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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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98 前世もち

 ガーネット王国の第3王子が、『前世』が日本人――?


「待って。可能性としてはない訳でないのは分かっているけれど、私達以外に日本から転生している人がいるなんて……」


 少し混乱しながらいう真奈。

 私だって、混乱しているけれど――。


「――真奈。言いそびれていたんだけれど、第2王子ルーカス様の恋人だったヒロイン、マリー嬢。…あの方も、転生者だったと思う。しかも、乙女ゲーム『薔薇の誓い〜5人の騎士達〜』をやっていたのだと思うの。なぜならゲームの展開通りにする為に、現実では全く虐めて来ないカタリーナ様が虐めてきたかのように見せる為の工作までされていたの。

そして卒業パーティーの最後では、マティアス様の緑の瞳を見て、『貴方が本物の王子様なのね、ルーカス様の瞳は青で今日のドレスもエメラルドグリーンじゃないからおかしいと思ったわ』とまで言っていたわ」


 それを聞いた真奈はギョッとする。


「! …もしかして、それって前に貴女がいってた、私が王妃にならなかったゲームのズレって話の事ね?」


 私は頷いた。


「その後彼女とは会えていないから、結局詳しい話は聞けていないのだけれどね」


 真奈はまだ混乱しているのだろう、頭を抱え溜息を吐きながら言った。


「…はぁ……。まだ混乱しているけれど、要するにこの世界には何人も日本からの転生者がいるという事ね。皆が皆ではないとは思うけれど……」


「そうね……。私は実は陛下とマティアス様には前世持ちとの話はちらっとしてあるの。急に失恋から立ち直った訳を説明するのに仕方なくだったんだけれど……。

その後にお2人で話をされた時、私の流行病の時の感染対策が今この国の知識ではあり得ないから本当だろう、と陛下は仰っていたそうなの。そしてそれを聞いてマティアス様はそれなら色んな知識を持つ母の貴女もそうではないか? と思われたそうよ。

その時自分もと思われなかったのだから、マティアス様は違うでしょうね。他の方にも聞いていく訳にはいかないけれど……。でもやはり『日本から転生しその前世を思い出している』というのは、レアはレアなんでしょうね」


「確かにそうね。それにもっとたくさんの転生者がいたのなら、この世界はもっと発展しているわよね。この世界の文化は前世から見たら中世位ですもの。まあ日本のゲームの世界でもあるから、都合よく発展しているようなところもあるけれど」


 2人でふぅっと息を吐き、緑茶を飲んだ。

 私がそのままガトーショコラに手を出そうとした時、真奈が言った。


「第3王子が元日本人だったとして、彼は何がしたいのだと思う? 最初出会った12歳の頃は、この世界と日本との共通点を探しているようにも見えたけれど」


 私は口にポイとガトーショコラを放り込んだ。

 その瞬間、真奈が「口の中のものがなくなってから話してね」と言う。私はもう一度緑茶を飲みガトーショコラを流し込む。


「…ふぅ。その頃はそうだったのかもね。前世での日本の知識を活かして何かを発明されたりって事も、ないわよねぇ、多分。学園でも、特別何か変わった事をされている印象もないし……。

でも王子は、いつ前世を思い出されたのかしら。仮に12歳で思い出したとして、日本である程度の勉強を終えられたような年齢だったのなら、その時点でこちらではかなりの天才児じゃない? 学問もあちらの方が進んでいたのだし。学園での勉強すら必要はあまりないわよね? あ、私は別よ! この国で暮らすにはここの一般常識とかマナーやダンスなどの勉強も必要だもの」


 真奈は、ハッと何かに気付いて絞り出すように言った。


「それってまさか……。王子はもっと早く、もしかしたらあの6年前の隣国の騒ぎの時には思い出していたのではないかしら!? そしてあの時にすでに日本での『成人した大人』の考えを持っていたとしたら……! あの『無邪気な少年』像が、全て彼の……作り出した演技だったのだとしたら……!」


 もう既に中身は大人だった彼が、子供の無邪気な仮面を被り、全てを操って……!?

 2人で目を見合わす。

 私も少し震えながら言った。


「始めから……? 王子は始めから大人の思考を持っていて、隣国の騒ぎに乗じて気になっていた我が国に入り込んでいた、という事……? いずれ我が国を手に入れる為に……? …でも、それじゃあどうして彼はこの6年間動かなかったのかしら? そして何故今になって動き出したのか……?」


 真奈は眉間にシワを作り考えながら言った。


「何故、今なのか……。今、この国は転換期よね……。この国が揺れるのを待っていた? でもそんな不確定な事ではないわよね……。でも、貴女が聞いた密談から言うと、彼はこの国の第2王子ルーカス様を操って何かをしようとしていた。失敗に終わったようだけれど……。少なくとも学園から何かをしようとしていたのよね?」


 私は頷く。


「そうね。第2王子を唆したけれど失敗した……と言っていたから、あの卒業パーティーでの事かしら……。どうなる事が彼らにとって成功だったのかしら……? 第2王子が、あのまま強引にカタリーナ様を断罪して公爵家を乗っ取り、王家の権威をどん底にまで落とし、揺れた我が国を……ってこと?」


 真奈もなるほど、と頷いた。


「そうね……、だからサミュエル王子は我が国の国王がアルフレッド陛下になって、思惑とは反対に我が国の基盤がしっかりしてしまった事に怒りを覚えていた、ということなのね」


 2人で納得し合う。そしてどちらがともなく呟く。


「…では、次は王子はどう動くつもりかしら……」


 2人して、考え込んでしまった。






お読みいただき、ありがとうございます!


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