12話 国連報告と国内混乱
各国は1月中旬に首脳会議で話し合った事を国連に報告し、国連を通して1月末に世界へ向けて発信した事で、各国がそれぞれ自国の国民に向かって再度、詳細を報告し、まだ衛星が機能している事や航空機や船が使用できる間に、速やかに行動に移すよう働きかけていた。
すでにパンデミック状態である。そして日本のハイフリーワールドが終了した1月末付けで終了した。
2月に入ると、日本の駐留軍に関してはアジア圏の動向を探ることもあり、そのまま残ることになるが食料に関しては基本メルリアからの輸送をすることで合意を得ていた。
また基地外に出ることも禁止された。出た場合は強制送還をすることもにも合意を得ている。
これに関しては神崎雪華が対処するとメルリアにはある意味脅しを掛けていた。メルリア官邸の一件をが有るため条件をのむ以外に無かったというのが原因である。
それでも一部の科学者達は宇宙観測や地質学観側・気象観測を継続、帰国するも者もいれば残る者もいた、これはもう仕方ない。国際機関からの発表後3ヶ月が過ぎた4月に入るとついに、人工衛星が2つと宇宙ステーションが落ちた。
1月に華国の衛星が落ちている為、合わせて既に3つの衛星と重要な宇宙ステーションが落ちたことになる。この為各国間の連絡はかなり不便になったと言えよう。火山噴火の為、航空手段は使えず海底火山もあり船での航行も危険を伴うようになっていた。
また鉄道や道路においても地震の影響で制限を受け物流にも影響が出ている。更に各国の森には魔物が出ているとの情報が精霊によって知ることが出来ていると言う状況である。
恐らく他国も精霊を使える者はいる可能性は有るだろうが、高度な魔術師はいない現在、雪華や霊力持ち以外どれだけいるかは不明である。
そんな4月のある日、メルリア駐留軍の数名が基地外に出るという事態が起こった、当然取り締まり対象であるが、日本の警察と神崎雪華を甘く見ている軍人達は痛い目を見ることになる。
一応警察が基地周辺での警戒と巡回をしているため、基地から出た瞬間に職質に合う、それに従わなかった場合、目に見えない何かに身動きが取られなくなり空中に浮かんで藻掻いていた、そこに神崎雪華が現れたのだ。
「何、また抜け出そうとしてんの?」
「神崎さん、これは一体……」
「この間は貴方たちの目を盗んで抜け出して町まで来ていたのよ、別の軍人だけど、あぁ~1人はその時もいたようね」
「町まで……」
この騒ぎにメルリア軍の軍兵が出てきて銃口を向けた、止まれとか空中で浮いている仲間を見て何かを怒鳴っていた。それに対して雪華は軍の責任者をここに呼ぶようにと命じていた。
一般人が責任者と会えないと拒否をしてきた為、雪華は「じゃこの軍人達は一生空中で過ごすことになる」と脅した。すると一人が雪華の銃口を向け発砲をした。
これに驚いた警官が抗議の声を上げるが、銃弾は雪華の目の前でパタリと落ちた。この状況に皆が何が起きたのかと驚いていた。
「私にそんな武器通用しないわよ、メルリアで経験してるでしょ、知らないの?」
「……なにをした」
「そんな事は良いから責任者を呼びなさい、さもないと大統領との約束を破ったと世界に通達するわよ」
その言葉で仕方なく駐留軍の総司令官を呼び出した。暫くすると護衛とともに司令官がやってきた、背の高い恰幅のある男で威張り散らすようなタイプに雪華には見えていた。
「何だね、私を呼び出すとは……」
「あなたがここの司令官?」
「そうだが……」
そう言いながら部下からの言葉で空中に浮かぶ軍人三名を見て驚愕の表情をした。何が起こっているのかと。
「一週間前も町でメルリア兵を3名見たんですよ。内1人は上で藻掻いているけれど、約束違反の為強制的に基地に返還させたんですけど、今回もまた基地外に出たんで、前回はこちらの警察の目を盗んで抜け出したようだけど、今回は堂々といちゃもんもつけたようですね。これ大統領に報告しますね、あなたの監督不行き届きとして」
「なっ、何を言っている貴様、部下に何をした、一体何者だ!」
「私は神崎雪華、約束違反により縛り上げた所ですけど、何か文句でもあります?」
「神崎雪華、お前が……あの……」
この司令官もメルリア官邸の一件を一応TVを通じてみていた一人である。実際に神崎雪華を見て驚いていた。女性にしては背は高いが武術の長けているようには見えない華奢な女性に見えていた。
「……なるほど、約束違反ならば仕方が無いが、あの隊員を降ろして拘束を解いて貰えないだろうか、直ぐに基地内に戻す」
「……この3人の内あの1人は今回で2回目ですから厳重な処罰をお願いしたい所ですが、基地内は治外法権ですからお任せはします。ですが大統領にはこちらから直接報告します。一応言っておきますが、こちらの基地だけではありませんからね、こういう事、国内にあるメルリア軍基地に対しては同じ対応をしています、警察が巡回しても逃れるものはひとり残らず捉えて基地内に強制送還していますから、また酷い場合はメルリア官邸に直接送還していますのでお忘れ無きように」
「ちなみに、一体どうやって……基地は多い君ひとりでそんなことは出来ないだろう」
「あぁ~式神を使っているんですよ、普通の人には見えないでしょうし、対処は出来ないでしょ、別に命を奪おうって訳でもなく、今回のように拘束して基地に送り返し、罪の告白をしたら拘束は解ける様になっています、まぁ抵抗すれば打撲や怪我くらいはするでしょうけど」
雪華はそう言いながら指をパチンと一度鳴らすとゆっくり縛られている米兵三人は降りてきた、そしてもう一度バチンと鳴らすと拘束が解けた、瞬間に殴りかかってきたメルリア兵一人を一発で返り討ちにしてしまった。それを見て司令官は驚いていた、体格に似合わず訓練を受けた隊員を一発で気絶させたその力に、メルリア官邸の一件をはまぐれでも何でも無いのだと改めて思ったのだ。
この後大統領直々に厳重注意を受けた上、基地内から誰一人として出さぬよう指示が下った。既に何人も官邸に強制送還を喰らっているとの事。また各基地への強制送還も大統領には神崎雪華から直接報告がされている事を聞いた。
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メルリア軍のいざこざもある中、5月に入ると神崎領においては避難所生活は続いているものの、大きな混乱はなく生活が出来ていた、強制的に神崎領となった隣県も元々そこで行政を行っていたものを中心に行政関連を管理させ、雪華は神崎領に居ながらにして全体を把握しており、不正、もしくは横領等が関知された場合は直ぐに飛んで処理を行うという強行指導を行っているため、元の政治家達も戦々恐々である。
つまり警察が見つけられない証拠を、雪華が指摘し警察に指示をし捜査させると、あっさり証拠が出てくるという始末である、ついでに嘘を付いても雪華の魔法であっさり暴かれてしまうため、嘘のつきようがない状況であった。
反対に首都圏においては混乱から暴動に至ることもあった、食糧事情が乏しいこともあるが、政治家達が有利になるよう食料分配されているのではという疑惑が飛び出るなど、警察の出動が多くなり混乱極まりない状況であった。
衛星が落ちたことで詳しい情報が入ってこない事から、遙か昔のような大手新聞会社だけではなく小さな新聞会社も情報集めに奔走し色んな新聞が出回るようになり、報道記者の情報合戦も活発になるなど、落ち着いている神崎領と比べる者まで出てくる始末である。
ただ、神崎領も特別に何かをしているわけではない、ただ領主である神崎雪華が領内で目を光らせている為、悪さが出来ないと言うだけである。電力不足であっても術者であれば、式神をつかって情報を得ることも出来る為である。
6月に入って首都圏での暴動はエスカレートする。一番の問題は食糧を含めたライフラインであった。
またマスコミによって一部政治家が食料の横流しをしていると言う噂まで流れていた事も、政治家に対する不満も爆発しており、危険な状態が続いているため、神崎総帥には領内へ戻るように通達がいっていた。
そんな矢先に、総理を狙った銃撃があり、その巻き添えにより総帥は銃撃を受け、病院に搬送される事態が起こった。此を重く見た政府筋は警察に対して徹底的に犯人を見つけだす事と治安維持に勤めるよう通達する。幸い総理は銃撃は受けたものの軽いけがで済んでいた。
それを少し遠く離れた神崎領で察知した雪華は、険しい顔をして昼食中に立ち上がった。
周りにいた家族や使用人達が驚いていた。
「どうした雪華」
「総帥が……撃たれた」
「何っ!何で?」
「……わからない、けど首都圏が危険な状態だから戻るようにと伝えていたはずなのに」
祖父が聞き父が驚いて理由を聞くが、雪華は月宮に御陵屋敷と家族の事を任せ、小花衣と篠崎を連れて、神崎家に向かった。
県側の統治を神崎雅彰に任せていた為だ。
「雪華様、どうなされました?」
「雅彰叔父さんと成彰兄さんはいますか?」
「はい、雅彰様は執務室で、成彰様は視察に出かけておいでです」
「直ぐに成彰兄さんを呼び戻して、緊急だからと視察は切り上げてもらって直ぐ戻るようにと」
「あの、何故そのような」
「総帥の命が危ないからよ」
雪華はそれだけ言うと屋敷に入って行った、その言葉を受け雅彰の執事で家令代行は他の使用人に命じ執務室に案内させ、別の使用人に対して成彰を呼びに行った。
「どういうことですか? 父の命が危ない?」
「電波が生きているならテレビをつけてみてください、ニュースが流れていればの話ですが、恐らく総理の巻き添えを喰った可能性が有ります」
「総理の……」
そう言いながら雅彰の執事がテレビをつけると、速報ニュースがやっていた。総理がデモ集団より銃撃されたと、現場のニュース映像が流れていた。
「成彰兄さんが戻り次第、直ぐに首都圏に行き総帥を迎えに行きますので準備をしてください」
この時代、エネルギー関連にもかなりの影響が出ており原油も入ってこない、石油製品が不足している中、最低限の車両を動かす程度の備蓄をしていた事で何とか移動は出来るが、ガソリン代の高騰で既に車両移動を諦めている者達は多い、昔のように徒歩が中心で乗馬が出来る者は馬を使っての移動や馬車の復活も出ている状況だった。
「雪華様、車での移動で往復は可能なのですか?」
「あぁ~満タンにはしていませんか?」
「一応、この間入荷した時に満タンにしておきましたが……」
「そうね、今回の移動が車で最後になると思った方が良いかな」
「……最後……」
「ガソリンの高騰もあるし馬車を中心にした方がいいと思うけれど……」
「……馬車ですか」
「車に慣れていると、簡単に変えられないですね」
雪華達がそんな話をしていた時、急いできたせいか息を切らした成彰が帰宅した。
「……一体何が合ったのですか?」
「帰ったか、直ぐに首都圏に行くぞ、総帥が撃たれた」
「撃たれた? 何で?」
「総理を庇ったんです」
「なっ……」
成彰に説明している時、雅彰の執事が出発準備が整ったと知らせに来た、執事を含めて5人は首都圏に向かって出発した。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。