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29体目 馴染み

 ユウは一緒に買ったはずの奴隷を連れ歩いていない。

 宿かどこかに待機させているのだろう。


「またなんか用か」

「買ってから見せてやろうかと思ったけど、この前の奴隷商に行ってみろよ。いいもんが売ってるぜ。お前じゃ手が届かねえだろうがな」

「いいもんってなんだよ」


 俺の頭をぽんぽんと叩いてくる手を払う。

 教えてくれるとは到底思えないが、一応訊いてみた。

 

「見てのお楽しみってやつだ。奴隷商のやつ足元見やがって……。まっ、見に行く行かないは好きにしろ。お前も欲しがるだろうよ。どうせ俺が数日中に買うつもりだけどな。買ったら少しぐらい味見させてやるよ」


 言い終えると、すぐに背を向けて奥へ入って行った。

 かなり稼いでるはずのユウですら買えないとなると、よほどの奴隷なのだろう。

 両者が欲しがりそうなものには心当たりがないが、行くだけ行ってみるか。


「塔也さんの知り合いですか?」

「……元パーティーメンバーだよ。地下130到達者だって言ってたな」

「レベル300は超えてそうだな……。お前そんなやつと組んでたのか」

「あー、うん。その辺はどうでもいいから早く注文しよう」


 話しを切り上げ、すぐさま呼び(りん)を鳴らした。




 亜人の種族によってはダメな食べ物があると見聞きしたことがある。

 最初はエルフは肉を食えるのかとも思ったが、人族と同じ食事で平気らしい。

 しかし個人的に苦手なものはあって、ピーマンとトマトが苦手だそうだ。


「さて、食うもん食ったし奴隷商行くかな」

「あ、あの! あたしも行ってはダメでしょうか」

「バカ言うなムギ! 奴隷なんて許さないぞ!」

「なんで行きたいんだ?」


 最初から否定する兄とは違い、俺は理由を尋ねる。


「買いたいわけじゃないですけど、ちょっとだけ興味ありまして。モモカちゃんが居た場所も知りたいですし」

「ムギちゃん……」


 年齢差が1歳しかないとはいえ、短期間で大分仲良くなったものだ。

 臨時パーティーを組んで階層を突破したのも作用しているか。


「気になるなら錬斗は帰ればいいだろ」

「なんで帰らせようとする!? 俺も行くからな!」




 73階層のやや物騒に感じる街並みを、こんなにも早く再体験するとは思わなかった。


「お待ちしておりましたトウヤ様。そしてお連れの方々も」

「すいません当日いきなりで」

「いえいえ。地下へ到達した様方はいつでも歓迎でございまする」

「やっぱり地下入りしてたか……」


 そういえば2人には、俺がどこまで進んでいるか話してなかった。

 ボディチェックを済ませ、買えるわけでもないから4人とも同じ部屋に通してもらう。


「では準備を致しますので、少々お待ちください」

「……思ったより綺麗なんだな」

「もっと牢獄みたいなところをイメージしてました」


 モモカは同じ部屋に居るが、いくら俺の奴隷でもこの場で座るのはマナー違反らしい。

 そして俺も座っていないせいか、全員が立っている。


 準備が整い入ってきたのは、見知った相手だった……。

 見間違うことなど有り得ない。


 最後見た時と変わらぬ、透き通るような桜色でセミロングまで伸ばされた髪。

 そしてどこか幼さを残したまま成人近くまで成長した姿を見た瞬間、全てを理解した。


「塔也君……?」

「スケープゴートって、(さくら)のことかよ……」


 ユウにスケープゴートにされたのは、以前の仲間の1人。

 そして10歳の頃からの馴染(なじ)みでもある子だ。

 何かしら重要な規約違反をして、ここにいるのだろう。

 そうなるように仕組んだのはユウであり、奴隷に身を落とした桜を買おうと目論んでいたに違いない。




メインヒロイン? 登場です!


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