第15話 帰宅
幻想的な色とりどりの花が咲き誇る花畑に1人の老人が大の字で倒れていた。
「なんてもんを生み出したんじゃあの魔女っ娘は。
さすがの儂でも手に負えんわい。
まぁ200年ぶりに暇を潰せたから良しとするか。」
老人は高らかに笑っていた。
「社長すみません。けがをしているのに運転してもらって。」
「いいんだ、気にしないでくれ。傷の方はお嬢の治癒魔法と沈痛の魔法で何とかなりそうだ。
傷が治るまでは自宅で仕事するわ。社員たちには明日朝一で全員に連絡だな。
この傷のまま会社に行ったらみんなびっくりするからな。」
エルウッド社長は豪快に笑っていた。
マエダが運転していた車は横転し壊れてしまったので後日回収予定である。
マエダとエルミナは後部座席に座っていた。
エルミナが彼の右側に抱きついている。
「エルミナ、いや・・・エル。
私は君がしたことはやはり倫理的に間違っていると思う。
でも君を罪に問いたいとか死んでほしいとかは思ってない。
君たちが襲われている場面を見た時ただただ死んでほしくないって思ったんだ。
この感情はエルが私に生き返ってほしいと思って私を創ったときと同じ気持ちなんだって気が付いたよ。」
「私こそごめんなさい。
あなたには少しずつ真実を打ち明けるべきだった。
いえ、真実も私の胸にしまっておくべきだった。
あなたと話せるのが嬉しくて勢いで話してしまった。」
「君を大事に思う感情も植え付けられたものかもしれないけど、それでも君のことが好きみたいだ。」
「私もよ。」
「そういうのは二人っきりになってからやってくれないかな。聞いているだけでこっちまで恥ずかしくなるよ。」
「ところで気になっていることがあるんだけど。」
マエダはエルミナに質問した。
彼女は上目遣いの瞳で答える。
「どうして私はこの世界の言葉とか文字が理解できるんだ?
この記憶って前の世界での記憶をベースにしているなら言葉も文字もわからないと思うんだけど。」
「私があなたに記憶を植え付けるときに言語分野をアップデートしておいたからよ。」
「アップデート?」
「そうよ、目覚めたあなたが私たちの言葉を理解できなかったら意思疎通に困るから。
円滑なコミュニケーションのためにあらかじめ言葉や文字と言ったもの、生活をするうえで必要な知識は入れておいたの。
だからあなたはみんなと同じように働けるし生活もできる。
例えば家電の使い方で困ったことなかったでしょ。」
機能は同じでもデザインは元の世界とは異なっていたが疑問に感じていなかった。
「・・・たしかに・・・」
驚いてそれ以上言葉が出なかった。
「そうだ、私からも確認があるんだけど、ケンスケさんは突然森で消えたみたいだけどどこに行っていたの?
それに急に頭上から現れたからびっくりした。
まるで異世界に行っていたみたいよ。」
「うーんそれなんだけど森で意識を失ったところまでは覚えていて、次に目が覚めたときは不思議なところにいたんだよね。
きれいな花畑のあるところで妙に明るくて癒されるっていうか。
そこでおじいさんと話をしていたんだ。」
「不思議な話ね。
そんなことができるなんてどの歴史書にも書いてないわ。」
「とても長生きしてるみたいだけどそのせいで性格とかがねじ曲がっちゃってて殺されそうになったよ。
石をぶつけられて気を失ったところまでは覚えているんだけどね。
その後はエルの横に落ちたところまでは記憶にないんだ。」
「そういうことだったのね。
不思議空間と怪しいおじいさんのことはわからないけど、あなたがそこから脱出できたのはあらかじめ仕込んでおいた緊急装置のおかげだわ。」
彼女はよかったよかったと顔をすりすりとこすりつけてくる。
「緊急装置って何?
エルって私を生き返らせたいとか言っていろいろ体にいじっているよね。
どうして森で消えたとかわかるの?」
「あなたの体に発信魔法の印を埋め込んでいるからよ。
緊急装置ってのはあなたが生命の危機に瀕した時にその状況を打破するために働く人格なの。
脳のリミッターを外して人間離れした動きが無意識下で働くように設計してあるの。
それこそ魔法と肉弾戦の両方が使えるスーパーマンになれる。
反動も大きいから明日くらいは全身疲労困憊で動けないと思う。」
彼女はすごいでしょと最後に付け加えた。
「それ怖いよ。さっきも言語のアップデートしておいたとかさらって言ってあったけど改造しすぎじゃないか。」
「この程度で驚いてはダメ。
あなたの体には私が10年かけて研究した成果をふんだんに盛り込んでいるわ。こっちの世界ではあなたは無敵よ。」
「・・・」
車は魔獣保護区入り口のビジターセンターを目指して平原の中を走っていった。
1章終わり。
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