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勃発②

予約

「おらぁ!」


「くっ、らぁ!」


「フンッ!」


虎男の攻撃をギリギリでかわして居合いを繰り出すも驚異的な身体能力でかわされる、さっきからこの繰り返しだ…俺の目的は時間稼ぎだから目標自体は達成出来そうだが、一矢報いたい俺としてはフラストレーションがたまる


「……中々やる…勇者よ。だがそろそろこちらにも時間がないのからな、残念だが、お遊びは終わらさしてもらう!」


こいつ、まだ上があるのかよ!?


「がはっ!?」


認知するのが精一杯で反応出来ない速さで懐に入られ、腹を貫かれる


「力也!!クソッ、力也を守れ!死なすなよ!」


ちくしょう…カルタ達じゃ無理だ、あいつはヤバイ…!


「雑魚どもがいくら集まろうと変わらないぞ…ふんっ!」


「!!?ガハッ」


カルタ!クソッ!




「「デスパペット」」



「何を!!?」ガッ


…?

突如現れたサイの獣人が虎男に殴りかかった…?一体何が…


「やあ力也君、無事かい?」


「ゲホッ……アラルコス、さん…?」


「…!!てめぇかぁ!アラルコス!!!!!」


「身体強化」


ドガァァァァァァアアア


いきなり狂ったように声を上げ、目で追うことすら出来ない速度でアラルコスに殴りかかり、それを受け止めたアラルコスを中心に直径10メートル程のクレーターが出来る


「少し落ち着きなさいよ、アレン」


「落ち着けるかぁ!!!くっ!?」


横から怒鳴る虎男へサイが殴りかかる


「アラルコス様!?どうしてこちらに!!?」


「カルタ君、早く力也君を治療してあげて、もう一人のもとへ急ぎなさい。私はこいつを」


「は…は?」


「いいから、こいつの目的は私です…それにあなたたちではあれには勝てない」


「くっ…」


「姫様、貴女は王女なんですから、あまり無茶はなさらないでくださいよ」


「あ、ああ……すまない」


「ほら、早く行きなさい」


「アラルコスゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」


ボゴォォォン


サイの獣人が吹っ飛んでくる


……!!?


「っ!力也!動けるか!?」


飛んできたサイの獣人が立ち上がって虎男に向かって飛び出すとほぼ同時にカルタがやって来る


「…なんとかなぁ………あれはなんだ?なんで頭が吹っ飛んでんのに動いてる?というかまずなぜ獣人が獣人を攻撃してる…?」


「あれはアラルコス様の魔法だ。今はそれで納得しろ…今すぐにここを離れるぞ!」


「あ、あぁ」


何を焦って…



「アラルコスゥ…お前は俺が殺す!!!」


「出来るものなら、ですね…私もあなたを殺したいと常々思ってましたから……私が殺そうとして逃げられたのは、貴方一人ですからね」


「くそがぁぁぁぁ!!」


「「デスパペット」……さあ、祭りの始まりですよ……どす黒く、真っ赤なね」


ドゴオオン!バガァァンと周りの民家を突き破って頭から血を流した犬や片腕のない馬、左胸にすっぽり穴が開いた猫の獣人、目から血を流し腕がそっぽを向いているやつに、上半身右半分が焼けただれた人間が飛び出てくる


……まさかアラルコスさんの能力って…


「死者を愚弄するのも大概にしろ!アラルコスゥ!!!」


「これが私の戦い方ですから」



「ここ一帯はもうアラルコス様の戦闘範囲だ、直ぐに出るぞ!今もう一人の勇者の居場所が分かった!既にデイジリー様と共にファール家本家で戦闘中だそうだ!」


…くそっ、ここにいても足手まといか…それよりも英雄だ、俺でもまともにたどり着くことすら出来ないんだぞ…俺にすらまだ勝てないお前にその場所は早すぎる!


「分かった!直ぐに行こう!」


side out


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side 英雄


流石に国を代表する家のトップ…追いすがることすら困難だね…そんな俺達に比べてデイジリーちゃんは…


「これで終わりです、「フォールシャイニング」」


その瞬間光が降ってきて一瞬目の前が真っ白になる


「くっ…どうなった……?」


チカチカする目を無理矢理開いて現状を確認しようとしたら、ドロッと縁が溶けて天井が数メートル程の大きさで穴が開き、その真下も同じように穴が開いている


「うっ…!!!?」


その直ぐそばでは体を焼ききられて絶命している獣人の死体が内蔵をこぼしながら倒れていた


「殲滅完了…」


「で、デイジリーちゃん!!なんで殺したんだ!」


「…なんで?逆に聞くけど、生かしておいて意味があるの?」


「なっ!?」


「もしここで生け捕りにしたとしても、国家反逆の罪は一族郎党みんな死罪よ。手間がかかるだけ」


「で、でも…」


何時も俺の味方をしてくれる皆を見ても目をそらすオルネラと当たり前という顔をするナタリア


「あなたが勇者なら、この程度なれておかないと痛い目見るわよ?…まあ私の知ったことではないけど。もう実力者はここに来るまでにあらかた殺したからこいつが最後だったし、後は使用人とかのはず。ここは任せていいわね?大体分家の人間だから殺していいから。私達はこのままイカーチ家へ向かうわ。そうね、ウォルタとウォルドの者は周りの獣人側犯罪者の殲滅に手を課して…他は私と一緒にイカーチ家へ」


「「「はっ!」」」


それだけ言うと魔法で壁に穴を開けて飛び出していく大聖堂組の面々


俺が間違ってるのか…?


「くそっ!!」ドン!


意気込んで乗り込んできて結局なにもできずに蹂躙されるところだった…年下の女の子に助けられ、なにもできず見ていることしか出来ないなんて…


壁を殴った拳がジンジン痛む


「ゆ、勇者様…」


いきなり壁を殴ったことで驚いたのかオルネラが心配そうに声をかけてくる


「大丈夫だ…とにかく残党を捕まえよう(・・・・・)


「…!はい!勇者様!」


「勇者殿…」


「殺さないで捕まえる、やってくれるか?」


「勇者殿がそう言うなら従おう」


「ありがとう」


…大聖堂組、力のレベルが違いすぎる…実力主義のこの世界、王族と魔王のツートップなんて名ばかり、俺らが教えられた国の戦力は王族側のもの。本当の実力者、ドゥーカファミリー格やその分家になるとほとんどが大聖堂組か警察…今回は魔王自身は動かないが娘のデイジリーちゃんが中心になって大聖堂組を動かしてる。俺達は大聖堂組や警察の元ではなく、王族側の戦力の元で育てられた…一体俺達はなんのために召喚されたんだ…?


「勇者様!探知魔法完了です!残党の多くは地下にいるようです!」


なんでこんなに片寄った体制で国が無事なんだ…?力也ならなにかに気づいているのだろうか…


「分かった、直ぐに行こうか」


「「はい!」」


……


「…何故殺さないのです?」


「勇者殿の意思だ。感謝しな」


「主や本家の人間を殺した奴に感謝だと?糞食らえだ!」


「貴様、図に乗るなよ!」


「ナタリア!」


「っ……ちっ!」ゴッ


ドサッ


ギリギリで踏みとどまり意識を奪うにとどめてくれたか


「…ごめんなさい」


「いや、ちゃんと止まってくれたからいいよ」


「勇者様〜、反抗的な人は皆眠らせました〜」


「ありがと、オルネラ」


「…あ、あの…私達はどうなるんでしょうか…」


10才程のメイドのが震えながら聞いてくる


「大丈夫、俺が君達の刑を軽くしてくれるように交渉するからさ。大人しくしててくれると助かるかな」


「は、はいぃ」


…そうだよ、こんな小さい子まで死刑にするなんてやっぱりおかしい、間違ってる!


「勇者殿…?どうかしたのか?」


「いや、何でもない…この子達を上の人に引き渡して、次に俺達の出来ることをやろう。まずは周りで戦ってる副隊長達と合流だ」


「分かりました」「了解。おい、付いてこい」


ナタリアがメイド達を引き連れて、オルネラが魔法で寝てる奴等を浮かせて移動を開始する


バタン!「英雄!」


その時戸が開き力也が入ってきた


「!力也!」


「無事か!?」


「ああ、一応な。今はこの二人と残党を…」


その瞬間、力也が俺の後ろを見て目を見開くのが見えた


「ッ!?」


直ぐ後ろを振り向くと一人の、先程声をかけてきたメイドが火で出来た剣でナタリアを切り裂かんとする瞬間だった


これじゃ間に合わない!!?


「ナタリア!よけ」


避けろ!、そう続けて叫ぶ暇もなく、火の剣が降り下ろされる


side out


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ここがファール家の本家だ!」


「分かった!」


「姫様!勇者様!」


ファール家の前に待機している兵士が声をかけてくるのに姫さんが答える


「む?兵士か、どうした?」


「はっ、中では既に戦闘がほぼ終了、主力はデイジリー様及びドゥーカファミリーの方々が殲滅を完了しました。現在中では使用人等の残りをもう一人の勇者様と大隊長方が殲滅中です!」


使用人の殲滅!?まずい、英雄がそいつらを殺せるほど非情になれるはずがない!その中に実力者が紛れ込んでいる可能性も否定できないのに!


「おい!今何処にいるか分かるか!?」


「はっ、先程探査の魔法を使った部下によると、勇者様と大隊長方が地下の人が多く集まってるところへ向かってる所だったそうです!」


やばい、急がなくては!


「おい力也!急に走り出すなよ!どうした!?」


後ろからカルタが声をかけてくるが反応してる暇はない


できる限りの身体強化をかけて全力で地下へ向かう。この事件が起こる前に渡されていたファール家本家の地図は頭に入っているので最短距離で向かう


バタン!


「英雄!」


「!力也!」


地下への戸を開けて中に飛び込むと英雄が一瞬驚き、すぐ嬉しそうな顔に変わる……気色悪い、その後ろで嫌な顔をしてる二人の方がましな気がする


「無事か!?」


「ああ、一応な。今はこの二人と残党を…」


!!?


その瞬間、メイドの一人が何かを呟いたように見えた瞬間その手元に火で出来た剣が現れる


「ッ!?」


俺の表情の変化から判断したのか英雄が振り向くがあの体勢じゃ無理だ、間に合わない!身体強化は…かかってる!


「「武器創造」」


焦っててイメージが定まりにくいが何とか形はできた!


足に力を込めて一気にメイドと大隊長の間に向かう


「ナタリア!よけ」


そんな言葉が英雄の横を通った瞬間に聞こえてきた


ブオオォ!!


振り下ろされる火の剣を造った刀で受けるが簡単に斬られ、火の剣が右肩に降り下ろされる


大隊長は間に入る瞬間に後ろから足をかけて後ろに転ばしたため火の剣は当たってない


「!!?…ヤアァァ!」


「っ!?ーーーーーーッ!?」


メイドは俺が間に入って剣を受けた事に驚いたようだが直ぐに顔に笑みを浮かべて肩に中途半端に食い込んでいる剣を力任せにふりきった


力を込められた火の剣に右腕が肩口から焼き斬られ声になら無い叫びが漏れる。断面は焼かれて既に血は出てないようだ


「くそがぁ!!」


トガァァ!


身体強化の魔力が多く回っている足でメイドを蹴り飛ばす

蹴り飛ばしたメイドは壁に埋まって意識を失ったようだ


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………っ痛ぅ」


右肩を見ると嫌な臭いがし、少し炭化してる部分も見受けられる


「……へ?力也…………?」


やっとで現状を理解したのか英雄が声をはっする


「…英雄」


思わず低く冷たい声がでる


「っ…」


「なんでこいつらを殺していない…?」


「そ、それは」


「こんな小さな子を殺すことなんて出来ない、か?」


「っ!!」


くそ、痛みでくらくらする…どうやらカルタ達がたどり着いたようだな


「お前がこいつらに情けをかけて生かしていたせいで、今お前の周りの人間が傷つこうとした…前にも言ったよな?お前は自分の行動に責任を持てるのか?って…昔、お前の尻拭いさせられたときにさ」


あの時は全部俺にとばっちりが来たからまだましだったか…


「今回のはなんだ?お前の判断でそこの大隊長一人、死ぬところだったぞ?」


「っ!!!!」


…まだ死ぬということに気がついてなかった…いや、目をそらしていたな…日本という温室で育ってるんだから当たり前か…前の世界じゃ俺の方が異端、こっちの世界のがあってるからな…


「この世界、もう気がついてるだろ?もとの世界ほど、人間の命に価値が無い」


「!!!!」


これだけ言えばいいか…もうひどい顔してるしな


「力也!おい、しっかりしろ!」


倒れかかる体をカルタに支えられる


「悪い、あと頼んだ」


痛みに耐性は無いから、これはきついや


「力也!おい!ーー」






……

………







……?ここは…


ゆっくりと上体を起こすと額にのせられていたであろうタオルが落ちる。場所を確認すると、王宮の自室のようだ


「失礼します」


という言葉と共にミーナが入ってくる


「…っ!!」


バシャァァと手に持っていた桶を落として驚いてる


「力也様ーーーっ!」


飛び付いてくるミーナを受け止めようとするが右腕、いや、右肩に激痛が走り思わず顔をしかめる


「はっ、す、すいませんっ…」


「いや、気にするな……」


今は右肩には包帯が巻かれていて様子はわからない


「あ、その、右腕なんですが、担当の先生が言うには「切れた腕の再生が出来るのは世界でも数人しかいないし、切り落とされた方があってもくっ付けられるやつなんて早々いない。それにつけられるとしても断面が綺麗な場合だけだ。このように焼かれている腕をくっつけたり再生したりするのは不可能だ」とのことで、表面を綺麗にして傷を塞ぐにとどまりました…申し訳ありません」


…そうか………まぁこれで英雄がしっかりしてくれれば、安いもんかな。昔俺以外の奴にとばっちりが言ったとき、本人は知らないが一生寝たきりになったやつもいたしな


「…あれからどれくらい経った?」


「はい、まだあの事件が起きてから1日です。ですが既に暴徒は鎮圧されて、街は平静を取り戻しつつあります。ドゥーカファミリーは獣人の火と雷、魔族の闇、及びエルフの無の交替が決定され、行方が分からなくなったドワーフ、エルフは犯罪者扱い、非戦闘員のエルフ、ドワーフ、獣人、魔族は王都からの退出が義務付けられ、結界のある所でできる限り王都から離れたところに押し詰められる事になりました」


「シャード家にナッスクラ家もか?」


「はい。シャード家は今回の騒ぎが収まりかけた瞬間を狙って魔王様を殺そうと一族で乗り込んだようですが、ほとんど被害を出すことなく鎮圧されたようです。ナッスクラ家のエルフは皆姿をくらました為犯罪者となりました」


「…英雄はどうしてる?」


「たしかあれから部屋にこもり、何か考え事をしているようです。ソフィーが心配していました」


英雄は大丈夫だろうな…俺らはこれからが本当の勝負になりそうだな。歴代の中で最も早熟な勇者はあっという間に魔王に追い付いたらしい……もしかすると、俺らが王族側で修行させられていたのはそれを怖れたからなのかもな……なんにせよ、圧倒的に実力不足だ。何が学生のうちに世界ランキング入りするだよ、己の身の程知らず具合に腹が立つ


「力也様…?」


「…悪い、少し考えてた………姫さんに、デイジリーと話をしようと思う」


「お休みになられなくてもよろしいのですか?」


「休んでる暇なんて無い、そう実感させられたんだよ…俺も、英雄もきっと、な」


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