3 リリアンヌと『私』
やっと、思い出します!
『薔薇の誓い〜5人の騎士達』
彼氏と別れ、もう男なんて懲り懲りだ仕事に生きる! と荒んでいた『私』に友人が勧めてくれた乙女ゲームだ。
余りにどハマりし過ぎて連日徹夜し、寝坊して慌てて駆け降りようとした階段から落ちて……。そこで『私』の記憶が終わっている。
『私』の人生は……、まあ恋愛運は無かったものの家族や友人、仕事は……若干お局的に扱われる時もあったし上と下に挟まれて色々あったけど……。まあ仕事だからね。それなりに充実していたと思う。
そして中学で切ない初恋、高校で失恋、大学で初彼社会人で浮気な彼氏、という大したことない恋愛遍歴で男は懲り懲りの域に達した訳で、まあ一度の恋で人生終わりやないよーと非常に良く分かっているつもりだ。だからといって全く傷付かない訳ではないけれど。
……って、アレ? 『私』がやっていた乙女ゲームの登場人物と同姓同名で似た人物を、今の私はたくさん知っている、わよ??
どういうこと?? と混乱しながらもリリアンヌの中に、『私』の一生分の記憶がどんどん流れ込んでくる。
凍えた心に、『ちょっと待ち〜! 人生山あり谷あり、1人の男がなんぼのもんじゃい! 男なんてシャボン玉〜、なんやで!! 1人の男の気まぐれに、こちらが色々振り回されてたまるもんか!! 自分が考えた納得出来る人生を歩むんだー!』
リリアンヌがちょっとキョトンとし、苦笑いした気がした……。
リリアンヌに『私』が同化して、目覚めるとあの日倒れてから3日が経っていた。伯爵家の自分の部屋で目を覚ました私を見て、家族や侍女に泣かれてしまった。すごく心配してくれていて、周りからとても愛されていると感じて嬉しくて、少し泣いた。
「侯爵家で倒れたと連絡が来てとても驚いたわ。あちらで療養させると言われたのだけれど、お医者様から移動させても大丈夫だろうと言われたのですぐに連れて帰って来たの……。ここ最近、貴女とても悩んでいたでしょう? マティアス様はとても貴女を大切に、丁寧に接してくださってるように思えていたけれど……」
お母様が涙ぐみながらそう言って私を見つめた。
私がマティアス様との事で悩んでいる事に、気付いてくれていたのだ。
「お母さ…っコホッコホッ」
「まあ! さあお水を飲んで! 貴女3日間も高熱を出して意識を失っていたのよ。…ごめんなさいね、無理はしないで。」
お母様が私の背中を優しく手で支えてくれて、私は少し柑橘類の入った爽やかなお水で喉を潤す。
「…お母様、私は大丈夫ですわ。そして、回復次第マティアス様ときちんとお話いたします」
「リリアンヌ。…侯爵家で何かあったのならば、私たちに相談して頂戴? 貴女がこれ以上傷つくのは私達も辛いわ」
お母様が私の手を握る。明るい緩やかなウェーブの金の髪のお母様。私の髪も大好きなお母様譲りで、小さな頃から私の自慢だった。
「ありがとうございます、お母様。本当にどうにもならない時はきっと相談させていただきますわ。まずは元凶……いえ当事者のマティアス様と、落ち着いてお話をしたいのですわ。」
私がゆっくりお母様の目を見て落ち着いた様子で話すと、お母様は暫く私の目をじっと見た後、
「…分かったわ。でも何かあればきちんと私達に話をして頂戴。」
と許可してくださった。
その後お父様にもお許しをいただき、お医者様から体調のお墨付きをいただいてから、私リリアンヌはマティアス様の待つワーグナー侯爵家へ向かったのである。
――そう。私は知っている。この世界を。そして、この先に起こってしまうことを。そして、マティアス様は――
リリアンヌと『私』連合軍の戦いが、今始まろうとしている……!




