表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京サイコハザード  作者: グラタファトナ
3/21

ヒーロー3


 あれから早くも半年が経った。季節は秋へと差し掛かろうとしており、制服も夏服シーズンが終わろ

うとしていた。

 ヒーロー、怪人。世間の噂は今やこれ一色だ。ニュースも、SNSも全てギャラクシー・ガイの活躍を取り上げておりコスプレイヤーも多くなってきた。

 嬉しい反面、戦っているのが俺一人ということもあってか素性が割れた。

 推論家によると戦い方や言動から見ても中学生から高校生くらいの少年だろうということ。

 武術はやっていないので自己流の戦い方だということ。

 バイクに乗っている姿を見かけるということから少なくとも16歳以上だということ。

 で、一番の決め手は同じバイクが学校にあり、俺が帰る時間や現場への移動時間、最短距離を実際に計算してみたら多分俺だろうということでこの間警察に重要参考人として連れていかれた。

 親も呼ばれてしまったので俺は素直に自白して実際に変身もした。

 母さんと姉さんは凄くびっくりしていたが、父さんは分かっていたかのようにうんうんと頷いていた。

 最終的には警察のかなり上の人が出てきて事情を聴かれたが、警察の方も怪人の対処には凄く助かっていたらしく俺の活動や正体については黙秘してくれるとのことだ。

「ところで斎藤君。ウチの警察署には怪人対策専門のチームがあるんだけど、君、入ってみないか?」

「た、対策チーム……」

 ある程度のバックアップもしてくれるらしい。戦闘技術とか警察内部の出来る人から見たらかなり危ういらしく直々に教練してくれるって言っていた。

 バイクの方も自前のから警察が使っている専用の二輪を貸し出してくれた。これに乗ってサイレンを鳴らして現場に急行すれば道路交通法には引っかからないようだ。その点は凄く助かる。いくらヒーローで人命が掛かっていてもトップスピードで爆走は出来ない。普通に事故る。


 結局どうしたかというと、俺は怪人対策チームに入ることにした。怪人をただ倒すボランティアも悪くなかったが、将来的なことを考えるとチームに所属しておいた方が良いと考えた。

 戦闘トレーニングから現場周りのこと、住民の避難や連携も先にしておけばスムーズに進むからな。それに万が一俺が負けた時のことも警察側は考えていてくれたらしく、マニュアルまで用意されていたのは驚いた。

「さあ、今日も特訓だ!」 

「うっす!」

 俺の日常はまた一変した。

 起床時間が早まり、早朝トレーニングが日課になった。根本的な体力とスタミナを鍛えるためにランニングが課せられ、ドリンクも筋肉をつけるためにプロテイン一色になった。

 一番の問題点だった変身時間五分という欠点は相変わらずだが、万が一時間以内に倒せなかった時のための逃げるためのスタミナ作りだ。

 今までは気にしたことなかった一日の変身回数も分かった。

 回数は実質無制限。ただし次に変身できるまでの冷却時間が30分かかる。変身後は肉体的な疲労感も大きく、3回も変身すれば気絶してしまうことも分かった。

 体力面が改善されれば回数も増やせるかもしれないが、基本的には5分で片を付けなくてはいけない。

「さあ、どんどん打ってこい!」

「おっす!」

 俺のトレーニング監修をしてくれているのは対策チーム脳筋担当こと藤袴さん。年齢27歳男性で怪人とも短時間なら戦える警察のエースだ。俺とのスパーリングや戦闘訓練も結構容赦ない。

 一回ギャラクシー・ガイで戦ったけど俺の攻撃は当たらず、変身時間が終わって倒されてしまったくらいだ。一撃の威力なら俺に分があるけど、身軽さや経験予測では全然勝てない。

 この人がヒーローだったらきっと俺よりも簡単に勝つんだろうなー、とか思ったりする。

 

 学校が終わると最近はもっぱら警察支部に通っている。強くなっている実感は無いけど、それは実際に戦闘をしたときに分かるだろう。

「こんにちはー!」

 支部の対策チーム室。現メンバーは部長兼オペレーターの笹竹さん、情報担当の古藤さん、戦闘担当の藤袴さん、霧島さん。そして俺に加えて研修で来ている魚田さんの六人がメンバーだ。

「ちーっす、お疲れ様ー」 

 気だるげに手を挙げたのは部長の笹竹さん。24歳で勤務二年目で対策班の部長になった女性だ。元々幹部エスカレータの候補生で、年度の中でも成績優秀だったので部長に昇進したと言っていた。代わりにこんな大変だとは思ってなかったとも愚痴っている。

「うわー、今日も派手にやったねー」 

 情報担当の古藤さん。28歳巨乳。情報担当とは名ばかりで実際は雑務全般担当を押し付けられている。部署から出なくていいしデスクワークの方が好きなので全然オッケーと本人談。

「……どもっす。斎藤君、後でまたギャラクシー・ガイになってくれる? 実験したいことあるんだよね」

「分かりました!」

 戦闘担当の霧島さん。戦闘と言っても実際は怪人に効果のある武装の実験や怪人の研究を専攻してた研究者さんなので実戦は全て藤袴さんまかせだ。

 大抵は効果がない物が多いらしいけど、怪人の足を止めるスタングレネードや粘着力の強いスパイダーネット、攻撃を数回くらいなら防げる防弾チョッキを開発している凄い人だ。

 ここ数日は俺のヒーロースーツやベルトに興味を持ったらしく、色々と試行錯誤に付き合わされている。

「よくまあ藤袴さんのトレーニングやるわぁ……」

 最後は魚田さん。18歳で来年から対策チームに正式加入する予定の高校女子だ。警察所属には親の勧めと推薦もあったみたいだけど本人は気乗りしていない。年が近いから一番話しやすいのは魚田さんだ。

 ちなみに魚田さんも所属後は戦闘部員兼住民避難の任務が与えられるそうなので藤袴さんに無理やり戦闘トレーニングを教えられている。

 と、そこで俺の脳裏に電撃が奔る。

「あ、怪人が出たみたいですね」

 俺がそういうと笹竹さんが面倒くさそうにのっそりと起き上がった。

「あー、マジ―? 各自、準備してー。魚ちゃん、付き添いね」

「了解です」

「場所は双子玉川の駅付近です! 行ってきます!」

 対策チームは基本的に通報が無いと動くことができない。そのため先んじて動くことができる俺と研修生の魚田さんがバイクで先行することになっている。

 支部から出動する時は白バイに乗っていいと言われているのでそっちで発信する。

 魚田さんが並走しつつ白バイクを走らせ、警報を鳴らして車や通行人を退けていく。


 双子玉川の駅付近に到着すると怪人が既に暴れており、負傷者が何人も出ていた。

 今回の相手はゲル状の敵だ。水色の触手? みたいなのを振り回して叩きつけたり、腕や足をからめとって締め付けることができるみたいだな。

 白バイから降り、メットは被ったまま怪人に向けて走り出した。

「変身! ギャラクシー・ガイ参上ォ!!」 

「警察です! 既に通報がありましたのでもう間もなく部隊が到着します! 皆さんは避難指示に従って避難をお願いします! こっちです!」 

 魚田さんも何度も現場で避難誘導をしていることもあってか動きが迅速だ。遠くからサイレンの音が聞こえてくることから対策チームと避難誘導部隊も遠からず到着できるだろう。

「いくぞ!」 

 駆け出すと同時に奴も俺に気付いて触手を伸ばしてくる。

「四本――見える!」

 底上げされた身体能力と視力なら向かってくる触手だろうと弾丸だろうと比較的スローモーションに見える。藤袴さんのトレーニングのおかげもあってか、前の俺なら一撃は貰ってただろう攻撃もたやすく避けることができる。

「ギャラクシーパァァンチ!!」

 接近して渾身の右ストレートを叩きこむ。おそらく弾力によってはじき返され――。

 パァンと音を鳴らして奴は散った。怪人を倒した時の爆散の仕方だ。

「……え?」

 跡形もなく。あまりにも手応えがなさ過ぎて周囲を警戒する。

 だが何時まで経っても何も挙動がない。もしかして逃げられたか?

「大丈夫か! ギャラクシー・ガイ!」

 背後から藤袴さんの声がする。振り返ると避難部隊が到着していた。

「はい」

「敵は?」

「それが……」

 一撃を食らわせたら爆散したことを告げ、一応危機は去ったことを伝えた。だがあまりにも手応えがなかったため、もしかしたら逃げられた可能性もあると言っておく。

「そうか……。とりあえずは住民に被害が出なかっただけ良しとしよう」

「はい」 

 納得はし辛かったが被害があまり出なかったのは良いことだ。

 プルルルル、と藤袴さんの携帯が鳴る。

「おう、俺だ。どうした?」

『藤袴さん。新手の怪人です! 現在、大田区の合同病院にて多数の怪人が襲撃中!』

「分かった。すぐ行く!」

 携帯を切り、藤袴さんが視線と手招きで俺を呼び、俺も一度変身を解いてバイクに乗ってパトカーの後を追随する。

「……父さん」

 大田区、病院。あの区域にはいくつか病院があるが、合同病院は一か所だけだ。そしてそこは父さんが勤務している場所でもある。

 嫌な予感がする。早く、早くいかなければ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ