間章 もう一人
ようやく体の自由が効くようになってきたようね。
今までと違って、ちょっと意識が残っているみたいだけど。
「もう一人」の意識が残っていると考えると、まるで一心同体になったかの様に感じて……喜びが溢れてくるのがわかる。
ふふっ。この感情は彼方にも伝わっているみたい。
心の中で叫んでるのが分かるわ……
そして、意識の支配権がこちらにどんどん傾いている。
この世界の全てを支配出来る様にしてあげる!
私にあとは任せて、おやすみなさい……
そう、全ては「もう一人」の為に
昨日は「もう一人」が眠りについてからも一晩中、子猫の色んな所を撫でて回してあげた。
さて、今日は……
そう思った私は子猫の方を向いた。
「私はミケの勇者! もう何も怖いものはないよ!」
「そうです! みゃーこ様は私の勇者様です!」
「さあ、みんなに見せに行こう!」
「民にお披露目ですね! 流石、私のみゃーこ様です!」
そう言って私は子猫と二人で、家の外に出た。外に出て、まず、子猫をお姫様抱っこの様に抱えてあげた。
「みゃーこ様……ちょっと恥ずかしいですよ」
「番いになったんでしょう?何を恥ずかしがることがあるの?」
そういうと、子猫は顔を真っ赤に染め上げ、私に体を預けて着た。
そうしてミケの家を出て正面にある、猫で賑わう大通りのど真ん中を堂々と歩いて行く。
すれ違う猫たちが、私と子猫を振り返ってみている。
「あれ、姫様じゃない?」
「あの姫さまを抱えているのは誰だ?」
そう誰かが声を上げた後は早かった。
ちょっとした騒ぎがあったかの様に、町の住人達が集まって着て、私の立っている場所を中心に人の輪ができた。
そろそろ頃合いかしら……
そう思った私は、子猫を下におろした。
「ミケ、皆さんに紹介していただけるかしら?」
「も、勿論です! みゃーこ様!」
耳元で私が囁くとミケは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。
ふふっ……耳元で囁いただけで真っ赤になっちゃって。
「皆さん! この国の皆さん! 紹介します! 勇者みゃーこ様です!」
その子猫の声に住人が響めき、歓声を上げた。
私は再度、子猫の耳元に近付き「違うでしょ」っと囁き、頬にキスをした。
「あ、みゃーこ様……」
頰を赤らめたまま、蕩けた表情の子猫をまたお姫様抱っこして大きな声を出した。
「私は、桜 都子!
姫の勇者であり、姫と番いになった者です!
皆さん! よろしくお願いします!!」
そう言い終わると、子猫の唇にキスを一回……
柔らかい感触が、私の唇を楽しませてくれる。
そして、私がキスして一拍置いてから、周りからは“おー”っという大歓声や、勇者コールが巻き起こっていた。
とりあえず、今日は、この辺でいいかしら……
そう思った私は子猫を抱えたまま、後ろーー来た道の方を向き直した。
すると、私の次の行動を察知してか、私の周りで輪を作っていた猫達は端に移動して、私の目線の先ーー城のまでの通り道を作ってくれる。
それを確認して、私は城に向かって歩き始める。
歩く毎に、猫達から発せられ歓声や声援を……まるでパレードをしているかの様な気分になる。
そんな時でも、子猫は恥ずかしいのか、私をギュッと抱きしめたまま動こうとしない。
「部屋に戻ったら、色々楽しみましょうね」
そう、子猫の耳元で呟き、それに返事するかの様に子猫は私を抱きしめる手に力を入れた。
次こそ更新に一週間ぐらいはかかります。
2018/01/31 改行位置の修正
2018/02/03 一部にルビ追加
2018/02/28 全面改稿