第2章 冬の夜に ― プロポーズ ―
静かな冬の夜。
ストーブの音と、やさしい灯り。
ふたりの会話は、いつもと変わらないようでいて、少しだけ特別な夜へ。
夜のぽかぽか邸は、ストーブのやわらかな音と
カップの中で揺れるお茶の香りに包まれていた。
凪はすでに自室に戻り、静かに本を読んでいるらしい。
リビングの照明が柔らかく灯り、
静けさの中で「カチ……」というストーブの音だけが響いていた。
柊は少し迷ったあと、ぽつりと口を開く。
「……なぁ、環。」
「はい?」
環は寝具を整えながら顔を上げた。
「おまえ、結婚って考えたことあるか?」
「え? 結婚ですか?」
環は目を瞬かせ、少しだけ考えるように黙る。
やがて、ふわりと笑った。
「うーん……ないかもしれませんね。
もう柊と一緒に住んでますし、
なんかもう、結婚してるみたいだな〜って。」
柊は思わず吹き出す。
「……そういうことじゃなくてな。」
「え? 違うんですか?」
「違う。……まぁ、それも環らしいけどな。」
「え?」
「なんでもない。」
柊は笑いながら、ベッドサイドの灯りを少し落とした。
その笑みは、どこか照れくさくて、けれどやさしかった。
「柊は、結婚って考えてるんですか?」
「考えてるよ。
俺は環と結婚したいって思ってる。」
一瞬、静寂が落ちる。
外の風が窓をかすかに鳴らし、
ストーブの火が柔らかく揺れた。
「……環、俺と結婚してくれないか?」
「……柊……はい。よろしくお願いします。」
柊は環をそっと抱き寄せた。
「いい返事だ。ありがとう、環。」
「はい。私も、柊……ありがとうございます。」
2人の間に流れる沈黙は、
どこまでも穏やかで、温かかった。
柊の「結婚してくれ」という言葉は、
長い時間を共に過ごしたふたりだからこそ自然に出てきた言葉。
あたたかく、まっすぐで、静かな幸せがそこにありました。




