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補習室での逃げ場なき追撃(※ただし答えは、、)

全校生徒と二人の美少女に囲まれ、「どっちが一番大事なんだ!」と突きつけられた絶体絶命の神楽坂蓮。

全方位から殺気とプレッシャーが押し寄せる中、命からがら逃げ延びた先で待っていたさらなる波乱とは!

「さあ神楽坂くん誰が一番大事なのか、みんなの前で答えなさい」


「先輩! 私って言ってくれたら、今すぐここから二人で脱出します!」


「言え! 言え! 言え! どっちなんだ神楽坂ぁぁっ!!」


怒号、冷圧、熱圧。


旧校舎の狭い資材置き場は、俺一人を処刑するための裁判所と化していた。


左腕を掴む近衛零華の視線は絶対ゼロ度。


右腕を抱え込む九条ゆずの瞳はメラメラと燃える灼熱。


そして目の前にすし詰めになったクラスメートたちの顔は、嫉妬と好奇心でドロドロに煮煮え滾っていた。

(……詰んだ。完全に詰んだ。ここで『近衛』と言えば九条と男子勢に殺され、『九条』と言えば近衛と女子勢に社会的に抹殺される……!)


俺の脳内保身CPUが煙を吹き、限界突破のアラートを鳴らし続ける。


思考時間、わずか1秒。俺の保身ロジックが弾き出した解は——「全員まとめてパニックに陥れて煙に巻く」ことだった。


俺は突如、顔を驚愕に歪め、教室の天井付近を指差しながら大声で叫んだ。


「あ、危ないっ! 生徒指導の田中先生だ!!」


「「「なっ……!?」」」


一瞬、室内の空気が凍りついた。


すささっと廊下の向こうへ視線を切るクラスメートたち。だが、もちろんそこには誰もいない。


「……ハッタリか!? 騙されるな、先生なんて——」


「バカ野郎! 聞こえねぇのか、あの『足音』が!!」


俺は田中の言葉を強引に遮り、迫真の演技で青ざめて見せた。


「田中先生の靴音だ! 今この旧校舎の廊下を歩いてる! お前ら、こんな早朝から男女入り乱れて資材置き場に集まって大騒ぎしてるのがバレたらどうなる!?全員まとめて反省文10枚&校内清掃1ヶ月コースだぞ!! 巻き込まれたくない奴は今すぐ散れえぇっ!!」


「「「な,なんだってぇぇぇっ!?」」」


俺の放った『反省文』と『田中先生』という悪夢のワードに、クラスメートたちの顔色が一瞬で激変した。

「やばい! 田中先に見つかったら部活の大会出られなくなる!」


「逃げろ! 早く教室に戻るんだ!!」


「神楽坂の追及は後だ! 撤退ーーっ!!」


パニックに陥ったクラスメートたちが、蜘蛛の子を散らすようにドアへ殺到し、怒涛の勢いで廊下へと雪崩れ込んでいく。


集団心理とは恐ろしいものだ。誰一人として「本当に先生が来ているか」を確かめようとせず、全員が保身のために猛ダッシュで去っていった。


「ふっ……甘いな、烏合の衆め。俺の保身IQを舐めるなよ」


胸を撫で下ろし、不敵な笑みを浮かべた——その直後。


ガシッ!!


「あだっ!?」


後頭部に激痛が走った。


振り返ると、そこには両腕を組んでジト目で俺を見下ろす零華と、ぷくーっと頬を膨らませたゆずが立っていた。


「……神楽坂くん。田中先生の足音なんて、最初から聞こえていなかったわよね?」


「先輩! ひどいです! 私たちまで騙して煙に巻くなんて!」


「し、仕方ないだろ! ああでもしなきゃ俺が物理的にバラバラに分解されるところだったんだからな!」


俺は腕を振り払うと、ドアの隙間から滑り出た。

「とにかく! 朝のホームルームが始まる! 俺は教室へ戻るぞ!」


「あっ、先輩待ってください!」


「神楽坂くん! 放課後の補習は逃がさないわよ!」

二人の追撃の声を背中に受けながら、俺は嵐のように脱出したのだった。


そして、放課後。


朝の騒動の余波で、日中はクラスメートたちから遠巻きに激しい視線を送られ続けたが、俺は徹底して「体調不良のフリ」を決め込んで難を逃れた。


だが、本当の地獄は放課後に待っていた。


「……ふぅ。ここなら静かだな」


俺は指定された第一補習室のドアを開けた。


ゆずはテニス部の緊急ミーティングがあるとかで、放課後は部活へ向かったらしい。ひとまず九条ゆずという激流はやり過ごせた。


……問題は、もう一人の存在だ。


補習室の中央。整然と並べられた


デスクの最前列に、近衛零華が座っていた。


夕日が差し込む静かな室内。彼女は参考書を開いていたが、俺が入ってきた音を聞くと、ゆっくりとページを繰る手を止めた。


「遅かったわね、神楽坂くん。放課後になってから10分も遅刻よ」


「いや……廊下でクラスの奴らの警戒網を突破するのに時間がかかってだな……」


俺が恐る恐る指定された席に着くと、零華はスッと立ち上がり、俺のデスクの前まで歩いてきた。


トントン、と指先で俺の机を叩く。


「……で? 今度はどんな言い訳を用意してきたのかしら」


「言い訳って、何の事だよ」


「とぼけないで」


零華が身を乗り出してくる。


静かな補習室。放課後の校舎の喧騒が遠く聞こえる中、二人きりの空間で零華の綺麗な顔が至近距離まで迫る。


「今朝の……あの騒動よ。全員の前で『誰が一番大事か』って聞かれた時、あなた、田中先生のハッタリで逃げたわよね」


「そ、それは言っただろ、あの場を収めるための最善の保身で——」


「……本当に、保身だけ?」


零華の瞳が、切なげに揺れた。


夕日に照らされた彼女の横顔は、いつもの「氷のお嬢様」とは程遠い、今にも泣き出しそうな、それでいて必死に強がっている少女の顔だった。


「私……土曜日にあなたが言ったこと、ずっと気になっていたの。『大事な後輩』って言ったことも……私にだけ冷たい態度をとることも」

「近衛……?」


零華はぎゅっと自分の制服のスカートを握りしめると、真っ赤になった顔を俯かせ、小さな声で呟いた。

「……本当に、誰も大切じゃないの? ……私じゃ、ダメなのかしら」

「っ!?」

俺の脳内で、巨大な衝撃波が駆け抜けた。

(な、なんだその可愛すぎる質問は!? 『私じゃダメなのかしら』って……それ、ほぼ告白みたいなもんじゃないか!!)


保身脳内CPUが過熱でオーバーヒートを起こす。

零華の素直になれない「むっつり」な本音が、二人きりの補習室という密室で、ついに溢れ出していた。

彼女の真っ赤な耳と、上目遣いに俺を見つめる瞳。そこには、もう何の誤魔化しも効かない「本物の感情」が宿っていた。


「俺の大切な人はー!」

俺が喉を乾かせて声を絞り出そうとした、まさにその瞬間だった。


ガラッ!!


「先輩っ! ミーティング早く終わったので来ちゃいました〜〜っ!!」


補習室のドアが盛大に開き、汗をかいたゆずが満面の笑みで飛び込んできた。


「「…………」」


一瞬で静まり返る室内。


零華は弾かれたように跳び下がり、一瞬で顔を真っ赤から青ざめさせ、速攻で「氷の仮面」を装着した。


「く、九条さん……!? あなた、部活はどうしたの……っ!?」


「キャプテンが『今日は自主練!』って言ったのでダッシュしてきました! って、あれ? 近衛さん、なんでそんなに顔が赤くて、先輩と気まずそうなんですか〜?」


ゆずの勘の鋭い視線が、俺と零華の間を往復する。


「まさか……私がいない間に、ズルいことしようとしてました!?」


「ず、ズルいことなんてしていわよ! 私はただ、神楽坂くんに補習の指導を……っ!」


「嘘だ〜! 先輩の顔もすっごく赤いもん! 先輩,私というものがありながら近衛さんと二人きりで何しようとしてたんですか!?」


「俺は何も知らん! 何もしてない! 保身だ! 全ては不可抗力だ!!」


再び巻き起こる、補習室での第二ラウンド修羅場。

夕暮れ放課後の校舎に、俺の悲痛な叫び声が虚しく響き渡るのだった。

第11話をお読みいただきありがとうございました!

今回はクラスメートたちを「田中先生の足音ハッタリ」で煙に巻く蓮のIQ保身テクから始まり、放課後の補習室での近衛零華の甘すぎる直球アプローチ(「私じゃダメなのかしら」)、そして寸前での九条ゆずの乱入という怒涛の展開でお届けしました!

素直になれないむっつりなお嬢様・零華の可愛さが限界突破した今回、いかがでしたでしょうか!?

「零華の『私じゃダメなのかしら』が最高すぎる!」「ハッタリ脱出が蓮らしくて笑った!」「ゆずのナイス(?)タイミング乱入で修羅場が加速して最高!」と思っていただけましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク追加】で応援していただけると大変執筆の励みになります!

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