~2~
家に入ったら、お母さんとお父さんが待ってると思ってたけど、お母さんもお父さんも全くの別人だった。ただ、優しいのは同じだったけど。
女の子はミドリちゃん。
サオリよりも少し大きかった。
ミドリの部屋には、ネコの写真がたくさん飾られていた。
ピンクのベッドカバーはネコの柄だった。
壁にかけられている洋服は、高校というところの制服で、それを着てる写真もあった。でも、ミドリはその制服を着て学校へ行くことはなかった。
だから、あの犬がいなくなるまで、ここでしばらくいようと考えた。
ゴハンはあるし、暖かいベッドでも眠れる。何よりも安心できたから。
それに、よく考えるとあの犬は、しばらく預かるだけだと言っていた。だから、本当にしばらくすればあの犬たちはいなくなってるはずなんだ。
僕は、ミドリに撫でられながら、そんなことを考えていた。
ある時、ミドリは暖かい部屋で、流れる音楽を聴きながら、僕をじっと見つめていた。
僕は、いつもと違う感じをミドリに感じて、じっと彼女を見つめた。すると、ミドリは哀しそうな目を僕に落して呟いた。
「コウちゃん……。あなたは、ずっと私のそばにいてね。あなたが最後のお友達だから」
どうやら、『コウちゃん』とは僕のことらしい。
でも、なんで最後の友達なんだろう。
「みんな、私から離れて……先に、天国へ逝ってしまったの。
……でも、コウちゃんは先には逝かないよね。
だって……だって……どんなにネコが短命でも、残された私の時間よりは、長いはずだから……だから、最後までそばにいてね」
僕は、この言葉でミドリの時間が残りわずかなことを知った。
できれば、家に帰りたいけど。サオリやお父さん、お母さんのところに帰りたいけど、僕はミドリの最後の友達として、ここにいようと決めた。
「ごめんね。あなたはきっと飼い猫さんなんでしょうね。
……きっと、コウちゃんのことを探してる。でも、大丈夫よ。
私の時間はそんなに長くはないわ。
だから、私のわがままを聞いて、お願い」
ミドリは目に涙をいっぱい溜めたまま、必死に堪えているようだった。
僕は背伸びをして、ミドリの頬に頭をなすりつけた。
(大丈夫だよ。僕はずっとここにいる。
ミドリの時間が尽きるまで、僕はずっとここにいるからね)
全てを溶かしてしまうような、熱い熱い夏が来た。
ミドリはどんどん弱っていった。
夏が終り、秋が過ぎようとした頃、ミドリは家からいなくなった。
枝のように細くなった腕が、最後に僕の頭をなで、そして
「病院に行ってくるね。泣かないで、待っててね」
そう言った。
(大丈夫だよ、ミドリ。僕は泣かない。
ミドリが帰ってくるまで、ミドリのベッドを温めてあげてるから、安心して行っておいで)
そんな気持ちをこめて、僕はニャーと鳴いた。
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