77 告白
「リリアンヌ嬢。――私は生涯貴女の味方でいる。そして貴女にも私の味方でいて、一生、側にいて欲しいのだ」
彼は典型的な? プロポーズの姿勢で、私を見つめながら言った。
「本当はもっと早くに貴女の元へ行きたかったのだが、なかなかよき日が空かず……。そして貴女がこんなトラブルに合って、何をおいても貴女に想いを告げに行くべきだったと後悔した」
ノーマン公爵はそう言いながら私の手をキュッと優しく握る。私はそれでハッと我にかえる。
「ッあの……! 私が婚約を解消したから……、ノーマン公爵様の家族同然のマティアス様との婚約がダメになったから……。だから私に同情してくださって、だからこんな事を仰ってくださっているのでしょう?」
そう。最初からずっと、ノーマン公爵は私に同情して、ずっと、お優しくて……。ずっと、私に心を砕いてくださっていて……。髪飾りも、毎日のあのお花も……。
あのパーティーの時だって、私を気にかけてくださっているのを感じた。そう、ずっと、お優しかった、私を……見てくださって、いた……。
「リリアンヌ嬢。同情などではない。最初から貴女の強さや心意気に、強く惹かれていた。私も初めはマティアスの婚約者である貴女にその様な気持ちを持つつもりは無かった。でも今は……。他の者を選ばないで欲しい。私と共に、人生を歩んで欲しいのだ」
「ノーマン公爵様……」
うわぁ……。顔が、熱い……。絶対真っ赤になってるわ。こんな熱烈に思ってもらえるなんて、前世を合わせても初めてだから……。
私達はしばらくそのまま見つめ合った。なんだか少し、公爵のお顔も赤くなっているように感じた。そしてそれを可愛いと思っている自分がいる。
「ノーマン公爵……。私まだ……婚約も解消したばかりで、自分の気持ちが分からないのですけれど……。でも、好き、だとは思います。……あの! 愛しているの、好きかは分からないですけれど……」
あれ? 分からないの連発をしちゃったわ。でも、この気持ちが『愛』なのかは分からなくて……。
「! 本当かい? リリアンヌ嬢……! 少しずつでいい、私の事を知って好きになってくれると嬉しい。……共にいて欲しい」
うわぁ……!
「あのッ、でも……! 私に『公爵夫人』が務まるのでしょうか?」
そう、それなのだ。この国の最高位の貴族である『公爵』。その夫人を私がやっていけるのかしら? そうだわ、マーガレット様より上位になっちゃうじゃない!
するとノーマン公爵は少し困ったお顔をされた。
あ、やっぱり私に『公爵夫人』は無理そうと思ってらっしゃる? うん、そう認められちゃうとちょっとショックです……。
「実は……『公爵夫人』ではないのだ」
え? ちょっと、まさか『愛人』とか『第2夫人』ですか⁉︎ それはあり得ないんですけど!!
すると顔色の変わった私の考えが分かったのか、「違う! 正式な妻だよ」と、少し焦って訂正されてから仰った。
「……実はあれから、兄王のご指名により正式に私が国王となる事が決まったのだ。……けれど貴女に冷静に私との事を考えて欲しくて、貴女の周りに緘口令をしいていた。
貴女には私の妃。……つまりこの国の『王妃』になって欲しい」
へ?
今、なんと仰いましたか?
オーヒ……。『王妃』。うん?
「ええぇっ⁉︎ 」
私は驚きのあまり、彼の握る手から自分の手を抜こうとした。……けれど、彼は私の手を強く握り返し、更に立ち上がり左手を私の背中に回し軽く抱きしめた。
「済まない。逃がしてやれない」
え? いや、断る余地ありそうに、さっき仰ってましたよね⁉︎
「でもそのっ。私は伯爵令嬢で、それ程権力のある家でも無く、本人も王妃の器などではありませんし!」
私は必死で断りを入れたのだけれど、ノーマン公爵……いえ、国王陛下は少し笑って仰った。
「あのパーティーで貴女が出て行った後、私は貴女を公爵として保護していく事を皆に宣言した。その後シュバリエ公爵家、フォートナム公爵家、ワーグナー侯爵家、ソドムス侯爵家……。他にもたくさんの貴族が貴女の保護と後見を申し出た。リリアンヌ、貴女はある意味この国で1番王妃に相応しい存在となっている。そして、貴女の王妃としての器は充分過ぎると思っているよ」
……えぇっ!!
ちょっと、いえものすごく!! 驚くことばかりなのですけれど!
公爵家と侯爵家、その他にもたくさんの貴族の後見って……、そんなこと、あり得る?
お父様お母様! リリアンヌは全く聞いておりませんよ――!! 最近何か隠し事があると感じていたのは、コレだったのですね!!
陛下は私を腕の中に収めたまま、慌てふためく私を見てニッコリと笑われた。なんですか、余裕の笑みですか⁉︎
「逃がす気は全くないけれど、貴女の口から良い答えを聞きたい。どちらにしても貴女はまだ学生で、すぐには式は挙げられない。しかし国内外に通知をして準備をし始めなければならないし、この一月位で気持ちを固めて欲しい。
……リリアンヌ嬢?」
式、式って……! まだ返事もしてないのに……! しかも、一月で気持ちを固める⁉︎ 無理でしょう!
私は涙目になって陛下を睨んだ。
そうしたら、なんと! 陛下は頬を赤らめたのだ! なんで? 睨んでるのに!
「リリアンヌ嬢、可愛い……。学園には王宮から通ってもいい。そうだな、その方が警護もしやすいし……」
何を、仰っているんですか……⁉︎
私が更に混乱していると、扉の方から声がかけられた。
「良い訳がないでしょう。婚約もしていない令嬢をどんな理由を付けて王宮に留めるのですか。……いつも冷静な陛下らしくもない」
そう呆れた口調で言いながら入ってきたのは、パーティー前にご挨拶したウォード伯爵だった。
お読みいただき、ありがとうございます!
ノーマン公爵が国王となっていて、しかもその王妃? そして高位貴族達の後見? 大混乱のリリアンヌです。
そして国王陛下も暴走気味です…。




