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トライ・ステップ! -this story is game fantasy-  作者: 豚煮真珠
QUEST11. 往古の証人と黎明の遺産
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sisters

「お姉ちゃん……」

「…………」


 尻もちをつくワラビが、窮地を救った姉・シスイに驚いていた。


「最近やけに“さぶいぼ”が立つな、って思ってたら、そうか、お姉ちゃんだったのね……」


 このワラビの言葉に、あなたがふと思い出した。

 ワラビには特異な能力がある。それは約二年前、シンシアが司直に逮捕され、ジュリアが助けを求めていた時、その遠く離れたジュリアの助けをワラビが感じ取ったことである。

 ジュリアが助けを求めている。そう言ったワラビを、当時のあなたは何を言っているんだ、などと(あき)れていた。しかし、その日の夕、本当にジュリアが助けを求めてあなたたちの元へやって来た。

 ここ最近ワラビは鳥肌を立てる毎日を送っていた。これは姉の接近による物であり、どうやらワラビには、常人では持ち得ない特別な勘が、親しい者とのあいだ限定で働くようである。

 ちなみにワラビは、この姉による鳥肌を「Towerの呪い」と言っていた。


「でも、お姉ちゃんなんでここに」

「……彼女、早く助けないと」

「あっ」


 立ち上がったシスイの言葉に、あなたたちが慌てて振り向いた。

 視線の先には、血を吸われて息も絶え絶えな(しょう)()・ローザが伏せている。

 あなたたちが駆け寄る。早く応急処置を施さねば彼女が命を落としてしまう。


「ワラビ、頼んだぞ」

「う、うん」


 ジュリアは先の戦いで消耗が激しい。生命円環(エイルナーガ)の役目を親友に託した。

 任されたワラビが手を組み、両の人差し指を立て、呪文を紡ごうとする。だが、

「し、死が変えた。ぜん、全知全能、たる、……夢の、中の」

「お、おいワラビ」

「ゆめ、夢の中の……」

 どもっていつもはすらすらと詠む呪文を、ワラビが詠めずにいる。


「……ど、どうしようジュリア。私、呪文唱えらんないよ」

「なんだって!?」

「き、緊張しちゃうの。あぅぅ、なんでだろ、今までこんなことなかったのにぃ……」


 ワラビが組んだ手を解き、ぽろぽろと涙を落とした。

 この原因をジュリアもあなたも分かっていた。(やつ)が唱えた魔法、黒屍恐慌(チェルノボグ)による後遺症だろう、と。

 ぐずぐずしている暇はない。無理を承知でジュリアに頼むか、いや、急ぎ彼女を担いで医者の元へ連れるべきだ、などとあなたが身を乗り出すと、

「…………」

「……お姉ちゃん」

 めそめそと泣くワラビの背を、包み込むようにシスイが抱き締めた。


「落ち着いて。私が付いている」

「……うん」


 シスイに抱き締められること間もなくして、唾をごくりと()んだワラビが詠唱を再開した。

 その詠唱は、いつもに比べるとややぎこちなかったが、先のように止まることはなかった。

 そして、八句全てをワラビが詠み終わり、

「――“生命円環(エイルナーガ)”」

 魔法の発動に成功、ローザに輸血を開始する。


「……なあ、アンタ」


 微笑(ほほえ)ましき姉妹の(きずな)なのだが、あなたとジュリアは懸念していた。

 出会う前は分からないが、少なくともあなたとジュリアの知るワラビは、緊張や恐れとは無縁の女の子だ。

 今まで一度たりともこんな事はなかった。シュナイドに謁見したときですら、口では緊張すると言いつつも、足取りは堂々としていたことをあなたは覚えている。

 何よりも、その能天気とも言える勇ましさに、いつもあなたは勇気付けられていた。心を侵されたワラビをあなたとジュリアが心配する。


「くっ、あの腐れナルシストめ。ワラビをこんなにしやがって、絶対に見つけてぶっ殺してやる」


 ジュリアに殺人を犯させる気はないが、あの男はこのままにしておけない、とあなたも同意する。

 あのモートという男は、僧侶の皮を(かぶ)った外道だ。自分は神に選ばれた者ゆえ、救われぬ者には何をしてもいい、などと(のたま)っていた。

 また、己の非道を時流と言って正当化していた。たとえそんな時代が来たとしても、あの男が(わら)う時代など全力で止めねばなるまい。

 エザナーンに報告し、()ぐに捕まえなければ。あなたとジュリアが目を合わせて(うなず)く。


 しかし、あなたが思い出した。ジュリアが戦いの最中に仕掛けた誤誘導(ミスディレクション)、あれはあまりにも心臓に悪い。

 捕らわれたワラビを解放する会心の一手だった。だがそれでも納得できず、あなたがジュリアに文句を垂れた。

 ジュリアが「ごめんごめん」と謝る。そしてちょうど輸血が終わったため、あなたがローザの元へ赴く。

 ローザを抱きかかえたあなた。このあなたの背にジュリアが、

「ちぇ。アンタ以外に体を任せられるヒトがいるもんかよ」

 と、独り諦めた笑いを浮かべてつぶやいた。


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