。
結界の外から何本にも分かれ、少しずつ供給されているのが分かった。
分割することによって感知し辛くするのが狙いだろう。
「ここは私が食い止めましょう。周りは塔也殿に任せてもよろしいですかな?」
「了解。散!」
承知するのと同時に、俺は4体の分身を生み出して散開させる。
跳びながらの道中も数を増やし、3人1組の18体で供給源へと向かう。
一度感知してしまえば、たとえ気配を薄くされようと発見は難しくない。
「またこいつかよ……」
発見したのは小さいゲートと、≪影≫と呼ばれ始めた顔なしお化け。
しかし色は真っ黒なのが1匹と、以前と同じ色のが多数。
今も紫のやつが次々と召喚されている。
「まさかこいつがゲートを作り出してんじゃないだろうな……」
一応余裕はあるから、"ふくろ"からビデオカメラを取り出し動画を取る。
後で資料があったほうが絶対に良いからだ。
「暴徒が居る現場に到着後戦闘開始。暴徒が負傷した際、エネルギーが供給されているのを確認。その場へ向かうと小型ゲートを発見。他にも同時に5ヵ所存在するものと思われる。処理を開始します」
分身が撮影し、分身が使い魔を処理する。
しかし黒いのを含めその場の全てを討伐しても、ゲートが消えることはなかった……。




