星影に誕生日SSとイラストを送りました♪
星影の誕生日にプレゼントを贈ったので載せておきます♪
現在執筆中の『私に世界は救えません!』のキャラを借りて書いてみました!l
☆☆☆『ママの誕生日』☆☆☆
「大変っス! 今日はママの誕生日っスよ!」
バドがいきなり声を上げたので、一同は驚いて彼を見つめた。
バドの言うママとは、母親のことではない。ある意味では真の生みの親の事ではあったが。
つまり、ママとは……星影の事である。
「あっ! すっかり忘れちゃってた!」
「カルロ、お前は女の誕生日を覚えておくのが特技じゃなかったのか」
「無茶言わないで下さいよ。毎日誰かしらの誕生日なんですから、星影ママまでは手が回りません」
「どうする。時間が……ない」
現在、時刻は昼を少し過ぎた所である。
ケヴィンの時間がないという発言に、リディアは困ったように眉尻を下げた。
「どうしよう、今からプレゼント……間に合うのかな」
「何かしておかないと、まずいでしょうね」
「何がまずいんだ。祝われて喜ぶような年でもねぇだろ」
「キャプテン……女性に年の話は禁物ですよ」
面倒臭そうなファルシードに、カルロは呆れながらも忠言する。しかしリディアはカルロとは別の意味で慌ていた。
「だ、駄目だよ、ちゃんとお祝いしないと……っ」
「どうしてそんなに必死になる?」
「だって……っ」
理解できないとでも言いたげなファルシードに、リディアは拳を胸の前で作りながら訴える。
「だって星影ママの機嫌を損ねちゃったら、『わたせか』をメリバにされちゃうかもしれないんだよ!?」
「!!?」
そこにいた誰もが、とりわけファルシードは息を飲んだ。
メリバ……メリーバッドエンド。
ファルシードやリディア側から見た時には、バッドエンドになる可能性がある……という事だ。特に二人にはその身に宿した『証』がある。バッドエンドにするのはさぞ容易い事だろう。
絶対にママを……星影の機嫌を損ねてはいけないのだ。この世界の全てを崩壊させるだけの力を、彼女は持っているのだから。
「……仕方ない。何かプレゼントを考えねぇとな」
ようやく諦めた様子でファルシードは呟くように言った。
しかしメンバーの顔色は、およそ良くない。
「けど今は仕事前で、一銭もない状態っすし」
「金の掛らない物を作るのはどうだろう」
「何を作るにせよ、作るというのは半日そこらで出来るものではないですよ」
男達が困っている中、リディアがポンっと胸の前で手を叩いた。
「お花……!」
「花? 確かにあいつは花が好きなようだが……」
「迷ってる暇はないっスよ! 花、摘んできましょう!!」
一同は散開し、各々野花を探し始めた。ちょうど今いた場所が広い野原だったのは幸いだ。
しかし皆が這い蹲っている中、一人だけそれを見て息を漏らす。
「ここの野花で満足するような女性ばかりなら、私の懐も大助かりなんですけどねぇ」
そう呟き、一人だけ別方向に歩いて行く者がいた。
一時間後。
各々が草花を持って元の場所に戻って来た。いや、それは草花というより……
「バド……それは草だ」
「ケヴィンも人の事言えないよな!?」
バドにケヴィン、それにリディアとファルシードも、その手の中にあるのは草ばかりで、殆ど花は無かった。
何故なら今は十二月。野に咲く花はそんなに多くないのだ。草しか集まらないのは仕方のない事と言えよう。
「仕方ねぇな、これを束にしてあいつに渡すか」
「ま、待って! こんな花束とも言えない『草束』をあげたら、それこそ私たちの未来は……っ」
「……っく!」
今やリディア達の敵はネラ教ではなかった。
最大の敵はサド太郎修羅影、その人だったのだ!!
どうするどうすると話し合うも、良い案が出て来ない。そうこうしているうちに時間だけが過ぎて行ってしまう。
「っく、このままじゃ世界が……っ」
「『わたせか』の運命はここまでなの……っ!?」
ファルシードとリディアが悲観する中、「そう言えば」とバドが顔を上げる。
「カルロはどこ行ったんスか?」
バドの言葉にようやくカルロが居ない事に気付くリディアとファルシード。
その時ケヴィンが遠くを指差した。
「帰って来た」
ケヴィンの指差す方から、カルロがゆっくりと姿を現す。
その手に持っているのは、暖色系の花々だった。
「カルロさん、それ……!?」
「花、集めて来ましたよ」
カルロは妖しげな笑みを浮かべながら、手の中の花をリディアに渡した。
「す、すごい……! カルロさん、こんなにいっぱい、どこで……」
「少しばかり、町に行って来まして」
「町に?」
リディアは首を傾げた。お金がないのだから、花屋に行っても花は買えないはずだ。
「どういう事すか? そもそも麓の町に花屋なんかなかったような?」
バドの疑問にカルロはクスクスと笑う。
「頂いたんですよ。綺麗な花壇を作っているレディと、少しばかりお話をして……ね」
「お話、な……。まぁ助かった」
ファルシードの安堵の声を聞いて、皆もホッと胸を撫で下ろす。さらにカルロはついでに貰って来たというピンク色のラッピングペーパーをリディアに渡した。
リディアはカルロが貰って来た花を中心に、皆んなが摘んだ草も周りに詰め込んでいく。
「それ、草率が高過ぎな気がすっけど?」
「でも折角皆が摘んだものだから、どうしても入れたいの。きっと星影ママ、喜んでくれると思う」
少しばかり草が多かっものの、カルロのおかげで見栄えのする花束が出来上がった。
リディアは温かみに溢れた花束をファルシードに差し出す。
「はい、ファル。これを星影ママに渡して!」
「は? 何で俺が……」
「男の人から渡される方が、嬉しいと思うの!」
「じゃあ俺じゃなくてもカルロの方が……」
「すみません、キャプテン。私は今から花を譲ってくれたレディと約束があるので、後はよろしくお願いします」
「じゃあ、バドでも」
「俺にはそんな大役無理っスよ!!」
「ケヴィン」
「無言で渡しても良いなら引き受けますが」
「だ、駄目だよ! ちゃんとお誕生日おめでとうって言わないと!」
全ての視線はファルシードへと集中する。
期待の目と懇願の目で訴えられたファルシードは一瞬たじろいだ後、大きく息を吐き出した。
「渡せば良いんだろ」
ファルシードの言葉に、その場は歓喜で満たされたのだった。
***
野原に、星影の姿が現れた。
カルロはすでに町へと戻り、リディアとバド、ケヴィンは少し離れた所で見守っている。
たった一人で星影と対峙したファルシードの顔は、思ったよりリラックスしていた。
逆に星影は『ファルが呼び出すなんて、珍しい事もあるもんだ』という、少し困惑気味の表情である。
ファルシードはそんな星影にザッザと近づいて行き、顔を逸らしながら花束を突き出した。
「……ほら」
その対応に離れて見ている三人は、やきもきする。
「『ほら』じゃ伝わらないよっ」
「キャプテン何やってんスか!」
「……」
少し離れた声が、否が応にもファルシードの耳に入って行く。
ファルシードだって理解しているのだ。自分の運命の鍵は、誰よりこの星影が握っているという事は。
でも、だからと言って媚びるようには伝えたくはなかった。
星影には感謝の気持ちでいっぱいなのだ。自分を、仲間達を、何よりリディアを……生み出してくれた『ママ』なのだから。
そしてその星影が生まれて来てくれた事が、嘘偽りなく嬉しい。
だからファルシードは誠心誠意、心を込めて。
「……ハッピーバースデイ」
そう、彼女に伝えたのだった。