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箱庭幻想譚―救い無き箱庭で、少女は幸せを願う―  作者: 物部 妖狐
第二章 首都スメラギへの旅路

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第1話 私たちのこれから

 野営の準備ってどうやるのかな。

そう思いながら二人の姿を見守っていると、ゼンさんがバッグの中からテントを取り出して組み上げていく。


(……なんか、手際がいいなぁ)


 カーくんも、金具を地面に刺して、テントに繋がっている紐を器用に結んでいる。

その様子を見ていると、なんだかすごい……頼もしく感じて、少しだけ頬が緩んでしまう。


「……どうした?」

「え、あぁ……うん。なんだか、二人がすっごく手際がいいなぁって……」

「手際がいいって言われてもな、俺は……あの集落に落ち着くまでは野営が多かったから自然とな。まぁ、俺としてはカーティスの方が意外だけどな」

「俺は、野菜を育てる過程で覚えただけだよ。季節外れの野菜を育てるのに必要だったからね」


 転生前にテレビで農業関連の番組がやってた時に、同じようなことを聞いたような気がするけど、内容は全然覚えてない。


(すごいなぁって思ったけど、素人が見よう見まねでやるのは良くないし?)


 そもそも、興味がなかったっていうのもあるけど……覚えていたら、カーくんがどうしてそんなことをしていたのか、少しは分かったのかもしれない。


「さてっと……テントの設営も終わったし、俺は今晩の飯でも狩ってくるわ」

「え? ゼ、ゼンさん。明日からのことを話すんじゃ……ないの?」

「あぁ……悪いけど、俺はそういうのには向いてないから、面倒なことは二人に任せるわ」


 バッグをテントの中に放り込んだゼンさんが、手を振りながら森の奥へと消えてしまう。


「あ、い……行っちゃった」


 そのあまりにも迷いのない行動に、何も言えずに見送ることしかできなかった。


(こういう大事なことって、皆でやった方がいいと思うんだけど……)


 ……けど、心の中ではちゃんと言えたから、これで良いことにしておこうかな。


「まぁ……ゼンは、考えるより、身体を動かす方が得意だからね。任せてもらえるなら、これはこれで助かるかな。シャルネもそう思わないかい?」

「……たしかに今まで頭を使ってるところ、あんまり見たことないかも」

「はは、言われるまで気付かないだなんて、君は今まで彼の何を見てきたんだい?」

「え、えぇっと……家に住まわせてくれるし、毎日食材を獲ってきてくれる頼もしい人?」

「そっかぁ……まぁ、うん。どうやら二人は相性が良いのかもしれないね」


 妙に物わかりの良い、親戚のおじさんみたいな顔をされても反応に困る。

それだとまるで、私とゼンさんの考え方が似てるって言われてるみたいで、心外っていうか。

ちょっとだけ……嫌。


「とりあえず、一緒に焚き火に使う枝を拾いながら話そうか」

「え? あ……うん」


 私たちまでテントから離れてしまっていいのかなって思うけど、ゼンさんが帰ってくるまで話す以外にやることはない。


(……暗くなってきてるのに、理由をつけて私みたいな美少女を連れ出そうだなんて、もしかして?)


 手を出す気はないとか言っていたのに、やっぱり私の魅力には抗えないのかな。


「ふひ、これが……異世界ハーレム」


 でもなぁ、モテちゃうのは困るなぁ。

だって私には、生活に困らない程度の暮らしをさせてくれるゼンさんがいるし?


「君が何を言ってるのか、よくわからないけど、とりあえずその緩み切った顔を止めた方がいいんじゃないかな」

「……え?」

「せっかくの美少女がこれでは台無しだよ」

「び、美少女って……それほど、でも?」

「……めんどくさいから、さっさと行こうか。早くしないと今日の夕飯に火を通さずに食べることになるからね」

「それは、いやかも……うん。早く行こう? カーくん」


 すごい失礼なことを言われたような気がするけど……美少女って言われたから許してあげよう。

そんな私の気持ちを察してくれたのか、カーくんが小さく笑うと、私に歩幅を合わせてくれながら、枝を拾ってバッグにしまっていく。


「ここから先は、当初の目的通り、まずは栄花の首都スメラギに向かうことになると思う」

「……う、うん。けどいきなり首都って、だいじょうぶ……なの? ほ、ほら、物語のセオリーだと、道中でいろんな町や村を通って、やっと到着するって場所、だよね?」

「セオリー? 君の言葉をいちいち気にしていたら、めんどくさいね。まぁ……これにはちゃんと理由があるんだよ」


 足を止めたカーくんが、バッグの中に手を入れると、一枚の手紙を取り出す。


『首都スメラギに行き、マチザワ殿とセイラ殿に会い、栄花の神【豊穣神プリムラスグロリア】の協力を得てください。その後のことは三人の判断に任せます』


 カーくんから手紙を受け取り、灯りを近づけてもらいながら読んでみたけど、セイラさんってたしか……ゼンさんが言ってた口うるさい人だよね。

マチザワさんとは、一回話したから……たぶん、次はちゃんと話せるとは思うけど、初対面の人に会うのは、だいぶ不安かも。


(あ、ゲームとかだと、次の目的地に着いたら重大なヒントをくれるってあるし……きっとそういうことかも?)


 きっと、色々と役に立つ話をしてくれて、まずは五大国のどこに行った方がいいとか情報をくれるはず。

それに口うるさいって言っても、セイラさんとマチザワさんは、ゼンさんの知り合い……たぶん、お友達みたいなものだし、私にも良くしてくれると……思う。


(……なんだか、首都に行くのが楽しみになってきたかも)


 そう思うと、急な旅立ちも悪くない気がしてくる。

呆れたように肩をすくめるカーくんを見ながら、私はワクワクを抑えられなかった。

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