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【コミカライズ計画進行中!】99回のやり直しは無駄だったので、何もかも諦めて早々の死を目指します  作者: みなと
どうにか前向きに

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37.まさかあなたに会えるだなんて

「ところでルクレツィア、人間界が……っていうかお前がかつていた国がどうなってるのか、って聞いてるか?」

「いいえ」

「即答するなよ」

「興味がないんだもの」


 歩いている中で、不意に飛んできたルーカスからの質問。

 人間界がどうなったか、だなんて知ったことではないわ。あの国だってどうでも良い、助けてもらわなかったらあのまま私は死を選んでいた。その方がやり直しを終えるためには近道だ、と本気で信じていたから。

 まぁ、……ファリエル様のことだけは気になってしまうけれど。

 後始末のことを全てお任せしてしまったし、リネーアのことだって……ああそうだ、王太子の問題だって、何もかも投げ出してこちらに帰ってきてしまったこと……は問題、かしら。


「……ファリエル様は……お元気なのかしら」

「ああ、女王陛下のご友人の」

「……お母さまの友人、だったの?」

「何だ、そこんとこ知らなかったのか?」

「知らないわ。あと、質問に質問で返さないで」


 ふい、と顔を背ければ、ルーカスから『ごめんって』という声が聞こえる。

 こつ、こつ、とまた二人揃って歩いていたら、またルーカスが話しかけてきた。


「……さっきの話だけど」

「何」

「人間界にいた、ファリエル様がこちらに来ているそうだ」

「……え」


 驚いてしまい、思わず私はルーカスのことを見上げた。そうすると、悪戯っぽく笑っている彼とばっちり視線が合ってしまう。


「やっと聞く気になったか? 続けるぞ。……まず。あちらの王家に対しての祝福は、お前を害されたことによって一時的に破棄された」

「そうなの!?」

「当たり前だろう。そもそも、最初からそんな盟約だったにも関わらず、今回一方的に破棄した馬鹿がいる。加えて……ルクレツィア、お前への殺害を企てた馬鹿だっているんだ」

「まぁ、それはそうなのかしら。自業自得でしかないけど」


 あの家の夫人を思い出して、少しだけ私は顔を顰めていると、ルーカスが笑いながら話を続けてくれる。


「あの一件で、改めてあの王家は婚約の条件を厳格化したそうだ。実際、聖域に対して火属性を持ち込むとか、そもそもを理解していないとか。あの時の王太子は一体何を考えていたんだか……」

「何も考えていなかったわよ、あの大馬鹿王太子。結局あいつって、追放されちゃったんだっけ?」

「らしいぜ。誰の心に残ることもなく消えていく運命、っていうのもそれはそれで残酷なもんかもしれないけど」

「それも自業自得よ」


 フン、とついつい口調が乱暴になってしまったけれど、ルーカスだから別に良いかな、って思ってしまうのは、きっと私が彼に甘えているからだ、って思えてしまった。


「……で?」

「ん?」

「話したいこと、それだけじゃないんでしょ? 人の反応を見ながら楽しまないでよ」

「はいはい、ゴメンって。さっき、ファリエル様が来てる、って話しただろう?」

「ええ」

「婚約式では、所謂『立会人』っていうのが必要でな」


 そんなの必要なんだ、と思っているとルーカスが何やら企んでいるような、嫌な顔をしている。待って、このパターンは爆弾発言じゃない……?


「その『立会人』が、今代はファリエル様だ。まぁ頑張れ」


 にこ、と微笑みかけてきたルーカスの頬に手を伸ばして、私は次こそ遠慮なく彼の頬を引っ張っておいた。


「いてぇ」

「痛くなるように引っ張ってるの。……早く言ってよ、ばか」


 ふい、と視線を逸らしたから私は、ルーカスがどんな表情をしているかだなんて、知らなかった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 Side ルーカス


 確かに、ここ最近のルクレツィアは、とても素直だ、とルーカスは明確に感じていた。

 戻ってきた最初の頃は、まるで手負いの獣のように牙をむき出しにしている感じがしていたのだが、アンナを始めとしたダイアナや、ルーカス自身の素直な想いのおかげでようやくここまで感情を素直に表現できているんだろう、そう推測できていたのだ。


「(手負いの獣、だなんて……宰相閣下も皮肉がお上手なことだ)」


 宰相の台詞を思い出して、ルーカスはルクレツィアに気取られないように、とても小さく溜息を吐いた。

 その獣の状態にしてしまったのは、当時彼女を捜索しきれていなかった自分たちにもあるというのに、何を寝言をほざいているんだ、と何度か八つ当たりをしたことだってある。


 そんな中でも、どうにかこうにかルクレツィアがルーカスやアンナ、ダイアナに対しては素直になって来てくれた頃に、改めて正式な婚約話が出てきたのだ。


 人間界に連れ去られたとはいえ、早々に戻ってこなかったルクレツィアが悪い、と宣った大馬鹿者たちには、ルーカス自ら引導を渡しておいた。

 だって、それを言ったのはあのまがい物を敬愛しているクソだったから。


「(俺のルクレツィアの苦労も知らずに……馬鹿抜かしてんじゃねぇっての)」


 なお、ルーカスは基本的にめちゃくちゃ口が悪い。

 ダイアナの前に出るときはあくまで業務の一環として対応しているから、所謂余所行きの態度がとれている。

 ルクレツィアの前では、何となくこれが和らぐ。

 アンナに関してはルクレツィア専用の侍女だから、ということで割と素をさらけ出しているが基本は丁寧に接するようにしている。


 これだけきちんと努力しているんだから、そこは認めてほしいものだ、と何度ルーカスは部屋でぼやいていたことか。


 ルーカスの父は、そんな息子を見守りながら『こいつがこれだけ丁寧に接することができているのはルクレツィア様だけなので、何としてでも再婚約を!とダイアナに必死に懇願してくれたのは記憶に新しい。

 実際、誰よりも熱心にルクレツィアのことを捜索していたのはルーカスなのだから。


「(いよいよ、か)」


 ルクレツィアと並んで歩いている間、他愛もない話を繰り広げる。

 そうして、ふと出したファリエルの名前と、ここに来てくれているということを聞いたルクレツィアの反応がとても楽しいな、とあれこれ話している中で、思いがけない反応を見てしまったのだ。


「……早く言ってよ、ばか」

「(は?)」


 何だこの可愛い生き物は、とルーカスは思わず硬直しそうになるが、うっかり硬直などしてしまえば恐らくルクレツィアにとてつもなく叱られてしまうから、頑張って歩いていく。


「……何よ、変な顔して」

「いや……あのさ」

「?」

「お前、そんな可愛い顔できるんだな」

「……は?」

「悪い意味とかじゃなくて、あの」

「……」


 迂闊なことを言ってしまえば、恐らくめちゃくちゃ怒られてしまうだろう。あともう少しで婚約式の会場に到着してしまうのだから、極端な反応をさせる訳にもいかない。


「……その、さっきの自然な反応が、可愛くて、」

「…………やっぱり……ばかじゃない」


 間違いなく怒られてしまうのではないか、と身構えていたルーカスだけに、またもや驚く反応を出されてしまったことで、今度こそ足を止めてしまった。

 腕を組んでいたことで、ルクレツィアは一歩踏み出した際に転びかかってしまい、ぐら、とバランスを崩してしまったがハッと我に返ったルーカスによってしっかりと支えられたので、転ぶことはなかったのだが、抱き着くような感じになってしまったことで、ルクレツィアの顔は一気に赤くなってしまう。


「……っ!」

「悪い、ルクレツィア。俺が悪いから後でめっちゃ怒られるから」

「……覚悟しておきなさいよね、ばぁか」


 その言葉に、次は二人揃って笑ってしまう。


 背後でやりとりを見ていたルーカスの父は、『ああ、この二人なら大丈夫だな』と確信を得て、ホッと息を吐いた。

 半ば無理やりに婚約を再び結んでいたのだが、結果としてこの二人の相性がとても良かったおかげだろう。いつの間にか、ルクレツィアの『幸せアレルギー』だったものは、ルーカス相手ならかなり軽減されていて、こうして微笑むことが出来ているんだ、と感じた。


「……ごほん」


 だがしかし、いつまでもこのままではいけない。

 後見人として二人を見守りながら歩いていたものの、足を止めっぱなしではこの後のスケジュールに影響してしまう。

 咳ばらいをして、二人を促せばハッと我に返った二人が改めて並んで歩き始めた。


 ――こうして、未来へと彼らは進んで行くのだ。

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