第19話 〈思い出!!②〉
対魔王軍スペシャルパーティーの発表は晩餐会で滞りなく終わり、世界中の国々に、俺たちS級冒険者の寄せ集めパーティーの名が知れ渡ることとなった。
それは晩餐会に来ていなかったフーバスタン帝国や、敵である魔王軍にも間違いなく知れ渡っただろう。
俺達は晩餐会後に、王都フォルテッシモのとある宿に集められていた。
「では皆さま、本日からお仲間となりパーティーを組むのです。是非とも親睦を深めて下さい」
そう言って大陸同盟の人間は下がっていった。
「ったく、無理矢理連れてこられたと思ったら、こんなどこの馬の骨とも知らない奴らとパーティー組めですって!? 信じられない!!」
怒り心頭なのは食べ方の汚い残念な美人、女剣士ミレーヌ・モローだったか……。
「ははは……ですよね〜。困っちゃいましたね〜」
そう言って錫杖を握りしめているのは、巨乳の可愛い女神官アンナ・フランシェスカ。
「僕は別にパーティー組んでも良いんだけど……君達本当に強いの?」
この天才魔導士である俺の実力を疑っている童顔野郎は、闘技場の覇者だか何だったか、カイ・某だ。
他の二人の実力を疑うのは仕方ないとしても、俺の実力を疑うとは何事か。
俺の固有魔法で滅してやろうか!?
「そんな事よりも……」
それまで黙って聞いていた天才魔導士である俺が、ついに口を開く。
「なぜ俺の部屋で親睦を深める必要があるのだ……」
そうなのだ、今いる部屋は俺があてがわれた部屋なのだ。
パーソナルスペースに他人が入るのが嫌な俺は最低な気分に陥っていた。
「知らないわよ! ここに通されたんだから!」
オイ! そう言いながら人のベッドに腰掛けるんじゃねーよ!!
うっわ、最悪……もう、あのベッド使えないわ。
部屋変えてもらえなかったら、床で寝よ。
「皆さん、せめてカリカリせずにお話しましょうよ〜。アレだったらリラックス出来る魔法使いますけど?」
そう言いながらオマエまでベッドに座るのかよ〜、勘弁してくれよ。
お!? ま、まあオマエが胸に抱いてる俺の枕は? そのまま使ってやっても良いけどな。
「そうだよね。こんな狭い部屋で話してるから息も詰まるんですよ。何処かに場所を移しますか?」
そう言いながらカイ・某が備え付けの小さなテーブルの椅子に腰を掛けた。
賛成! 大賛成!!
なぜなら、俺の部屋なのに……俺の泊まる部屋なのに……俺だけ立って話をしているから。
おかしくない!? ねえ、おかしくない!?
オマエら、部屋主の俺が立ってるの何とも思わないの!?
オマエらの頭に本当に脳味噌入ってる!?
俺はそう思いながら三人の顔を順に見た。
ミレーヌ・モロー……あんな食べ方する女の頭に脳味噌が入っているわけがない……はいバカ決定。
アンナ・フランシェスカ……神官という職業柄知力は高いはずだが、栄養が全て胸にいってそうだな……うーん、ギリギリバカ。
カイ・某……さっきからチラチラ筋肉を見せつけてきている気がするし、この手のタイプは脳味噌まで筋肉で出来ているのが相場だ……絶対バカ。
はあ……俺はこんなバカ達と旅をしなけりゃならないのか。
先が思いやられるぜ。
この後しばらくの間、俺の部屋を沈黙が包んだ。
『キャーーーーー!!!!』
突然宿の外に悲鳴が聞こえた。
そして、パニックになっている人々の逃げ惑う声が聞こえる。
悲鳴にいち早く反応したのは女剣士ミレーヌ・モローだ。
俺の部屋の窓をブチ破り通りへと飛び降りて行く。
次にカイ・某がそれに続いて飛び降りた。
俺とアンナ・フランシェスカは窓から下を覗き、到底飛び降りれないと悟って「えへへ」と照れてから階段を急いで駆け下りる。
そして通りで見た光景は、はぐれドラゴンだろうか?
一頭の巨大なドラゴンと、ドラゴンから逃げ惑う人々、人々を庇いながら戦うミレーヌとカイ、そして駆け付ける衛兵達。
フォルテッシモは戦場と化していた。
そして俺は自然と叫んでいた。
「アンナ・フランシェスカ! ミレーヌ・モローとカイ・某に支援魔法! それが終わったら怪我した人の救護に回ってくれ!」
「わかりました!」
「ミレーヌ・モロー! カイ・某! アンナ・フランシェスカの支援魔法が掛かったら何とか引き付けてくれ! 俺が固有魔法で一撃で決める!!」
「オーケー!」
「任しといて!」
俺はすぐさま魔法の詠唱に入る。
俺の固有魔法は破壊力抜群だが詠唱が長いのが弱点だ。
俺が一人ブツブツと詠唱を始めるとアンナの声が響いた。
「ミレーヌちゃん、カイくん行きます! 火事場の馬鹿力!!」
ミレーヌとカイを虹色のエフェクトが覆い、支援魔法がかかり、攻撃力と耐久力が上昇する。
「サンキュ!」
「ありがとう」
アンナはそれを最後まで見届けずに、怪我人の元へと走り出していた。
「好き勝手やってくれちゃって……許さないんだから!」
ミレーヌが剣を抜き、凄まじい剣技でドラゴンを斬りつける。
みるみる内にドラゴンから血が吹き出ていく。
「いくぜオラぁ! 必殺! 獅子王正拳突き!!」
俺から見たら、ただの正拳突きにしか見えないが、カイの拳にエフェクトがかかっていたから、何かしらの技なのだろう。
ていうか、え!? 何か性格変わってないか!?
ドラゴンにカイの正拳突きが突き刺さると、はぐれドラゴンが片膝を着いた。
「よし、お前ら離れろ!」
俺の声を聞いてミレーヌとカイがドラゴンから離れる。
「馬鹿ヤロー! 死にたくなきゃ、もっと離れろぉ!」
俺の叫び声にミレーヌとカイが慌てて逃げて行く。
「俺の魔法は傷付き倒れた人々の無念の涙……さあ、おまえに裁きを与えよう」
フッ……決まった。
「星月夜流星群堕」
ヒューーーン…………ドゴーーン!!
ヒューーーン…………ズガーーン!!
ヒューーン、ヒューーン、ヒューーン……ズガガガガーーン!!!!
けたたましい爆音と共に、俺の魔法で呼び出された無数の小石ほど大きさの隕石が、はぐれドラゴン目掛けて落下してきた。
その威力たるや一撃でドラゴンの堅牢な皮膚と身体を突き破り貫通し、次々とドラゴンに風穴を開けていく。
「キャーーー!」
「うわぁぁぁ!」
隕石がドラゴンを貫通して地面に衝突する時に生じる衝撃波で、逃げ遅れたミレーヌとカイが吹き飛ばされる。
「フハハハ、部屋での恨みをこれでチャラにしてやろう」
「アシュリーさん! 何があったんですか!?」
爆音を聞きつけたアンナが急いで戻ってきた。
「えええ!? 何コレ? ド、ド、ドラゴンはどこに!?」
「ドラゴンなら、あのクレーターの底で粉々に砕けておるわ」
「ええ〜……無茶苦茶ですね〜」
「ちょっとアンタ! 街中でなんつう魔法使ってんのよ!」
「そうだよアシュリーさん。 ていうか某って何さ!? 僕の名前だけ覚えてないの!?」
「だから逃げろって言ったし、アンナに支援魔法も使わせただろ? あれ位の魔法じゃないとドラゴンは一撃で倒せないって。長引けばそれだけ被害が広がるだろうが。名前は知らん!!」
俺の言葉にミレーヌとカイは口をつぐむ。
まあ、俺の魔法の方が、街への物理的被害は大きくなったかもしれないけどな。
「だけど、お前ら三人とも中々やるじゃないか。俺の指示にも的確に動いてたし」
「えへへ、それほどですよ〜」
「ま、これくらいならね」
「酷いよ僕の名前だけ。バンスロー! カイ・バンスローだからね!!」
うるさい奴だ。
「でもアンタも咄嗟によく的確な指示出したわ。その後の魔法はやりすぎだけどね」
「馬鹿者が。アレでも大分威力は抑えたぞ」
「無理しないでいいわよ。全力でしょ?」
「飯の食い方と同じで、頭もよほどトロいと見えるな」
「何ですって!?」
「二人ともやめてくださいよ〜」
「そうだよ。みんな強いのが分かったから、それでいいじゃない。名前も覚えてもらえたし」
「この頭のトロい剣士に言ってやれ」
「キイィィッ! もう斬ってやる!」
「やれるもんならやって……」
「後悔しないよう……」
「いい加減に……」
「面白そう……」
「…………」
───現在───。
ふふふ。
今思い返すと、これはこれでいい思い出だなと思った。
セリフとセリフの行間を無くそうか悩んでいます




