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東京サイコハザード  作者: グラタファトナ
8/21

デスゲーム2

 私の学校では三か月ほど前にデスゲームに遭った。

 勿論、私は生き残ったわけだけどクラスメイトだったBクラスの面々は全滅した。

 悲しいという気持ちは実はあんまりなかった。特別仲が良かった友人も先生もいなかったわけだし、むしろ社会復帰出来ないくらいの精神打撃を受けた人たちに憐れみさえ覚えた。

 こんな事件があったから学校は事実上壊滅したと言っても良い。PTAからも滅茶苦茶苦言を言われたらしく校長は途中で鬱病になって入院した。引き継いだ教頭も鬱病になって入院した。Bクラスの担任もデスゲーム中に死亡しており、責任を取れる人がいなくなったのでこの問題は未だ上層部で揉めているらしい。

 さて、そんな私だが親の言われるがまま転校することになった。否、あの学校に在籍していた生徒の全員が近場の学校に転校した。当然といえば当然な気もする。

 そんな私のクラスは再びBクラスだ。このクラスの人たちは良い人たちが多く、特にクラスの中心になっている金髪の外国人、名前は確か神代山だったっけ? 彼のおかげで転校してきた人たちは気まずい思いをすることなく生活出来ている。

 男子にも女子にもモテるとかリア充か。

 ま、私には関係ない。人付き合いとかダルいだけだし、静かな図書室とか屋上でいる方がよほど健全的だ。今日は気分的に図書館なので昼食を食べた後は本を読んで過ごす。

 人もいない暗くて静かな場所。学校の喧噪が遠くから聞こえるけどあまり気にならない。

「落ち着く……」

 カラカラカラと扉がスライドする音がした。利用者が来たようだ。その人は司書室に入ると何やら荷物を置いた。興味がなくなったので本へと戻る。

 しばらく読んでいると足音が私の隣へとやってきた。

「やぁ、白坂さん。図書室にはよくいるのかい?」

 顔を上げると金髪優男の神代山がいた。浮かべている笑みも嫌な感じはしない。態度は相変わらずキザ野郎って感じだけど悪い奴じゃないのは確かだ。

「神代山……。まあ、良く来るけど」

「そうなんだ。隣、良い?」

「私に構う暇があったらハーレムでも形成すれば?」

 自然と座ろうとしていたので思わず毒を吐いてしまった。けど、神代山は苦笑いするだけだ。

「そんなことしたらチェルシーに殺されちゃうよ」

 チェルシー。Cクラス在籍の美人な生徒。成績優秀、文武両道、完璧無比と噂で神代山とは同棲しているらしいとクラスの知り合いから情報が来ている。彼女がいるからハーレムを作れないらしい、と男子生徒談。

「ちょっとだけ話を聞いてもらえないかな? 君に相談したいことがあるんだ」

「私じゃなくてチェルシーって人に言えば? あんたの嫁なんでしょ」  

「残念だけど、チェルシーは学校にいなくてね。遠くに行ってるんだ」

 神代山はとても残念そうな表情で悲しそうに笑う。

 そっか。こいつでも失恋することあるんだ……。 

「……そう。……辛かったね」

「まあ、一週間もしたら帰ってくるって言ってたから心配はしてないけどね」

 違うんかい。

「とりあえず座ったら? 相談くらいなら乗るし」

 流石に立たせたままなのも悪いと思って対面の席を促す。

「じゃ、失礼して」

 神代山が椅子を引いて座り、姿勢を正して私を見つめた。そして深呼吸を一つして、告げた。

「――白坂さん、今朝の放送どう思う?」

 今朝の放送。

 それは――。


 今朝の6:50頃。私たちは外から鳴り響く莫大な警報によって最悪の目覚めを強制させられた。

 こんな警報が鳴るのは前例が無く、何度も何度も鳴り響く警報は不安を掻き立てた。

『緊急、緊急! 東京にお住まいの皆さま、TVをご覧ください。7時より緊急放送を行います。誰一人お聞き逃しないようにお願い申し上げます』

 外のスピーカーから何度も繰り返し流れる不穏な放送。

 普段は不仲な私の両親や姉も居間に集まって耳を澄ませ、TVを付けて今の状況を把握しようと努めていた。

 そして7時。普段ならニュースでもやっているような番組やCMが一切止まっており、どのチャンネルも一斉に狼の被り物をしている謎の人物へとカメラが向けられていた。

 そうして奴はニヤリと笑って両手を大仰に広げて叫んだ。

『東京人狼ゲェェェェエエエエエエエエエエエエエエェェェェンンムッッッッ!!!!』

 見事なビプラートと巻き舌だ、と思った。きっとこいつは人を煽るのに長けているだろうことは簡単に推測が付いた。

『東京の皆々様、おはようございまァす! 私、人狼男爵と申します。本日より東京にお住まいの皆さまにはデスゲームを行っていただきます』

 その宣言に流石の私も顔が引き攣った。この前デスゲームやったばかりなのにツイてないにもほどがある。

『ルールはこちら!』

 画面が切り替わってゲームのルールだろう物が映し出される。


ーーーーーーーーーーーーーーー

デスゲームの内容

・クローズドゲーム

場所:東京

内容:東京人狼ゲーム

期限:3日間

役職:人、人狼、呪術師

全体ルール

1、昼のターン(6:00~18:00)とする

2、夜のターン(18:00~6:00)とする

3、呪術師は人間サイドとして扱う

4、昼のターン、人間と呪術師は活動が出来る

5、夜のターン、人狼は活動できる

6、どちらのサイドも一人以上吊るされていない場合、プレイヤーは全滅する

7、ゲーム参加者は東京から出ることは出来ない。

8、三日目の夜のターン終了時に以下の条件を達していないプレイヤーは死亡する。


全体の宣言方法

1、相対者に向けて『吊るす』と宣言するとその人の首に縄が掛けられる。ただし一日一人まで。

2、ターン終了までは『取りやめ』することができる

3、時刻丁度に『吊るす』は執行される

4、呪術師は『鑑定』と宣言すると呪術を発動できる



ーーーーーーーーーーーーーー

人間のクリア条件

・人狼を2人以上吊るす

※吊るす:人狼ゲームでは処刑することを吊るすと言う。


人間の死亡条件

・人間サイドの過半数が死亡する

・自身の死

・自身が人間を2人以上吊るしてしまう

ーーーーーーーーーーーーーー


人狼のクリア条件

・人間もしくは呪術師を2人以上食べる

※食べる:吊るすと同じ意味


人狼の死亡条件

・人狼サイドの過半数が死亡する

・自身の死


人狼サイドの特殊条件

・人狼は同じ人狼を認識できる(人間からは見えない狼耳が生える)


ーーーーーーーーーーーーーー

呪術師のクリア条件

・一匹以上の狼を呪術で暴く

※呪術は1日1回、一人に対してのみ行える分析魔法のこと

・人間一人以上に人狼の情報を与える

・狼をニ匹以上吊るす


呪術師の敗北条件

・ニ回以上、呪術で役職:人間を調べてしまう

・自身の死

・情報を伝えた人間が死亡する


呪術師特殊条件

・情報を与えた人間のキルカウントを共有できる

ーーーーーーーーーーーーーー


 画面が小さくなって狼男の姿が映し出される。

『このルール表は各世帯配布、及びTVで連日報道されます。さてさてさて! 皆様、もうお気づきの方もいらっしゃられるかもしれませんが、皆様には一人一人に役職が与えられています。どうやって判別するか、それはこちらからお教えすることはありません』

 私はルールを再確認しながらふむふむと頷く。

『それでは皆様、楽しんでデスゲームを致しましょう! 三日後、その時にまたお目に掛かれば幸いです! ハーッハッハッハ!!』

 奴は嘲笑してTV画面から消えて、次いで放送が終わった。

 両親は怪訝そうにしつつも本気にはせず、会社やパートに出かけた。姉も気にすることなく学校に行き、私も家を出て高校へと向かった。

 だが、私は知っている。デスゲームはもう始まっている。やらなければ殺される。

 それを身をもって知っている人が今、この東京に何人いるだろう。





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