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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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28 王子の瞳とドレス

「それから……、このような事をお尋ねするのは不敬な事と分かってはいるのですが……。…その、王妃様の事、は……?」


 ノーマン公爵は、少し考えてから答えてくださった。


「その辺りも聞いたのだね……。そう、今の王妃は王子妃時代に元王女のような傲慢な、貴族を貶める様な目に余る行いをしたとして、王妃の権限のほぼ全てを奪われている。

今の貴族達の主となっている者の殆どがあの時代を知っているからね。その様な行いをする者が王家にいる事が許されない、貴族達が許さない。

…王妃も知っていた筈なのに、自分が上の立場に立つとその様な行いをした。王もそれを許した、とみなされる。今の貴族達はまだ王家を信頼はしていない。

おそらく彼女の生きている内に返り咲く事は出来ないだろう」


 冷たく淡々と語るノーマン公爵に、当時はそれ程の事だったのだと改めて思う。


「そうだったのですね……。私は両親からは何も聞いていなかったですし、学園でも第2王子がされる行いには皆眉を顰めておりましたが、王家の事は特に何も言って無かったように思います。だんだんと、薄れていくものかもしれませんね……」


「『薄れる』、か……。何もかもが薄れるのなら良いのだが、

王家自体の体質が変わらないのでは、結局また同じ過ちを起こしてしまうのかもしれないがね。

本来『過ち』は、しっかりと覚えて教訓としていかなければならないと、私は思うよ」


 その言葉に私は頷いた。

 本当に、そうね。2度と同じ過ちを起こさないように、しっかり覚えておかなければならないのだわ。


「それと、君が両親から聞いていなかったり他の生徒も知らぬ様子なのは、きっと同じ学園内に王家の人間がいるので、初めから相手を先入観で見て失礼な態度をとってしまわぬように、かもしれないね。

知っていても敢えて学園内では言わないように厳しく言われていると思うよ。若い子は素直だから後先考えずに不敬な事を起こしてしまって、その後の人生が取り返しがつかなくなるのは困るだろうしね」


 なるほど……。相手の人となりを知って、本人が思慮深くなったら、両親も教えてくれるつもりだったのかしら?


「私の両親も、そんなつもりで教えてくれなかったのでしょうか……?」


 そう言うと、「きっとその内にお話してくださるよ」と微笑まれた。


 そして、ふと思い出されたかのように言われた。


「そういえば、もうパーティーまでもう少しだが、身の回りの準備は進んでいるのかい?」


 そう、そうでした。あと2週間程なのです……。

 マリッジブルーならぬ、婚約破棄ブルー……。ダメだわ、何のヒネリも思い付かない……。


「はい、マティアス様よりパーティー用のドレスをいただいたのです。美しいエメラルドグリーンのドレスと金細工にエメラルドの首飾りですわ」


 私はノーマン公爵に簡単にドレスの説明をした。


「…そう、か……。マティアスの、色だね」


 心なしかテンションの下がったノーマン公爵。また責任を感じてくださってるのね……。


 そう、この国の貴族は自分の婚約者の女性に、自分の髪か瞳の色のドレスやアクセサリー等を贈るのだ。


「…はい。…カタリーナ様は、どうされるのでしょう……。きっと、第2王子様は何もお贈りではありませんよね?」


 ノーマン公爵は、申し訳なさそうに、


「あぁ。ルーカスはマリー嬢用に自分の瞳の色のドレスを作らせているとの報告を受けている。全くあり得ないことだ。何を考えているのか……」


 お身内だけに、婚約者以外に自分の色のドレスを贈るなんて、貴族の常識に外れた事をする甥に怒りを覚えていらっしゃるようだわ。


 そういえば、あの乙女ゲームで主人公目線の時、攻略対象者からドレスやアクセサリーをいただいたわ。周りから見るとこんなに非常識な事なのね……。


 ただ、それを着て主人公が卒業パーティーに行くシーンは圧巻あっかんだったわ……。


 そのシーンはとても印象的なシーンで、第2王子ルートでは彼の色である『エメラルドグリーン』の美しいドレスを着て、彼に手を引かれて王宮の会場へとエスコートされていくのだ。

 王子の緑の瞳に見つめられながら着るエメラルドグリーンのドレス。とても綺麗だったなぁ。あれは王宮もドレスも王子様もとても素敵だった……。ゲームの1番の見せ場のいいシーン……。

 現実はこんなだけどね。


 でも、そうか……。エメラルドグリーン、同じ色なのね。


「そうなのですね。…では当日は私はマリー嬢と同じ色のドレスとなるのですね……」


 色被りは会場でちょっと目立っちゃうかしら?


「……? いや、同じではないよ?

ルーカスはブルーのドレスを作っているらしいからね」


 え? ブルー??


「え? いえでも、ルーカス様の瞳の色のドレス、ですわよね?」


どこからブルーが出てくるのかしら?


「? ルーカスの瞳の色はブルーだよ? …あぁ、瞳の色なんて近くで見ないと分からないからね」


 と、納得されていた。が……。


 えっ……? ブルー……?


 どういう事?


 私は今までて1番、混乱した。


 他の事で思い違いがあったとしても、これだけは決して間違えない。だって、『薔薇の誓い〜5人の騎士達〜』で1番好きなシーン、この時から私はエメラルドグリーンが大好きになった。ゲームのオープニングにも王子の緑の瞳に見つめられた主人公マリーがエメラルドグリーンのドレスを着ている所が映っていたわよ⁉︎




お読みいただきありがとうございます。


リリアンヌはゲームと今の現実との決定的な違いに気付きました。

人の瞳の色は近くで見ないと分からないですもんね…。

そして、第2王子とそこまで近づいていなかった、という事にホッとしてしまうノーマン公爵なのでした。

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