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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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72 復活!

「ただいま、ニコラス! 貴方の大好きなモーガン領特産の魚の干物に、貝の干物よ!」


 約一月のモーガン伯爵領での休養を終え、カールトン伯爵家に帰った私は玄関で出迎えてくれた弟に言った。


「わーい! 僕の大好きな干物〜! どれから食べよかな……って、別に大好きじゃないし⁉︎ しかも、干物ばかりじゃない! イヤ、美味しいけどね⁉︎」


 あら、我が弟もノリツッコミというものが出来るようになったのね……。成長したわね……!


「モーガン領の海からここまで2日かかるのよ? ナマモノなんて持って帰れないもの。まあ、私は美味しくいただいて来たけれど」


「ちょっと! 姉様! やっぱり姉様だね! 遊びに行く前はシュン……ってしてたのに、何その変わり身の速さ! あー! 心配して損した!」


「あら、心配してくれたの?」


 途端に赤くなるニコラス。ふふ、可愛いわね!


「もー! 知らない! はやくお父様とお母様のところへ行けば⁉︎ 2人とも首を長くして待ってたし!」


 ドキッ……。


 そういよいよ私の隔離生活もお終い。カールトン伯爵家に帰った私は両親とこれから先の話をすることになっているのだ。


 私はふう、と息を吐く。

 よし! 行くわよ!


 密かに心配そうに見ているニコラスを横目に、私は両親の待つ部屋に向かうのだった。



~~~~~



「お父様お母様にはご心配おかけして、申し訳ございませんでした。そして長い間、自由にさせていただいて、ありがとうございます。…お陰様で、すっかり復活致しました!」


 私が笑顔で言うと、向かい合って座るお2人は少しホッとしたお顔をされた。


「…元気になれたのなら良かったよ。私達はリリアンヌが居ない間、寂しかったけれどね」


 お母様も頷く。

 私達は、3人で微笑み合った。


「そして……リリアンヌ。君はここに居ない間の王都での様子をどの程度把握しているのだい?」


 王都の?


「何も、存じ上げませんわ。モーガン伯爵領では皆さま敢えてそういったお話は避けてくださっていたようで……」


 お父様は一瞬ホッとしたような顔をしてから、難しい顔をしてお話された。


「では、王都でのこの約一月の様子を伝えておこう。

…まず、王妃殿下や第2王子殿下の刑が決まった。

王妃殿下は毒杯を賜ることになり、第2王子殿下は王位継承権剥奪のうえ労働をすることとなった。

王子殿下の側近3名は多額の賠償金の支払いを命じられ、各家は支払いの後彼らを廃嫡もしくは勘当とした。

そして子爵令嬢は悪意を持って公爵家令嬢に冤罪をかけようとしたとして、子爵家は取り潰しとなった」


 王妃殿下が、毒杯……。

 

「ソドムス侯爵家は、どうなったのですか? レナルド様はソドムス侯爵家令嬢のラウラ様の仇を取る為に動かれていただけだったのですけれど……」


「ソドムス侯爵家はお咎めなしだよ。そして王家より、ラウラ嬢に関する謝罪と賠償を受けることとなっている」


 私はそれを聞いてホッとした。


「それから、婚約を解消したことで心配していたようだから伝えておくが、リリアンヌには縁談がたくさん来ている。

これぞというお方がいるのだが、なかなか都合が合わなくてね。まだリリアンヌもそのような気持ちになれないかもしれないし……。また君の気持ちが落ち着いたら一度会って欲しい。だから学園が始まってもお相手を探す必要はないからね。

とりあえず、そのような話があることだけ覚えておいてほしい」


 ! それは……、驚きです。


 昔元王女の我儘でシュバリエ公爵家嫡男と婚約破棄させられたソドムス家の令嬢は、その後は傷物令嬢として辛い思いをされた話を聞いていたから、てっきり私もそんな扱いを受けると思っていたわ。

 しかも、その中にお父様がこれだと思う程の方からの申込みがあったなんて……。

 ちょっと心配だけど、今の口振りから無理矢理決められる訳ではないみたいだし、今はそれ程深く考えなくていいのかしら?


「…分かりました。傷物令嬢の私にお声をかけてくださるなんて、奇特な方がいらっしゃったのですね?」


 私がそう言うと、お2人は驚いて言われた。


「リリアンヌが『傷物令嬢』などと! …皆、お前を褒め健気な令嬢だと、そう言ってくださっているのだよ。だからこそ、こんなにもたくさんの縁談が来ているのだ。

自分に自信を持っていいのだよ。リリアンヌはそれだけの行いをしてきたのだから」


「そうよ。あれからどこの催しに出掛けても、リリアンヌの事を褒めてくださるのよ。貴女は胸を張っていいの」


「お父様……お母様……。ありがとうございます。そうですわね。私は私でしかいられませんし」


 やっと力が抜けたところで、またお父様が難しいお顔をして言われた。


「ところで……。あれからワーグナー侯爵とマティアス殿が来られ、丁寧な謝罪と慰謝料などの話があったのだが……」


 あら、いきなり生々しい話になりましたわね、先程まで感動的な感じでしたのに。


「その時に伺ったのだが……。ワーグナー侯爵夫人があの騒ぎの後倒れられ……」


「! マーガレット様が⁉︎」


「…そうなのだ。それから一週間程寝込まれたそうだ。その後も余り体調が良くないらしく……」


「私、お見舞いに参りますわっ!」


 私がすぐにでも行きそうな勢いで言うと、お父様に止められる。


「待ちなさい。…リリアンヌは、ワーグナー侯爵家に、…婚約を解消した家に行っても……大丈夫なのかい?」


 私は、少しキョトンとする。

 そっか、そうよね……。普通は婚約を解消した者が家に出入りするのは、おかしな事よね……。でも……。


「私は、行きますわ。マティアス様とは残念な事でしたけれど、私はマーガレット様を変わらずお慕いしておりますもの。マーガレット様が、私に会ってもいいと思ってくださるのなら、私は参ります!」


「そうか……。本当は、ワーグナー侯爵は我が家に来た時すぐにでもリリアンヌに来て欲しい様子だった。流石にマティアス殿に止められていたが。…それならば、行って差し上げるといい。…その前に、夫人に書状を書くのでお渡ししてくれるかい? 必ず、リリアンヌとお話する前に読んでいただくように」


「? 分かりました。必ず、先に読んでいただきます」


 そして私はワーグナー侯爵家にお訪ねしたい旨の手紙を出すとすぐに返事がきた。侯爵夫人より、すぐに会いたい、との美しい便箋のお手紙だった。

 そうして私は伯爵家に戻った翌日には、ワーグナー侯爵家をお訪ねすることになったのである。

 



お読みいただき、ありがとうございます!


リリアンヌが休養をして、やっと元気になりました。

家族はホッとしていますが、本人に秘密にしなければならない事があるようです。なのでうっかり話してしまわない様に、結構ヒヤヒヤしてします。

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