第二話 暗転
桔梗(?)vs イドラ
「殺してやる」
悠然と構えるイドラ それに対し桔梗(?)の足取りはおぼつかない
闇剣に炎を纏わせそれを引きずるように手に持ちゆっくり ゆっくりと左右に身体を揺らしながら近づいてくる
「右鋼剣・左鉤爪」
イドラの右腕が鋼の剣へ 左腕が鋭利な鉤爪へと姿を変える 一瞬の静寂
それを切り裂いたのは――桔梗だった
「――ッ!」
先ほどまでのおぼつかない足取りが嘘のように一瞬で間合いを詰める
振り下ろされる闇剣 攻撃そのものは大雑把 だがその粗さによって生まれる隙を補うように桔梗の背中から黒い針のような触手が飛び出した
「チッ……!」
不規則に繰り出される連撃をイドラは紙一重で捌いていく
激しい攻防の中 闇剣の一撃がついにイドラを捉える
イドラは左鉤爪で闇剣を挟み込んだ そのまま弾き返し右鋼剣で斬り返す
しかし桔梗は身体を反らして躱しすぐさま距離を取った
「触れたな 闇の炎に」
桔梗が笑う イドラが左腕を見る
闇剣に触れた左鉤爪が燃えている 振り払っても消えない
「持続的に燃え続ける炎か……」
イドラは冷静に炎を観察する
「厄介だな」
「対処法はあるのか?」
イドラは答えない 代わりに右腕の剣を高く掲げた 桔梗(?)が眉をひそめる 次の瞬間イドラは自らの左腕へ剣を振り下ろした
燃え続けていた鉤爪が地面へ落ちる
「俺の能力は――【武器人間】」
失われた左腕に再び鋼が形成されていく
「闘気を使い 身体を武器へ造る能力だ」
「武器を造る…それが再生の役割も持つわけか」
「触れるのは駄目だな」
新しく形成された左腕が細長く変形していく
「左茨鞭」
鋼の茨を纏った伸縮自在の鞭
「茨の鞭か……」
桔梗(?)が前へ踏み出す その瞬間視界が揺れた
「ッッッ!?」
しなった鞭が桔梗の右頬を撃ち抜いた
「痛ってぇえだろうが!!」
「躾だ」
「チッ……!」
あからさまに苛立っている 冷静じゃない 怒りに任せ真っ直ぐイドラへ突っ込んでくる 今度は足
「ッ……!」
軌道を変え 腹部 肩 太腿 イドラは急所を避けながら確実に痛みだけを蓄積させていく
「痛い! またやりやがったな!!」
(…………?)
イドラが僅かに眉を動かす
(口調が……少し戻った?)
もう一撃
「痛い!! 何するんだよ!!」
顔つきも少しずつ変わっている
(痛みを与えるたびに 戻っている?)
「痛い……!」
その言葉にイドラの鞭がほんの僅かに鈍った その一瞬を桔梗(?)は見逃さない
「――油断したな ばぁか」
一瞬で懐へ潜り込む 闇剣がイドラの腹部を深く斬り裂いた
「ぐっ……!!」
さらに傷口へ闇の炎が燃え移る 苦悶の表情を浮かべながらもイドラは即座に能力を発動する
傷を負った腹部を鋼へ造り変え燃えている箇所をパーツごと切り離す そして再構築 能力をフル稼働させ傷を癒やすための時間を稼ぐ
全身を幾重もの鋼剣で覆っていく 桔梗(?)が呆れたように笑った
「てめぇはカメレオンか!?さっさと――」
既に間合いの中 振り下ろされる闇剣がイドラの眼前へ迫る
「死ね!!!」
その時
「やめて!! 桔梗!!」
二人の間へヴィタが飛び込んだ 背中から生えた蝙蝠のような翼 右腕を鋼へ変え振り下ろされた闇剣を受け止める
闇の炎がヴィタの右腕へ燃え移る それでもヴィタは退かない 左手を桔梗の顔の前へ突き出した
その掌の中で光が弾けた 蛍海命の危機に瀕した時蓄えていたエネルギーを使い強烈な光を放つ性質を持つ
「ぐっ……!!」
突然の閃光に桔梗の視界が奪われる イドラはすかさず左茨鞭を放つ
桔梗の身体を一気に縛り上げた さらに右腕も茨の鞭へ二重に拘束する
「ぐっ……!」
そのまま桔梗は地面へ倒れ込んだ だが暴走は止まらない
「離せ!!離せ離せ離せぇぇぇ!!」
「こいつ……!」
イドラが鞭を強く締める
「また様子がおかしい!ヴィタ 気をつけろ!!」
しかしヴィタは離れなかった 暴れる桔梗へ ゆっくりと歩み寄る
そして四つん這いになるように桔梗の身体へ覆い被さった
「おい ヴィタ!!離れろ!!」
ヴィタは動かない ただ桔梗を見つめていた
「辛かったよね」
「ガァァァア!!」
「私…桔梗の話を聞いて 元気づけようと思ったの」
「でも…ごめんなさい……」
「おい ヴィタ!」
「私が……」
ヴィタが暴れる桔梗の頬へ手を伸ばす
「貴方の傷を 抉ったんだよね」
能力のない人間は報われない 能力を持つ人間も持たない人間も口を揃えてそう言う
なら能力を持たない人間がただ“普通に生きる”というだけでどれほどの痛みを味わうのだろう
それはきっと 本人にしか分からない 辛い記憶はたった一つの言葉で蘇る 何気ない会話 誰かの表情 些細な出来事
それだけで過去は今の自分を傷つける 私はまだこの兄妹に話していない
母さんをこの手で殺したことを
言ってしまえばきっとこの短い関係も終わる だから過去を話す中で私は都合の悪い部分を隠した
事実を捻じ曲げた 自分で自分の過去を作り直した でも消したつもりの傷は消えてなんかいなかった
ずっと開いたままだった
「でも!桔梗は八つ当たりするような人じゃない!!」
桔梗の動きがほんの一瞬止まった
「出会ってまだ少しだけど…分かるもん!!」
桔梗は溜め込む人間だ 怒りも 悲しみも 苦しみも全部 自分の中へ押し込んでしまう
そして今回 それが溢れ出した “闇”と同調して
「桔梗を返せ!!」
ヴィタが叫ぶ
「桔梗!戻って!!」
嫉妬 恨み 怒り 悲しみ 些細な出来事から生まれるものさえ含めたあらゆる負の感情の昂り
それこそが闇の動力源
暗闇に埋もれた世界 その奥で誰かの声が聞こえる
必死に私の名前を呼んでいる 虚ろな意識の中 ぼんやりと光が見えた
その先にはヴィタがいた 必死に私へ何かを叫んでいる そして一粒の涙が私の頬を伝った
「桔梗は!!私の友達なんだ!!!」
その言葉を聞いた刹那 桔梗の身体を覆っていた闇が一斉に身体の中へ吸い込まれていった
静寂
そして最初に言葉を発したのは意識を取り戻した私だった
「ヴィタ…ありがとう」
「桔梗ぉぉぉ!!」
大粒の涙を流しながらヴィタが抱きついてくる
「良かったぁぁぁーーー!!」
「うわっ……!」
本当にこの子には敵わない ふとヴィタの右腕を見る 闇剣を受け止めた時からずっと燃え続けていた闇の炎
それは私の意識が戻ると同時に消えた 残ったのは痛々しい深い焼け跡だけ
「ヴィタ……その腕……」
「大丈夫 大丈夫!」
「でも――」
「ほら!むしろかっこよくなったんじゃないかな!」
イドラが私を拘束していた鞭を緩める するとヴィタはすぐにイドラのもとへ駆け寄った
「ヴィタ……」
イドラが傷ついた身体を起こす
「助かった……」
「全く……」
ヴィタは少しだけ俯いた
「家族は…兄しかいないんだからね……」
イドラはほんの少しだけ表情を緩めた
「あぁ……そうだな」
こうして一件落着――とはいかなかった この僅かな時間だけでも話さなければならないことは山ほどある
私の闇 イドラの疑念 隠していた過去 そして――そんな私達に
猶予は与えられなかった
「どうもこんばんは〜」
間延びした口調で近付いてくる 見るからに胡散臭そうな男だ 左肩には包帯が巻かれている
どうやら怪我を負っているらしい
「誰だお前」
「僕の名前はフルファイル 賭け事が大好きな男や 以後よろしくな」
「それ以上近付くな 撃つぞ」
フルファイルの足がピタリと止まる
少し考えるような素振りを見せた後 男は再び一歩を踏み出した
パンッ!!
一発の銃弾が男の頬を掠める
「ふふ 君は僕を殺さへん 最初はな」
「何?」
「賭けは僕の勝ちって話や」
また一歩 そしてまた一歩 ゆっくりと距離を詰めてくる イドラは銃口を男の頭に合わせた
そして引き金を引こうとした瞬間 重力が私達を襲った
「ぐっ……!?」
重い 身体がとてつもなく重い これは……この力は重力だ 空間そのものを重力が支配している
「兄……桔梗……動け……ない……」
私は喋る気力すら残っていない 為す術もなく重力に囚われていると新たな声が聞こえた
「重力からは逃れられない」
第一印象はお姉さんだった 高身長の美女 赤い髪に抜群のスタイル しかし
「なんだこいつら 既に弱ってる雑魚じゃねぇか」
口は悪かった随分と刺激的なタイプらしい
「ねぇ そこの女の子」
フルファイルが私を指差す
「闘気が全く無い」
闘気?何の話だ?
「不思議な子やな 闘気も無いのにさっきの禍々しい力……まさか……」
苦しい重力空間の中 私は必死に声を絞り出した
「何か……知ってるの?」
「さぁね」
知りたい 僅かな情報でもいい この闇のことも両親の過去も 何か一つでも知ることができれば……
「そうや 僕らステラの兵隊さんに追われてるんやった」
思い出したようにフルファイルが口を開く
「王は殺せんかったし 早よ逃げなあかんな」
王は殺せなかった?こいつは何を言っているんだ?
「今朝村の兵士がステラに向かって行った……お前達か」
イドラが重力に抗いながら睨みつける
「騒ぎを起こした張本人は」
「正解や そこの彼女にちょっと興味があって立ち寄っただけやねん」
フルファイルは軽く手を振る
「邪魔して悪かったな 行こか 那由多」
「とんだ道草だ 後で殴るからなお前」
「え〜 許してや 後でご飯奢るから」
「殺すぞ」
そんな物騒な会話を交わしながら 二人は走り去っていった
同時に重力が消える
「はぁ……はぁ……」
もう限界だ 意識が戻ってからずっとクタクタだ 三人ともその場から起き上がれない
「疲れた……もう……動けない……」
「ごめん 私のせいで……」
「チッ……また何か来るぞ」
「「え〜〜〜!!」」
大量の足音 ステラ王国の兵士達だ なけなしの気力を振り絞って泣き暴れるヴィタ 疲れ果てて微動だにしないイドラ
もう勘弁してくれ 心の底からそう願った
「君達 この辺りで男女二人を見なかったか?」
「……奥に進んでいったよ」
そう答えた しかしそれだけで済むわけもなく……
「目撃者として署まで同行願います」
そんなことを言われ私達はステラ王国の中心部へ連れてこられた
王国の守備部隊【パレード】 その本拠地だ 当然ながら待っていたのは質問の嵐
「おいっ!もう答えただろ!早くここから出せ!」
痺れを切らしたイドラが声を荒らげる
しかしその態度がかえって相手の不信感を煽ってしまった
「はっきりと言えよ」
イドラは苛立ちを隠そうともせず相手を睨みつける
「俺達が王の暗殺に関わってるって そう言いたいんだろ?」
「い いや……それは……」
相手は口ごもり歯切れの悪い返答を繰り返すばかり
「クソッ……」
隣の部屋ではヴィタが さらにその隣では私がそれぞれ別々に事情を聞かれていた
同じ質問を何度も繰り返されいい加減うんざりしていた
そして二時間が経過した頃━━━━━━━━━━━
「……はい……そうですね……多分……」
正直もうどうでもよかった 半分閉じた目で適当に相槌を打つ
(眠い……帰りたい……)
その時
(……ん?)
廊下が妙に騒がしい 慌ただしい足音 誰かの怒鳴り声 何やらただ事ではない様子だ
次の瞬間 バァンッ!! 乱暴に扉が開かれた
「おい お前達!早くその方達を解放せんかぁ!」
「王!意識がお戻りに!」
大勢の護衛に囲まれながら王と呼ばれる男が血相を変えて現れた
「早く!解放せんかぁ!!」
その一声で尋問から即解放 そのまま王室まで案内された
「本当にすまない どうかここは私の顔を立ててほしい」
王は深々と頭を下げた 周囲に護衛の姿はない
「シーケンス王 会えて光栄だ 助かった」
「君は確か 長の……」
「話は後だ 休息が欲しい」
イドラの横には ほとんど眠りかけているヴィタと私
「あぁ……すまん 話は明日にしよう そちらの部屋を自由に使ってくれ」
正直あまり記憶はない ふかふかのベッドに誘われ 泥のように眠ってしまったからだ
目が覚めたのは昼過ぎだった
早寝早起き朝ごはんを心掛けていた私にとって昼まで眠るのは久しぶりだ
「おはよ 桔梗ー」
「おはよう ヴィタ」
隣にはボサボサの髪をしたヴィタがいた 猫のように大きく伸びをして起き上がる
「とりあえずお風呂ー!」
「先に入っていいよ 待ってる」
「え?一緒に入ろうよ」
「え……」
さすが王室の浴室 広いし綺麗だし 一般人には手の届かないような高級そうなバス用品が並んでいる
金色のライオンの彫像 その口から絶え間なくお湯が流れ出ていた とにかく圧巻の一言だ
「桔梗!背中洗ったげる!」
「ヘヘヘ アリガトウ」
「どうしたの?まだ眠いの?」
「ヘヘヘ チガウヨ ダイジョウブダヨ」
なんでロボットみたいな喋り方になっているかって?
背中にふと当たったそれの感触が私の理性を攫っていったからだ
湯船に浸かり大きく息を吐く これほど身体に染み渡るとは思わなかった
水面に浮かぶ二つの山を眺めていると
「王のお風呂場って凄いね〜 私ん家は風呂釜だよ まぁあれはあれでいいんだけどね」
「今度そっちにも入ってみたいな」
「いいね〜 今度一緒に〜 入ろぉ〜〜」
少しずつ湯船に沈んでいくヴィタ まるでスライムのようだ
他愛のない話を交わしていると 自然と話題は昨日の出来事へ移った
「にしても昨日は散々だった〜 一日しか経ってないのが嘘みたい」
「確かに てか!普通にお風呂入ってるけど怪我大丈夫なの!?染みない?」
「昨日王様の護衛?の人達が手当してくれたの まだ完治とは行かないけど大丈夫( *˙ω˙*)و グッ!」
「イドラもお腹…大丈夫かな…」
「大丈夫 兄はがんじょーだから それよりごめんね 桔梗 兄が色々と……」
申し訳なさそうにしている けれど私は怒ってなんかいなかった これっぽっちも
「気にしてない むしろ感謝してる 救われたのは私だ」
「優しいね〜 根に持ってるなら代わりに私が殴ってあげたのに」
仮にそうしたところで拳骨がヴィタの頭を穿つ未来しか見えない
「謝るのは私の方だよ あの時……」
「お腹減った!のぼせちゃう!上がる!」
「早すぎだろ!」
「私は熱いの嫌いなの!王室のお風呂に興味があっただけ!」
そう言って一瞬で出ていった 本当にお転婆だな
「私も上がろう」
王の側近が用意してくれた服に着替え 部屋を出る そこには王とイドラの姿があった
「起きたか客人 よく眠れたかね?」
「あぁ はい どうもありがとうございます」
「腹を空かしておろう まずは食事を……」
私は王の言葉を最後まで聞くことなく漂ってくる匂いの方へ直進した
「元気な女の子だ 二人とも」
「悪いな シーケンス王」
「気にするな 昨夜の無礼を思えばこのくらい」
匂いの先には豪華な食事が並んでいた ビュッフェ形式だ しかし無礼は許されない ここは王城なのだから
当然
大きなトレーに料理を山ほど盛り先客であるヴィタの隣に座った
「ふぃふぉう!ここおこはん おいひいよ!」
(訳 桔梗!ここのご飯 美味しいよ!)
「本当!私も早速いただきまーす!」
豪勢な食事にありついた 舌が幸せだ 涙が零れ落ちるほど美味い
昨日使い切ったエネルギーを補給するように
二人で夢中になって頬張った
「戻ってきたか 気分はどうだ 馬鹿と阿呆」
「おはよ〜兄〜 美味しかった」
「おはよう イドラ 私今幸せだよ」
「ハッハッハ!満足してもらえて何より」
馬鹿と阿呆という言葉に反応する気力すらない それほど食事に満足していた
食後のプリンを頬張りながら話を聞く
「ねぇ ヴィタ」
「ん?」
「ヴィタの能力ってどんな能力なの?まるでコピーしてるみたいな……」
「正解!やるね〜!」
ヴィタは得意げに胸を張った
「私の能力は簡単に言うと三つまでコピーできるの!」
「へぇー!そりゃ便利だね〜」
「でしょ〜!えっへん!まぁ色々不便なところもあるけどね☆」
こいつ可愛いなホンマに
「待て」
イドラが話を遮る
「そもそもお前はあの時の記憶があるのか?」
「いや それが朧気っていうか……少しは覚えてる」
私は少し考えてから続けた
「それに 私の知らない記憶も見たし」
「その件も踏まえて まずは情報の整理だ」
するとヴィタが突然立ち上がった
「なら兄が桔梗をイジメたこと 謝って!」
「ヴィタ 私本当に気にしてないよ むしろ救われたんだって」
それでもヴィタはイドラを睨んでいる
彼女は私の過去の境遇を思って言ってくれているのだろう
でもイドラも同じだ
私の過去を知っているからこそ 現実から逃げるなと教えてくれた
「本人がそう言ってる 話はその後だ」
「ガルルルル……」
「ヴィタ ありがとう」
私は二人に先日の事を謝った
「本当にごめんなさい 二人とも傷つけて…」
「いいよ私のことは!これっぽっちも気にしてないもん!」
ヴィタは笑って腕を見せる
「むしろかっこよくなったんじゃない?」
「うん……凄く……かっこいいよ」
言葉が上手く出てこなかった 右手から肩の近くまで残った深い焼け跡
彼女の美しい身体を私が傷つけてしまった
それなのに気丈に振る舞うその姿が余計に私の心を抉った
「あの黒く禍々しいものは何だ」
イドラは私の謝罪を他所に問いかける
「あれは闇」
私は静かに答えた
「意識を失っていた時 過去の記憶が流れてきたの」
「過去の記憶?」
暴走して闇が私の意識を呑み込んでいた時 小さな声が朧気に聞こえた
(気を……て!闇……呑ま……!……!早く闇……げて!!)
(……!俺の手を……)
二人の若い男女 解像度の悪い夢のようだった 必死に何かから逃げている
「その他には何か見たの?」
「特に……その後に意識を取り戻した」
「闇……変わった力だ」
イドラは腕を組む
「能力ではないのは確かだが 一つ不思議な点がある」
「何?」
「闘気が溢れていた」
「闘気……フルファイルも言ってた」
私は首を傾げる
「それは何なの?」
「闘気の話は後だ 次に昨日のシーケンス王暗殺未遂についてだ」
城外では市民が不安の声を上げていた 兵士達はその対応に追われている
既に国中には二人の男女の指名手配書が張り出されていた
フルファイル・リオセス(24)
栞 那由多(18)
王暗殺未遂事件の首謀者
その全容をこれからシーケンス王が語る━━━━━━━━━━━━━━━━
【ホトユリ・ヴィタ】
主能力 三種自在のチャーム
見たものの能力や特質 性質などを能力としてコピーする能力 最大で三つまでコピー可能
コピーする能力を変更する際には大量の闘気を消費する ただしコピーした能力を使用する際の闘気消費量はコピー元の能力によって左右されない
「私を暗殺するために 彼らは奇襲を仕掛けてきた」
「奇襲……城の中にいたんじゃないのか?」
「フルファイルの能力によって 私は城外へ強制的に引きずり出されたのだ」
「どうやって?警備も厳重だったんでしょ?」
「昨日の朝のことだ━━━━━━━━━━━━」
一人の女が暴れている 今朝そんな通報があった 現場へ駆けつけた兵士達はその光景に言葉を失った
まるでそこだけをくり抜いたかのように地面に巨大な穴が空いていた
それも一つではないいくつもある そして穴の数だけ人間が地面にめり込んでいた
まるで何かに押し潰されたかのように
「早急に近辺の市民を避難させろ!主犯格を探し出せ!」
「「はっ!!」」
大量の兵士と王国守備部隊【パレード】が
周辺を捜索していた
「君はもう少し理性を保つ努力をせなあかんで」
「黙れ あいつらがずっとダル絡みしてくるからだ お灸を据えてやったのさ」
「はぁ……」
人気のない路地裏 そこに二人はいた ナンパ目的で那由多に絡んできた男達を片っ端から重力で押し潰したのだ
しかも先に手を出したのは那由多だった
「目的 忘れてへんよね 那由多」
「分かってる 王の暗殺だろ」
二か月に及ぶ滞在で二人は王城の兵士の数や配置 内部の構造まで把握していた
最も兵の少ない城の裏手 二人はそこで計画を進めていた
昼前 兵士の交代によって警備が手薄になる時間 そして王が自室へ戻り昼食を摂る時間
その瞬間を狙っていた
「始めるで」
「あぁ」
「賭け事」
フルファイルを中心にカジノのような空間が広がっていく
その範囲は緻密な計算によって王のいる部屋まで届いていた
「なんだこれは!?」
突如現れた異質な光景それを目撃した兵士が警報を鳴らす
「何事だ!」
警報が鳴り響く しかしシーケンス王は窓の外に広がるカジノ空間を見つめることしかできなかった
それがフルファイルの能力 賭け事
範囲内の対象と賭け事を行う能力 賭けが行われている間 第三者の行動は制限される
(何だこの空間は……身体が動かん……)
さらに対象を一人選択し強制的にカジノの中心へ転送する
つまりフルファイルのいる場所で賭け事が行われるのだ
「王!外に謎の空間が……王?」
兵士が王の部屋に入る しかし部屋はもぬけの殻だった
「貴様!何者だ!ここは城の外か!?」
「お初にお目にかかります シーケンス王」
フルファイルは深々と頭を下げる
「僕はフルファイル そして急ではありますが……」
顔を上げて微笑んだ
「死んでもらいますわ」
上空に巨大なボードが現れる パネルが次々と回転しやがて一つの文字で止まった
【ババ抜き】
「ババ……抜き?」
「ご存知でしょう?」
フルファイルは楽しそうに笑う
「さぁ!賭け事の始まりや あぁ…ちなみに賭け事に応じへん場合は負けになります ペナルティですわ」
二人の間には仕切りが設けられ 周囲には煌びやかな装飾が並んでいる まるで舞台のような空間
その中で行われるのは異質なほど単純な賭け事だった
互いにスペードの1を一枚ずつ
そして王の手札にはジョーカーが一枚加えられている
「スペードの1を引いたら僕の勝ちです」
フルファイルがゆっくりと手を伸ばす 王の顔色や仕草を観察しながら二枚のうち一枚を引き抜いた
そのカードはスペードの1
「僕の勝ちや」
直後 頭上に逆さまの巨大なルーレットが現れ
玉が勢いよく転がり始めた
楽しそうに見上げるフルファイル 対する王は未知の能力に驚愕していた
(これが……新世代……)
やがてルーレットが止まる 【スピード半減】
そしてカジノ空間が消えた 同時に王は走り出す 王の能力【加速】
走り続けることで速度が増していく
「え!?速っ!能力は聞いとったけど ここまでとは……」
フルファイルが驚く
一方でシーケンス王は自身の身体に違和感を覚えていた
(何だ!?遅い…普段ならもっと速く…この男の能力か!)
「逃げられるな 那由多!」
「いちいちうるせぇ!」
十分に加速する前に王の身体が重力に捉えられた
「グハァッ……!これは……重力!!」
「正解だ おっさん」
木の上には那由多が待ち構えていた
「あんたを殺せば私達はフィクサーの一員にになれる」
「フィクサー……あんな物に……」
「あんな物?」
那由多の表情が険しくなる
「ボンボンには分からねぇだろうな」
両拳を掲げる 重力を纏った拳を王目掛けて振り下ろした
しかし 王の姿が一瞬で消える
ドゴォォン!!
地面が砕け深い穴が空いた
「あ!?どこ行きやがった!」
那由多が辺りを睨みつける
少し離れた場所 そこには王ともう一人の男がいた
「大丈夫か シーケンス王」
「すまん……助かった ホロウ」
その男の名はホロウ 王直属の護衛を務めるベテラン能力者
新世代の一人 能力【ポイント】
二つのワープポイントを設置し 一方からもう一方へ移動する能力だ
「過去の異物が…いつまでも現世にへばりついてんじゃねぇよ!」
「そんなことはどうでもいい 王さえ守ればな」
「他の護衛が来たら面倒や 全力で行くで」
「あぁ」
王は立ち上がり腰に差していた剣を抜いた
「やれるか シーケンス王」
「援護を頼む ホロウ」
━━━━━━━━━━━━━━
「ちょっと待てーい!」
お馴染みヴィタである
「ヴィタ……黙れ」
「いや疑問は解決しないとムズムズする!新世代って何?意味分かんない!」
「私は知ってるよ 説明しようか?」
「ガーン!桔梗が知ってて私達が知らないなんて 世も末かも……」
「低く見られすぎて割とショックなんだけど……」
「私達?勝手に俺も含むな」
「じゃあ兄は知ってんの?」
「…………」
「やーい嘘つき〜 ウィ〜!」
「ゴホン!私が説明しよう」
王の咳払いとともに話題が戻された
「まず我々の世代は旧世代」
「そして先ほど登場したワープ能力を持つホロウ あの世代が新世代となる」
「へぇ〜 じゃあ私達も新世代?」
「その通りだ」
王は頷いた
「そしてそう呼ばれる理由もある」
「世代を経るごとに複雑化する能力 それが世代間を隔てる理由なのだ」
「えっと……つまり?」
「私の能力は加速 走り続ければ加速するだけの能力だ 至って単純だろう?」
「確かに……」
「それに比べて君達の能力は複雑だ 扱いは至難の業だが その分かなり強力でもある」
「それが君達新世代なのだよ」
「つまりシーケンス王が序盤 ホロウが中盤 そして私達が終盤みたいな感じか!」
「まぁそんなところだと思ってよい」
「私も一つ疑問 フィクサーって何?」
「知らないの?なら私が教えたげる!」
「世代間の呼び名も知らなかったヴィタに教えられるなんて……世も末……」
「うわ!ショック!やり返された!」
シーケンス王は少し呆れた顔をしている イドラは深いため息をついた これ以上の余興はやめておいた方が身のためだろう
「それで?フィクサーって?」
「存在しない国家みたいなものかな」
「存在しない国家……?」
続けてヴィタが得意げに説明する
「全国に薄く広く蔓延している組織 裏社会を牛耳っている奴ら それがフィクサー 中でもそれぞれの国に一人ずつ存在するボスは めちゃくちゃ強いらしいよ〜」
「そんなに公な存在なのに捕まらないんだね」
「大抵捕まるのは下っ端ばかりだ」
イドラが続ける
「恐らくシーケンス王暗殺未遂の二人は 暗殺に成功すればフィクサーの幹部にでもなっていたんだろう」
「ふーん まぁ危ない奴らってことは分かった」
ヴィタが王を見る
「シーケンス王 話の続きを!」
━━━━━━━━━━━━━━━━
話は昨日へ戻る シーケンス王&ホロウ 対するは 栞 那由多&フルファイル・リオセス
戦いは苛烈を極めていた 優勢なのはステラ王国側
「クソうぜぇ!ちょこまかちょこまかと!!」
「落ち着け那由多!僕の技が回復するまで待つんや!」
「まとめて……潰れろ!!」
広範囲に重力が広がる 周囲のあらゆるものが
地面へと沈み込んでいく
「はぁ……はぁ……どうだ!」
しかし ホロウの能力によって二人は既に重力の範囲外へ逃れていた
「クソが!」
「那由多 落ち着きや」
「ぶっ殺してやる!」
「那由多」
いつもより低い声 フルファイルが静かに呼びかける
「落ち着くんや」
「……悪い もう大丈夫だ」
「うん 気を取り直して行こか」
シーケンス王とホロウは数多の経験と巧みな連携によって 新世代の二人に抗っていた
「王とは名ばかりではない!返り討ちにしてやる!」
「合わせるぞ シーケンス王」
那由多は大きく息を吸いゆっくりと吐き出した フルファイルが再び口を開く
「賭け事ギャンブルズ」
選ばれたのはホロウ
上空のパネルが回転する
そして止まった文字は
【コイントス】
ホロウの右手には
いつの間にか一枚のコインが握られていた
「今回はコイントスや」
フルファイルは微笑む
「ルールは簡単 コインを投げて表か裏かを当てるだけ」
「僕はゲームマスターやからな 先に宣言させてもらうで」
フルファイルが指を一本立てる
「僕は裏・が出る方に賭ける」
「つまり表が出ればあんたの勝ちや」
「……やるしかないか」
ホロウはコインを弾き上げた
宙を舞うコイン
落ちてきたそれを右手で受け止め
左手の甲へ伏せる
「表だ」
ホロウは掌を開いた
現れたのは
【光】
表には光
裏には闇
そして光が意味するのは表
「…………」
フルファイルは僅かに目を細めた
「残念やな」
「僕が賭けたんは裏や」
「つまり今回の勝負は あんたの勝ちやで」
ホロウの勝利
しかしルーレットは止まらない
勝敗が確定すると
巨大なルーレットが回転し始める
そして
【DEFENSE HALVED】
防御半減
カジノ空間が消えると同時に
那由多が動いた
重力がホロウを襲う
だが狙いはあくまで
「私か!」
シーケンス王だった
二人が王へ襲いかかる
その瞬間
二つのワープポイントが
シーケンス王と那由多の足元に現れた
位置が入れ替わる
それを理解していた王は
目の前に現れたフルファイルへ剣を振り下ろす
しかし那由多もまた
入れ替わる直前に重力を残していた
「ぐっ……!」
重力に囚われた王は
その場に手をついてしまう
「死んでください 王!」
フルファイルの蹴りが
闘気を纏って王の頭部へ迫る
だが当たる寸前
ホロウが両手を動かした
王の足元にワープポイントが現れる
次の瞬間
王は近くの木を出口として現れた
そのままフルファイルへ斬りかかる
「なっ……!」
「フルファイル!!」
ザシュッ!!
剣がフルファイルの左肩を貫いた
「ぐっ……!」
苦悶の表情を浮かべるフルファイル
しかし
左手で剣を掴み
右手で王の身体を掴んだ
「くっ……!離せぇ!」
「やれ 那由多!」
那由多が王の懐へ潜り込む
重力を纏った拳が迫る
そうはさせまいと
ホロウが再びワープポイントを展開した
王は遠くへ転送される
だが
「賭け事ギャンブルズ!!」
対象を選択する
当然選ばれたのはシーケンス王
遠くへ逃れたはずの王が
再びフルファイルの前へ転送された
「やられたのぉ……」
上空に表示された文字は
【ロシアンルーレット】
一丁の拳銃
フルファイルはそれを手に取り
自らの頭に銃口を当てた
そして
カチッ
躊躇なく引き金を引く
弾は出なかった
「次は王の番ですわ」
フルファイルは左肩を押さえながら
気の毒そうに笑った
「あくまで賭けや 負けたとしても拳銃で死ぬわけやありません」
「ですが……」
視線を僅かに下へ向ける
そこには
鋭い目つきのまま動きを止めている那由多
フルファイルの能力によって
第三者の行動は制限されている
だが能力が解除されれば
重力を纏った拳が王を襲う
「お気持ちお察ししますわ 王」
「目の前に死が迫る感覚は いかがです?」
「私がそんなことで怖気づくとでも?」
王は拳銃を受け取った
そして迷うことなく
自らの頭へ引き金を引いた
カチッ
不発
「私は一国の王」
「これは試練だ 貴様らの思い通りにはさせん!」
「その覚悟 しかと承りました」
フルファイルは拳銃を受け取り
再び自らの頭へ向けた
そして
パンッ!!
銃声が鳴り響いた
「…………!」
フルファイルは面食らったような表情を浮かべる
(賭けに負けた……?)
(嫌な流れやな……)
そして能力が解除された
「死ねぇぇぇええ!!!」
那由多が叫び
重力を纏った拳を振り下ろす
その間に割って入ったのは
ホロウだった
(こいつ!この展開を読んでいたのか!?)
「ホロウ!?」
「王……お逃げ……ください!」
ホロウは闘気を腹部へ集中させた
自らの身体を盾にする
しかし
ホロウは【DEFENSE HALVED】
防御半減の状態にあった
重力を纏った拳は
脆くなった防御を容易く打ち砕いた
ドゴォォォン!!
「ホロウ!!」
ホロウの身体が吹き飛ぶ
木々をなぎ倒し
地面を抉りながら遠くへ飛ばされていく
やがて
数キロ先の城壁へ激突した
鈍い轟音が響く
「…………!」
城壁には大きな亀裂が走っていた
ホロウは血を吐きながら
崩れた石壁の中に倒れ込む
腹部の損傷は深く
身体を動かすだけでも激痛が走った
それでも
「……まだ……だ……」
震える腕で地面を押す
「王を……守らねば……」
意識が遠のく
視界が霞む
だがホロウは
歯を食いしばって立ち上がった
一方
シーケンス王は
ホロウが稼いだ時間を無駄にすることなく
城壁へ向かって加速を続けていた
【SPEED HALVED】
速度半減の状態ではある
しかし既にギア4
そしてホロウの覚悟と
王としての誇りが
彼に退くことを許さなかった
「あいつ戻ってくるぞ!フルファイル!」
「技を使ってあいつの加速をリセットしろ!」
「言われんでも分かっとる!」
「賭け事ギャンブルズ!」
しかし
不発
王は能力発動時の闘気の波を読み取り
即座に範囲外へ回避していた
技の再発動には時間を要する
「外した……」
「速度半減してるんだよな!?速すぎんだろ!」
王は森を全速力で駆け巡る
その速度は
人の常識を遥かに凌駕していた
やがて能力が完成する
ステラ王国国王
シーケンス・バーンズ
その真価が今
「新世代の若造共」
「無事で済むと思うな」
ギア5
もはや王は止められない
瞬く間にフルファイルと那由多の身体へ
無数の傷が刻まれていく
「耄碌したジジイが!その座から消してやるよ!」
「何とかして賭け事ギャンブルズを当てなあかん……!」
辛うじて目で追うことはできる
しかし反応が追いつかない
「深追いしてこん理由は 僕の能力を恐れとるからや」
「せやけど……」
増える出血と傷跡
判断は一瞬でなければならない
「那由多 次を外したら逃げるで」
「あ!?フィクサーは……」
「諦める 命には変えられへん」
「チッ……なら次決めればいいんだな」
「何か方法があるんか?」
「複雑だがリズムは掴んだ」
那由多は王の動きを睨みつける
「私に合わせろ フルファイル 合図は私が重力を出した時だ」
「……分かった」
フルファイルは頷いた
「君に賭けるわ」
最大出力の重力
ゆっくりと広げるイメージ
闘気の波を感知させない
やるなら一気に
風切り音が絶え間なく続く中
「今だ!」
「賭け事ギャンブルズ!」
重力が一瞬で辺りを覆う
しかし
捕まえたのは
ホロウだった
「なんで君が!?」
血に染まった身体
まともに立つことすらできないはずの男が
そこにいた
城壁へ叩きつけられた後
ホロウは残された力を振り絞り
ワープポイントを使って戦場へ戻っていたのだ
その腹部からは今も血が流れている
呼吸は荒く
片膝が今にも崩れそうだった
それでも
王の前に立つことだけは
決して諦めなかった
「この国の王を……」
ホロウは血を吐きながら叫ぶ
「目に焼き付けろ 逆賊共!!」
「俺の負けだ!!」
「ゲームを終了させろ!!」
賭け事ギャンブルズに応じない場合
強制的に敗北となる
ホロウは相手に考える時間を与えないため
自ら負けを宣言した
上空のパネルに直接文字が映し出される
【SPEED HALVED】
速度半減
だが
もはや意味を持たなかった
後方へワープポイントで転送された王が
既に二人のすぐ傍まで迫っていたからだ
「逃げるぞ フルファイル!」
「逃がすわけなかろう!」
「クソッ!」
王の猛攻が始まろうとした
その瞬間
フードを被った何者かが
二人の目の前に現れた
「助けてあげましょうかぁ?」
まるで嘲笑うかのように
語尾を伸ばした奇妙な声
「貴方は確か……」
「君達は合格ですぅ」
「それって……」
「まずはYESかNoか」
「YESだ」
フードの男は
大きく両手を広げた
「ようこそ!」
「夢の世界へ〜!」
次の瞬間
王は異空間へと飛ばされていた
そこは形容しがたい世界だった
灰白色の景色
僅かに歪む空間
色とりどりの綿が宙を漂い
液体もない地面には
幾重もの波紋が広がっている
「なんだこの世界は……」
再び王を襲う異質な空間
だが一向に攻撃は来ない
王は加速を止めなかった
その時
「!?」
瞬き一つ
ただそれだけの間に
上空には巨大な隕石が迫っていた
「一体何が!?」
「ふふふ 夢は曖昧 少し覚えてて朧気」
隕石の上には
あのフードの男が立っていた
「貴様は誰だ!」
「それは内緒だぁ〜」
男は楽しそうに笑う
「悪いけど あの二人を失うわけにはいかないんだよね〜」
「フィクサーに欠員が出たからさぁ」
隕石が衝突する
大爆発
しかし砕け散った破片は
大小様々な笑う玉へと姿を変えた
それらはスーパーボールのように
辺りを跳ね回る
「常に人員不足なんだよ〜 アハハハ!」
余裕の表情
甲高い笑い声
大きな隙
王は跳ね回る玉を躱し
フードの男へ斬りかかった
ザシュッ!!
真っ二つになった男
しかし
その顔には不敵な笑みが浮かんでいた
身体が霧のように消えていく
「少し時間を稼がせてもらいますよ〜」
消えゆく霧が
嘲笑うようにそう残した
新世代の実力は未だ未知数
だが
「私はこの国の王」
王は剣を構え直す
「シーケンス・バーンズ」
「受けて立とう 新世代」
今すぐにでも倒れてしまいたい
しかし
王という肩書きが
地に手をつくことを許さない
長い一日の終着点は
もう目の前だった
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【ホトユリ・ヴィタ(16)】
好きなもの 美味いもの
嫌いなもの 渋いもの
特技 西瓜を秒で食べられる




