05 初発
結局クソデカムシとチキンのどっちを狩りに行くかで二人の間で言い争いが起きてしまった。なお今も続いているのだが…
「…なぁ、マイって本当に元貴族なの?」
「うーん…そう、ですね。私が生まれた時には既に母も失脚してましたけどね」
「だからってそんな簡単に正体を明かしていいものなのか?」
「過去の栄光に縋るなんてダサいです!なので未来を見据えて生きていきましょう!」
おぉ………なんだか…マイがそう言うとなんだか説得力が…
「…って言うのが母の口癖でしたね」
「ただの現実逃避でした」
「なっ!?現実逃避とは失礼な!!これでも私も貴族の端くれ。ハヤトなんてすぐにめためたに…」
「お前今さっき自分で失脚したって言ってたじゃないか」
「う、うるさい!私だって失脚したくてした訳じゃないんですよ!って母が…」
「お前は母が母がうるせえなああ!!?俺たちは今仲間なんだよ!わかるか!?なんでお前の母の話を聞かなきゃなんねーんだよ!!ほら、わかったらとっとと狩りに行くぞ」
そう言うと今さっきの喧騒がまるで嘘かのように2人が俺の方を見てくる
「…つまり、チキンを狩りに行くってことかな?」
「まさか!クソデカムシですよね?ハヤトさん」
うーん……難しいところだなぁ…俺たちまだ結成して一回もクエスト請け負ってないし…
そんなことを考えながら当たりをキョロキョロしていると、なにやら掲示板に面白そうな物が………
…なんか、ムシと肉どっちかを選んだら絶対どっちかが喚きだすんだよなぁ。もうこの道しかないよな…
「…まさか。スライムだよ」
「「なんでっ!?」」
「なんでってなんだよ」
「なんでってなんだよって何ですか!!何故クソデカムシじゃないんですか!?」
「そうだよ!なんでチキンじゃないの!?」
「うるせえ!!俺の意見も聞きやがれ!!まずな?お前らが言うチキンだとかクソデカムシなんかよりスライムの方が圧倒的に弱くて報酬も弾む。それにスライムなんてのは駆け出し冒険者の定番の敵だろ?」
「…でもスライムって美味しくないよ…?」
「そうですよ!スライムなんてやめましょう!」
「お前らってやつは………俺がいつ倒した敵を食べるなんて言ったんだ?別に俺はチキンやら何やらを倒すのは良いけど、その死骸を渡さないと報酬貰えないんだぞ?だから俺たちは食えないんだよ。わかる?それでも無償でもやりたい!ってんなら…」
「いいじゃん!スライムいいじゃん!ねっ!」
「ですよね!!!」
こいつらは食欲の化身か何かなのだろうか?
1度とっちめてやりたい気持ちしかないが、まだ2人の実力を知らない以上叱るにはまだ早いし、ここで俺が手を出して負けたらダサいなんてもんじゃないからな
「よし、そうと決まればスライム討伐にレッツゴーだ!さぁ着いてこい!2人とも!!!」
「「いえっさー!」」
なんて言ってギルドを出発したは良いものの、肝心なものを忘れていたことに気付く
「…そういえば俺まともな装備も持ってないんだった」
「…マイ?もうボクたちだけでスライム討伐しに行かない?」
なっ、なんてこと言いやがる…!?
「……そうですね!それじゃあ、私たち先に行ってるので!」
なんなんだよコイツら
今さっきまでチキンかムシかで言い争ってたくせに俺がまともに戦えないと知った途端これかよ
「くそめ!お前ら覚えてろよ!?でも俺が居ないとどうなるのかお前らには分からないだろうなぁ!!!俺がいないからまともに戦うことはできずに脳筋的な思考で押し進めるんだろ?例えば風で地面ごとスライムを吹き飛ばすとか!」
「…すっ、すすすすごい……私がやろうとしていたことを当てるなんて…!」
「こんなこと当てたくもなかったわちきしょう!!」
………あれっ!?結局2人だけで行っちゃったけど、これで良かったのかなぁ?
…いや、今ならまだ間に合うか?今から錬成魔法使って短剣でも作って持って行きますかね
…なんて冗談はさておき、地味に世間知らずな元貴族とよく分からんただの世間知らずがスライム相手に勝てる気がしないのだが…?
アイツらのあのテンションなんだから、どうせ楽観視して戦ってどうせスライムに取り込まれて服を溶かされ……て………?
「…ダメじゃん!!?おーーいお前らああああああああああああああ……ダメだ声が届かねえ…」
アイツらどんな手使ったらあんなところまで行けるんだよってレベルのスピードで移動してやがる。どんな脳筋野郎なんだうちの仲間は…
…しょうがない。こうなったら一旦落ち着いて…
「錬成魔法でもすっかなぁ…」




