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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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29 ゲームとの違い

 どうなっているの?


 ゲームと現実の違い。


 今まで「現実になるとこういうものなのか」とか「周りから見たらこう見えるのか」と思い込んでいた、『違い』。


 本当は、全然違っているのじゃない?


 そもそも、悪役令嬢であるはずのカタリーナ様が全く悪役ではない。

 優しい王子様のはずの第2王子は傲慢で勉強や剣術も苦手。

 何より、彼の印象的な緑の瞳が青に変わっている。


 そして、これだけインパクトのあるノーマン公爵がゲームでは全く存在すら記されていないなんて?


 そして、14年前の戦争に4年前の流行病……。


 ゲームでは記されていなかっただけ?


 もしかして……。マーガレット様の言葉を思い出す。


『元王女の我儘で隣国との婚約は破棄され、当時の隣国の怒りは相当で……』

『あの戦争が起こったのは王女の我儘とその後の外交をきちんとしなかった王家の責任……』

『王女の我儘を許した王家に貴族達からの信頼は失墜し……』

『王女が不幸にしたシュバリエ公爵家の件があったからフォートナム公爵家令嬢は結婚を断り、別の侯爵令嬢が王妃となった……』


 すべて、『王女』から始まっている。

『王女』がこの世界の歪みを始めてしまった……⁉︎


 その『歪み』がシュバリエ公爵家を不幸に陥れ王家の権威を失墜させた。そして恐らくはマーガレット様が『王女』の件を出し王との結婚を断った事で……本来の第2王子の瞳の色や人物像が変わってしまったのだわ……!

 マティアス様の、あの印象的な緑の瞳は、本来マーガレット様が王妃になられ、王子に受け継がれるハズの色だったんだ……!!


 そして両国の架け橋となるはずだった婚約を身勝手に破棄し、隣国の恨みをかった事でなかったはずの戦争が起こった。そして戦争の英雄となったノーマン公爵がこの現実の世界で台頭する事になった。


 流行病はわからないけれど……、もしかしたら第2王子の婚約者となった侯爵家令嬢をはかなくさせる為の天の災いだった……⁉︎

 ゾクリ、と寒気がした。

 恐ろしい事だけれど、それでカタリーナ様が第2王子の婚約者となれば、『薔薇の誓い〜5人の騎士達〜』の最初の舞台がととのってしまうのだわ……! 王女が引き起こした歪みが矯正きょうせいされたという事になる……⁉︎


 そう、確実に言えるのは、ここは私がしていたゲーム『薔薇の誓い〜5人の騎士達〜』の世界とは違ってしまっているという事。


 主要な人物や設定は同じ、けれどもそれまでの流れなどは違ってしまっている。

 まるで、ゲームの初期設定だけムリやり合わせたみたいだわ……!



「…! ……ンヌ嬢! …リリアンヌ嬢!」


 ハッと気がつくと、ノーマン公爵が心配そうに顔をのぞき込んでいた。


「大丈夫かい⁉︎ 顔色が悪い。

すぐに家に帰った方がいい。送っていこう」


 ノーマン公爵はそう言うと、さっと私の後ろの方の林を見た。


「そこにいるのはリリアンヌ嬢付きの者だろう。

急に体調が悪くなったようだ。馬車の用意は出来るかい?」


 しまったわ、つい考え込んでしまって……。ご心配をおかけしてしまったわ。

 私は大丈夫だと言おうとしたけれど、何故だか喉がカラカラで声が出ない。


「…ノーマ…公爵…ッ……。だ、いじょぶ、です……から……」


 彼はカッと目を見開いて私を見た。


「何が大丈夫なものか! …リリアンヌ嬢?

そこの者! 用意が出来そうでないのなら、私の馬で屋敷まで送るから後から付いて来てくれ!」


 そう言って、ノーマン公爵は私をお姫様抱っこ! したのだ!


「…ッ! …ノーマン…公爵……ッ!」


 私は大丈夫だから降ろして欲しい、と必死でアピールしたけれど、彼はそのまま公園の端に繋いであった馬に軽々と乗り、走り出したのだ!


 お姫様抱っこの体勢のまま乗ったので、顔が公爵の胸の位置にあるのです! 手綱を持つ腕の中にホールドされてる状態です! どうしよう、私の手のやり場も困ってしまって、とりあえず彼のシャツの胸の辺りを握ってしまってます……!(何の実況中継なのよ……!)


 私はさっきまで考えてたゲームの事も吹っ飛んでしまって、彼の腕の中で真っ赤になりながらもじっと大人しくしているしかなかった……。

 公爵の身体は鍛えているのだろう、筋肉量が半端なかった。どうしよう、なんだかいい匂いがするわ……って、私ってば変態みたいじゃないっ⁉︎


 目のやり場にも困って、見える限りの周りを見回したら、後ろからついてくる馬がいるようだった。


 そっか、知らぬ間に私に従者が付いて来てくれていたように、国の重要人物であるノーマン公爵様にも当然影で従者の方がいらしたのだわ……。

 さっきはつい生意気な事を申し上げてしまった……。


 などと考えていると、もう我がカールトン家に到着したようだった。


「開門! 開門せよ!

御令嬢リリアンヌ嬢が体調を崩されたのでお連れした!」


 我が家の門番は、戦争を潜り抜けできた圧のあるノーマン公爵のお声に驚き、慌てて扉を開けた。


「感謝する」


 そう言うと馬は颯爽さっそうと我が家の入口まで乗り付け、ノーマン公爵はひらりと降りた。…私を抱っこしたまま!


 そしてお姫様抱っこに抱き直し、私の顔を覗き込んだ。


「大丈夫かい? リリアンヌ嬢?

! 顔が赤い……。熱が出ているようだね。もう少しだから我慢して?」


 そう言って歩き出した……。

 あの! 顔が赤いのはお姫様抱っこが恥ずかしいからです!

 うわぁ、皆んなに見られてる〜!

 でもこの状態でジタバタしたら余計に目立つので、もうここはじっとしているしかないわ……。


「カールトン伯爵家の方はご在宅か⁉︎ リリアンヌ嬢が体調不良なのだ。すぐに部屋に案内を頼む!」


 そこに我が家の執事が現れた。

 そして私達を見て目を見開く。


「お嬢様!

…どうぞ、こちらへ!」




お読みいただきありがとうございます。


急に黙り込み、顔色の悪くなったリリアンヌに、ノーマン公爵は心配のあまりに暴走気味です。

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