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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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38 ワーグナー侯爵家の間者

「よく来てくれたね、リリアンヌ」


「お会い出来て嬉しいです、マティアス様」


 …などと定番の挨拶を交わしつつ、2人で微笑み合う。

 シュバリエ公爵とお話しした日の週末、私はワーグナー侯爵家にお邪魔していた。


 ワーグナー侯爵家の応接間に入り、いつものかぐわしい紅茶と本日のスイーツが出される。今日は、アップルパイですね! 焼き立ての甘い香ばしい匂いが部屋中に広がる。

 ふわぁ、美味しそう……!


「ふふ……。母上の言われる通り、本当にスイーツが好きだね、リリアンヌ。今日のパイのりんごは昨日ノーマン公爵より頂いたものだよ。ノーマン領は果物が豊富だから。美味しい物もたくさんあるだろうね」


 ふふ。マティアス様は本当にノーマン公爵が大好きよね。


「まあ……。それは一度ノーマン公爵領へ行ってみたいものですわね」


 美味しいモノがいっぱい……。フルーツタルトやフルーツがたっぷり入ったパウンドケーキ……。フルーツのコンポート……。

 あぁ、食べたーい!!


「一度と言わず、何度でもノーマン公爵は歓迎してくださるよ、きっと。またいつか行こう。

…あぁ、君達は下がってくれ」


 と、仲良しアピールをしてから侍女達を下がらす。

 あら? 侍女達の中にも気を付ける様な人が居るのかしら?


「マティアス様? お屋敷の中で、何か気になる事がおありなのですか?」


 扉が閉まり、足音が遠くなったと確認してから問うてみる。


「いや……。『念には念を』だよ。僕達が普段から仲良くしている、と思わせたいからね……」


 うん?


「どなたに、思わせたいのですか?」


マティアス様の美しい緑の瞳をじっと見る。

マティアス様は一瞬目を逸らされたけど、逃れられないと思ったのかため息を吐かれた。


「リリアンヌにはかなわないな……。実は今の侍女の1人はとある貴族からの紹介で入ったんだ。…前に、ある時期から私に迫ってくる令嬢はいるかと聞いただろう?…その令嬢の家からの、紹介だ」


 ギブソン子爵から、という事ね!

 まさか、侯爵家に間者かんじゃを入れるなんて!


「その令嬢から……アプローチされたのですね? マティアス様はその令嬢の事はどう思われていますの?」


 あらやだ。ヤキモチ妬いてるみたいね。


「どうも何も……。私はまったく興味は無いよ。そもそも対象外だったからね。その様に言って来られた時は本当に驚いた……。

両親も余りの節操のなさに呆れて……、ッ!」


 途中で言い過ぎたと思ったのか私を見る。

 私はずっと、 マティアス様の目を見ていた。


「マティアス様……。それは、ギブソン子爵令嬢ですよね?

…この間こちらにお邪魔させていただいた時、ダニエル様と喧嘩なさっていたでしょう? それで、私気になっていましたの。

そしてもしも、ダニエル様からだとしたら誰にお話したのかしらって考えました。軍や学園の方にお話したのなら、もっと周りに広まっているはずでしょう?」


 と、前回ダニエル様とお約束したので、学園でのダニエル様との会話の事は伏せておく。


 マティアス様は驚かれた顔をしたけれど、やがて大きなため息を吐かれた。


「…本当に、リリアンヌにはかなわない……。降参だよ。

…そう、ダニエルからギブソン子爵令嬢に伝わった様だ。

カタリーナと第2王子との婚約が決まってすぐに、ギブソン子爵令嬢が私の所へ来た。余りにも直後で落ち込みを隠せない私に、『貴方をなぐさめたい』と……」


 …『貴方を慰めたい』⁉︎

 …えーっ⁉︎ そ、そういう事?


「そ、それは……なんという大胆だいたんというか、淑女しゅくじょにあるまじき行動というか……。え、そういう事なのですよね⁉︎」


 それは……なんというか、つつしみがなさすぎるわよ!

 私が目を丸くしていると、


「本当に、私も驚いたよ……。私もそこまで節操なしではなかったから何も無かったけれど、人によってはそこで何か間違いが起きていたかもしれないからね。

場合によってはそれで『既成事実きせいじじつ』が出来て婚約、という流れにでもなりかねない」


 本当に……そういう事なのよね⁉︎ 貴族令嬢としては1番ありえない結婚の仕方なんだけど……。

 そこまで、侯爵夫人になりたかったという事……?

 でも、それならマティアス様が公爵家に婿入りし、次期侯爵となるダニエル様でもよかったはずだわ。…という事は、マティアス様を好きだった、って、コト……。


「マティアス様……。その事をご両親には……?」


 私はあまりの話の内容に、ため息を吐くように聞いた。


勿論もちろん、お話ししたよ。

…うん、想像通りだよ。お2人とも大変お怒りになり、その後呆れ果てた。それからは彼ら子爵家は要注意人物と我が家で考えられている。

だから彼らからの紹介で入った侍女は敢えて泳がせている。執事や主要な使用人も分かっているよ。

…まさか、彼らからカタリーナとの婚約話が漏れていたとは、その時は考えていなかったけどね。

本当はダニエルとの付き合いもやめさせたいのだけれど……。…彼は真っ直ぐで、これまでずっと子爵令嬢との仲を認めてもらう、その一心で軍や学園で頑張ってきている。彼の気持ちが切れてしまう事を避ける為に話をまだしていないんだ……」


 そうなのね、でも、それはダニエル様にとってはどうなのかしら?


「でも、いずれはお話されるのですよね? 事実を隠すのは彼の心を余計に傷つけてしまうのでは……?」


「両親は、ダニエルが学園を卒業した時話をしようと考えられているようだ。

だが先日、私との喧嘩で子爵令嬢の話を少ししただけで彼はキレてしまったからね。どのような結果になるかは私にも見当つかないよ……」


 そう困り果てたように仰った。




お読みいただき、ありがとうございます。


初めマティアス様は、侍女への『リリアンヌと仲良しアピール』もありましたが、リリアンヌへ『ノーマン公爵の良い所アピール』もしたかったようです。

食いしん坊のリリアンヌがフルーツの特産地であるノーマン公爵領に魅力を感じでくれないかな、と思ったようですね。

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