第8話 宣戦布告
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鎮圧後、ガレディアは拘束されてダイヤモンドが居る玉座の間に連行された。
「女王陛下。今回の襲撃の首謀者を連れて参りました」
「ご苦労様です。貴方達は彼女の後ろに居てください」
「はっ!」
連れてきた二人の兵士はダイヤモンドの指示に従い、ガレディアの後ろに立った。
ダイヤモンドは玉座から立ち上がり、
「皆、魔族の襲撃に力を尽くし、王宮を守り抜いた事に深く感謝致します。七勇者をはじめ、王宮に在中していた全ての兵達には多大な祝福が待っている事でしょう。そして、今回の犠牲者が安らかに眠り、再び生まれ変わった時に幸福が訪れる事を女王として心より深く祈ります」
慈母のような微笑みでローズマリー達を含む兵士全員に感謝の言葉を述べた後、表情を真顔に一変させると冷ややかな視線をガレディアに向け、女王としての威厳がひしひしと伝わる声でガレディアに尋問を始めた。
「ガレディア・アイルハート、単刀直入に聞きます。貴方は何故王宮を襲撃したのですか?」
「魔族は貴方達に宣戦布告する。その挨拶として王宮を襲撃した」
ダイヤモンドの威圧的な声に臆する事なく、ガレディアは彼女の質問に大人しく答えるとその場に居合わせたブルドー達も流石に動揺を隠せなかった。
「何だって……」
「戦争しに来たという訳ね」
周りがざわつく中ダイヤモンドは表情を一切変えず、彼女に凍てついた視線を向けながら次の質問をした。
「次の質問です。貴方は何者ですか?」
「かつて討たれた魔王の娘であり、アイルハート王国の現魔王である」
ガレディアが魔王という言葉を口にした途端、更にざわつきの声は玉座の間に大きく鳴り響いた。
魔王はかつての戦争で討たれ、彼には子供がおらず血筋は完全に途絶えたとクラウディア王国では長い間そう思われていた。
だが今になって魔王の血を引いた後継者が現れて王宮を襲撃、そして人と魔族の全面戦争を仕掛けてきたという国の存亡に関わる一大事と化したのだ。
「嘘だろ……」
「魔王は完全に滅びたのでは無かったというのですか……」
「ガレディアさんがまさか魔王だったとは……マリー?」
ブルドーがローズマリーの方を見ると、彼女は眉を下げながら無言でじっとガレディアを見つめていた。
「あの、マリー」
「そっとしてあげなブルドー。一番ショックを受けてるのはマリーだと思うし」
「あ……うん」
顔を伏せたリネアに肩を叩かれ、ブルドーはそのままローズマリーに関わる事を辞めた。
「なるほど。では次です。貴方達は何の為に我々に戦争を仕掛けるのですか?」
「敵である貴方達に答える義理はない」
ダイヤモンドは答える気はないというガレディアの返答にも態度を変えずに依然として質問を続け、彼女もそれに淡々と答える。
ガレディアの返答に眉をひそめる事もあったがダイヤモンドは言及はほとんど行わず、無機質な質疑応答が繰り返された。
「最後の質問です。貴方はどうやってここまで魔族を引き連れて来ましたか?」
「向こうにいる部下に転移魔法で転送してもらった」
「あれだけの軍勢を何人の部下が転移魔法を行ったのですか?」
「1人」
ガレディアの言葉に魔法に長けているナディアはみるみるうちに顔を青ざめ、頭を横に振り始めた。
「嘘でしょ……あの大人数をたった一人で……?」
「そんなに凄い事なのか?」
魔法に疎いグリアムがボソッと呟いた言葉にナディアはカッと目を見開き、今にも食ってかかるような勢いで彼に詰め寄った。
「アンタ転移魔法がどれだけ大変か分かってんの!?自分を転移するならともかく他人を転移させるのはよっぽど魔法に慣れてないと出来ないし、出来たとしても送れるのは精々1人か2人なの!それをたった一人であの軍勢を送って来たのよ!そんな事が出来るなんて化け物以外の何者でもないわ!」
「お、おう。無神経な事言って悪かった……」
女王が目の前にいるのでかなり声を潜めてはいるがそれでも仲間内周辺に聞こえる声でナディアはグリアムに言い迫り、グリアムは彼女の勢いに押されて思わず謝った。
「俺は王国内の魔法事情には詳しいが、今まで大人数の転移を一人で行い成功させた奴なんて聞いたことがない。そんな奴が敵に居るとなるとかなり厄介だ」
「私も少し魔法を学んでいた事がありましたので、その凄さが分かります」
ナディア程ではないがシャインとエミリーも転移魔法を行った魔族について反応し、その凄さに恐れを抱いた。
ガレディアへの質問を終えたダイヤモンドは一旦深呼吸すると、
「ローズマリー」
先程と変わらない声で唐突にローズマリーの名を呼び、その場に居合わせた者達は一斉に彼女の方に顔を向けた。
「は、はい」
突然名前を呼ばれ、それまでガレディアの方をボーッと見ていたローズマリーは声を裏返しながら慌てて返事を返した。
「貴方が彼女をここへ連れてきた時、私が何を言ったか覚えていますか?」
ローズマリーはダイヤモンドの質問に背筋を凍らせ、心臓の鼓動が急激に加速しだした。
ガレディアが問題を起こした時は、自分が責任を取るという約束を彼女は忘れていなかったのだ。
「ガレディアが問題を起こした時……私が責任を取ると……仰い……ました……」
身体中から血の気が失せて顔面蒼白になり、寒さに震える子兎のように身体を震わせながらローズマリーは顔を下に向けてポツポツとダイヤモンドの質問に答える。
「はい、確かにそう言いました。ですので、今から貴方には責任を取ってもらいます」
「はい……」
責任を取ってもらうと言うダイヤモンドの言葉に、ローズマリー顔を伏せたまま生気のない声でうなだれるように答えた。
「女王陛下!マリーはーー」
「お黙りなさい!」
ダイヤモンドは顔を動かさずに眉をひそめながら鋭い声を玉座の間に響かせ、ローズマリーを擁護しようとしたブルドーを一瞬で黙らせた。
そしてダイヤモンドは問題を起こした責任として、ローズマリーに1つの命令を下す。
「ローズマリー・ヘルゲート。貴方に命令します。今ここで彼女を始末しなさい」




