第一話 精霊術の才能
やっと町の出口に到着した私たち……途中でよく分からない勇者コールを浴びるわ、ミケは真っ赤になって俯いて歩くわで、色々大変だった。
そんなこんなが有りながら、私たちは街を出る為の門前にいる。この街は木製の私の背丈と同じぐらいの高さの塀で囲われている。
私がもう少し大きければ、“その日……人類は思い出した……“ゴッコが出来るかもしれない。
そして今度は門の方に目を向けた。
その門も木製で上からロープの様な物で引っ張り上げて、まだ私が通れるほどではないが、少しずつ開いていっている。
これ……猫が引っ張ってるんだよね……私も手伝った方がいいかな?
あ、でも開いた途端に何か出てくるかもしれないし、ミケの側は離れない方がいいか……
そんな事を考えていた私だったが、一つの疑問が頭をよぎった。
「そういえば、ミケは姫なのについて来て良かったの?」
「えっ? “昨日私が守ってあげるからついて来て!”
と仰ったのは みゃーこ様じゃないですか!
まさかお忘れになってませんよね?!」
……全然記憶にない………………いや、なんかそんな事があった気がして来た。
あれって夢じゃなかったのか……なんか自分が自分でない感じだったけど……
「ごめん……思い出したよ!
夢の様なひと時だったから夢と勘違いしちゃって!」
「ふーん……そうですか……」
うぅ……ミケのジトッとした目が心に痛い。
「そういえば!」
「ほら、また、そうやって話を逸らそうとする。」とか聞こえて来たがそのまま話を続けた。
「この向こうってモンスターとかいるのかな?」
そう言いながら私は門をトントンと叩く。
「?? モンスター?」
「えーっと、例えば、スライムとか、ゴブリンとか……?」
「えっ? 空想上の生き物がこの世にいるんですか?」
何言ってるんだコイツみたいな事言われてしまった……
喋る猫も空想上の生き物なんだけどね……ってこの場合、猫と喋れる人間か……いや、二足歩行の猫も十分空想上の生き物だし……
「みゃーこ様、ほら! 門が空きましたよ!」
そんなミケの声に、私は思考を中断して見ると、門が完全に開いていて外の森と獣道が見えていた。
まあいいか。
「じゃあ、行きますか!」
「はい!みゃーこ様!」
そして、私とミケは、町の外に向かって歩き始めた。
そして一時間後……
あれからずっと森の中を歩いてきたが、特に何も出る気配がなく若干気が抜けてきた。
「モンスターが居ないなら結構安全?」
「そうですね。比較的安全ですが、この辺でも虫が出るそうなので、注意は必要ですよ」
虫か……愛用の竹刀を持ってきたんだけど、役に立ちそうにない。
「まあ、虫なら余裕だねぇ。蜂は怖いけど。」
あぁ後、Gもか……なんて考えていると、いつものキラキラした視線が私に突き刺さって居た。
「流石!私の勇者様です!
あの虫にすら簡単に倒せてしまうなんて!
私が精霊を使う必要すらありませんね!」
すっかり忘れてた! それだよ! それ!
「そうだ! 精霊!! 精霊見せてよ!」
「みゃーこ様にお見せする約束でしたね。 いいですよ!」
「やった! ミケ大好き!!」
「私もですよ」
そういうとミケは立ち止まり、風呂敷の中をゴソゴソと漁りだした。
「この国では、全ての物に精霊が宿っていると言われています。」
「精霊の数は一千万とも二千万とも言われていますが……形代を依代にして、精霊にお願いするんです。」
そしてミケは猫の形をした紙と水の入った竹筒を取り出した。
「私は四大精霊では水式しか使えないのですが……水を一滴垂らして……」
ミケは膝立ちになって、猫の形の紙(形代)を地面に起き、水を一滴垂らす。
「そして、後は精霊にお願いするだけです。あ、みゃーこ様、危ないので前には来ないでくださいね。全力で行きますので。」
そう言うと、ミケは膝立ちのまま背筋を伸ばした。
そして、目を瞑り、両の手を体の前で合わせた。
それと同時に形代が風に舞うかの様に空中にあがる。そして水滴になり、徐々に大きくなっていく。
初めはパチンコ玉サイズだったのが、ピンポン球、野球のボール、サッカーボールとどんどんサイズを変えていく……
周囲には霧の様な物が薄く立ち込めていて、元々見えた木々がどんどん薄く、白の世界となっていく。
聞こえていた木々のざわめきすら聞こえなくなり、その場にミケしか居ない様な錯覚を覚える。幻想的で、なんだか神々しい風景。
私はその光景に圧倒されていた。
が……ミケの大きさを超え……私の大きさも超え……終いには周りにある木の大きさも超えてしまった水の固まり……
えっ……まだ大きくなってない?!
流石に不味くないかと、ミケを止めようとした瞬間……
ミケの目がカッと開き……
「限精霊術 水式 波濤」
ミケがそう呟いたと同時にあたりに鳴り響く爆音……そして遅れてやってくる地響き。
私は、慌ててしゃがみこみ、目をつぶってしまった。
十数秒続いた爆音が止み、地響きが収まりかけた時、私が目を開けて初めに見えたものは……
「みゃーこ様、如何でしたか?」
ミケのドアップでした。ビックリしたけど逆に冷静になれたよ。
改めてミケの元いた場所を見てみると、何もなかった。正確には、ミケいた所から10mの幅で遠くに見える山にぶつかるあたりまで何もない。いや、山にも大きな穴が出来ているのでもっとか……
「えーっと……流石にやりすぎ……
じゃないかな……」
「みゃーこ様のお役に立てる事を証明しようと張り切りました!」
逆に私が足手まといになるよ?!っと言いかけたけど、ミケがドヤ顔で褒めて欲しそうにしていたので……頭を撫でておいた。
そうすると、ミケがじーっとこっちを見て……首を少し上げて、唇を突き出して、目をつぶった……?
え?これ、キス待ち?
一向に目を開ける気配がないミケ……仕方ないから頬にキスをして誤魔化した。
ミケも一応、納得してくれた様子。なんだかニヘニヘしている。
誰だ、こんな事教えたの……
そして、再度その場から歩きだした私とミケ。
「さっきのあれって私にも使えるかな?」
「勿論です! みゃーこ様に不可能などありませんよ!」
うん。即答はいいけど、これは信じちゃダメなやつだ。
なので聞き方を変えてみた。
「えっと……じゃあ、あれってミケの国の人はどれぐらい使えるのかな?」
「私だけですよ! こう見えても国唯一の水式使いですから!」
安定のミケのドヤ顔……「あ、みゃーこ様も居るから今は唯一じゃないですね!」とか言ってる。
じゃあ、私もきっと使えないね。うーん……残念……
しかし、せっかく魔法ぽいものを見たんだから使って見たいんだけど……
「他に簡単な物ないの?」
「依代が必要になる四大精霊術みたいな大規模なものは生まれ持った素質が必要ですが、小規模物は誰でも出来ますよ?」
「それなら私もいけそう!」
「え? みゃーこ様なら四大精霊全部使えると思いますけど?」
私はどこのチート主人公だよ。
うん。あんなもの、どう考えても私に使えるわけがないじゃん。
「使えるにしても、先ずは簡単な物からね?私、初めてだし」
「それは、そうですね……」
納得したのかしてないのか分からない表情のミケが、一つの石を取り出した。
「一番簡単なのは、これですね。」
そう言うと、ミケは石を手のひらに置き目を瞑った。
「序精霊術 火花」
バチッとミケに手のひらから火花が出る。
おぉ!さっきのから比べると大分ショボいけど十分十分!
「これは、この石。火打ち石の精霊にお願いする初歩的な精霊術です。火を起こすのに便利ですよ。まあ、それ以外に使い道無いですが……」
そう言いながら、私に石を渡してくれたミケ。
「ありがと! えっと、手のひらに持って目を瞑るんだっけ?」
目をつぶって、お願いを……って何をお願いしたらいいんだろ?
「お願いって何をお願いするの?」
「なんでもいいですよ。 力を貸して! でも、火花を出して! でも」
意外と適当なのか。じゃあ、改めて……
目を瞑って……
(精霊さん、火花を出して!)
「序精霊術 火花」
そして私に手のひらでバチッっと……あれ?
「何も起きないね……」
「えっ?」
ミケは信じられない物を見たと言う表情だ。諦めきれない私は再度目を瞑った。
(精霊さん! お願いします! ちょっとだけでいいから! 火花を出してください!)
「序精霊術 火花!!」
さっきより必死さが伝わったのか。バチッっと言う音とともに火花が…………あれ?
「やっぱり、何も起きないね。」
私は才能ゼロか……流石にへこむ。
「え……えっと……あっ! きっと余りある才能が邪魔をして、簡単な物は出来ないんですね! 流石、私のみゃーこ様です!」
なに、その慰め……そう思いながら、ミケの顔を見ると、いつも通りキラキラした目をして居た。
あっ……これ、本気で思ってる奴だ。
ミケさん。否定する所は、否定しないとダメですよ?
まあ、本人には言わないけど……
そんなやりとりをしていると、後ろからガサッと言う音が聞こえた。
私は、瞬時にミケを体の後ろに移動させ、守る体制になりながら、音のする方向を向きなおした。
次回更新は、一週間以内に行います。
2018/01/28 サブタイトルのフォーマット修正
2018/02/03 一部にルビ追加
2018/02/28 全面改稿
2018/03/01 誤字脱字修正




