10話 榊島の魔物討伐とゲーマー達
11月中旬、首都の結界を張り水魔法のタンクを造って領内に戻ってきた雪華は11月下旬の政府による電波ジャックの緊急放送で総理の最後の一言に怒り、電話で抗議をしたが却下された。
その後再び身分証明書(ID)カード作りに専念した、直ぐに必要になるため、皆が集まる居間で遣っていたら末の弟から声がかけられた。
「それより姉貴、その身分証明書(ID)カードの原料って何?」
「あぁ~~これ榊島で魔物倒してドロップした」
「はっ? 榊島って姉貴のあれか?」
「そう、あそこ噴火してるけど、鉱石やら金属など資金源になる物が結構転がっているのよ。それを探しに行ったら、いたのよ魔物が」
「魔物!!?」
「そう魔物、スライムとビッグベアーだったっけ」
「何それ、ゲームの魔物じゃん」
「そうなのよね、まぁスライムは以前から時々見たことがあって、その都度狩ってきて……うふっ」
「………何、その怪しい笑い」
「スライムのスキル奪っちゃったの」
「はっ?」
とんでもない事をこともなげに言った姉に、何を言ってるんだと思った夏椰は取りあえず続きを聞くことにした。
「でぇ、ビッグベアーは?」
「当然狩ったわよ、そしたらアイテム魔石落としていったわ」
「いや、姉貴ここは現実だよ、何でゲームのモンスターが出てアイテムゲットなんて出来るんだよ、しかも何スライムのスキル奪った???可笑しいだろう!!」
「だって出来ちゃったんだもん、それにそいつら全部殺した後に、ラスボスみたいなキメラが出てきてさ、人間居ないし噴火してる島だし、手加減いらないなと思って覚えた魔法ぶっ放して倒しちゃったの、そのとき大きな魔石ゴロゴロ落としてくれたので全部持って帰ってきて身分証明書(ID)カードの原料にしたのよ」
とんでもない話を聞いた面々はどっから何をつっこんで良いかも変わらなかった、突っ込みどころ満載でもある。
「それでゲームの冒険者カードみたいな感じになってたのか、血を一滴落とせってのは」
「そう、そのおかげで領民簿の名前とそのカードで生死が判明できるって仕組みだね、でも最初は実験のつもりで造ったんだけど、何故か成功しちゃったのよね、ほんと不思議だわ」
不思議だわで納得する方も、する方だろうと末弟は突っ込んでいたら、今度は雪華が魔石が足りなくなったから調達に行ってくるっと言い出した。そのため末弟は自分も行きたいと言い出した。
「ダメよ、危ないし」
「この目で見てみたいんだよ、本当に魔物がいるのか!」
暫く雪華は唸りながら悩んでいたら、末弟はだめ押しのように言ってきた。
「姉貴が危ないっていうだったら、動画みたいに見たい!」
「見たいの?」
「あぁ、実際の姉貴の戦いを見てみたいんだ。ゲーム内では何度か見たことはあるしパーティ組んだ事もあるけど、リアルじゃどうなのかってのをな」
「私も見てみたいわ」
と、珍しく直ぐ下の妹である秋枝も同じようにみたいと言った。
「秋枝も見たいなんて、どういう事です? あなたはゲームなんてしていた?」
「部活の合間にしていたのよ、雪姉ぇと夏椰がやっているゲーム」
「えっ……本当ですか?」
「うん!エルフ族でパーティ名「森のフリーダム」に所属しているわ、レベル500よ」
「………あのパーティーか………」
「森のフリーダム」森を中心に活動している5人組で、割と強いギルドパーティーである。それを聞いた雪華は溜息と共にわかったと言いながら、雪華は小花衣にスクリーンの準備をさせる。
雪華が小さなインカムの付いたカメラを胸に付けて、ちゃんと起動するかの確認を行った後、屋敷を出て島に向かってテレポートした。
瞬間移動をして島にきていた。ついたとたんに襲われた。ビッグベアー4体である。
「あらぁ~いきなりですか、ふぅ~~んレベル3って所か」
雪華は言いながら右手に一筋の剣をだした、それに魔力を込めて攻め込んでいく、と同時に左手から火炎魔法を放って2体同時に消し炭にした。残り2体の内1体は剣で滅多差しで殺され、もう1体は急所を一発で刺され即死した、全ての魔物はその場で消えた。
「なるほど、魔素還元になるんだ……しかしレベル3だとあまり対したアイテム落とさないよね普通、しかもこっち現実だし……とはいえ何で魔素還元なんてあるのかな?」
などとぶつぶつ言いながら、ついでに資金源の鉱石や金属なども拾っては消えるといった現象が起こった、拾った物が突然消える、という現象をカメラの向こうの人間が見て唖然としていた。
その後も魔物は次から次と出てくる、スライムの大群が出てきてビッグスライムになったのを見て、悲鳴を上げたのは当然海李と秋枝と夏椰と春樹である。
「なんでこのリアルな世界にビッグスライムがでるんだよ」
「というかあれをどうやって倒すんだ雪華は……」
「魔法以外には倒せないはずだけど……」
「姉貴スライムのスキル奪ったとか言ってたよな」
「大丈夫です、雪華様は炎の魔法も使えます」
「そうなんだ……って父さんってゲームしてたのか?」
「昔はな」
っと言った海李の言葉によく叱ったものだわっと祖母の楓が言う。そして再度映像を見ると、小花衣の言ったとおり、雪華は火炎魔法と雷魔法を同時使用してビッグスライムを一撃で倒した。これを見た夏椰が呟いた言葉に、春樹は驚いた。
「……リアルでもスキルマスター目指すのかよ……」
「えっ、スキルマスター? 雪華が?」
「あぁ、スキルマスターNo.2だよ……」
「天神将のパーティギルド所属で「無慈悲なる魔女」「破壊神」って言われてるわよねぇ……」
「おい、夏椰、秋枝、雪華があの天神将のメンバーなのか?」
「……兄貴って他のゲームやってたと思ったんだが、ハイフリーワールドもやってたのかよ」
「まだやり始めて1年くらいだったんだけど、他のプレイヤーから聞いたんだよ、絶対に天神将のメンバーを怒らせないようにと、詳しい話は聞いてないけど」
「あははは、なるほど………ハイフリーワールドの中でスキルマスターは15名いるのよ、内10名が天神将のメンバーで、天神将の10名は只のスキルマスターじゃないわ」
「それはどういう意味だ秋枝?」
「つまりだな、天神将のメンバー全員がスキルマスターであり限界突破者なんだよ、しかもGM権限も持っている化け物集団、しかも姉貴と「破壊神の知将」の二人は規格外レベル」
「限界突破者!!!」
「そう」
「ちょっと待てハイフリーワールドの限界値って確かLV1000だったよな。それを突破?」
「天神将のメンバー全員がLV1100以上だ。だが姉貴ともう一人の「破壊神の知将」の二人はLV1200以上なんだよ、でぇ規格外と言われてる」
「なっ、なんじゃそりゃ」
「ちなみに、俺も一応スキルマスターNo.15だぜ」
「何っ! お前もか?」
「そっ、姉貴に遅れてβ版から遊んでいたからな、LV880だ」
「880!!! 信じられねぇ」
「御陵屋敷の使用人もβ版から入っていたからな、月宮さんと小花衣さんはスキルマスターだよ」
「えっ、御陵屋敷の使用人も?」
そう聞いた春樹は近くにいる月宮さん達を見回した。それに彼らは答えた。
「はい、私月宮はスキルマスターNo.11でLV898です、そして小花衣はスキルマスターNo.12でLV890です」
「御陵屋敷の使用人は、雪華様がいらっしゃらない時はゲームに入って使い心地等を試すテストプレイヤーとしてずっとゲームをしていました」
「そ、そうなんですか……しかし俺でもLVは380程度だぞ」
「ほぉ~~1年なのに300越えとは凄いんじゃねぇ、外科医って忙しいだろうに……」
「休みの日はずっとログインのままだったしな、平日はオフラインでレベル上げくらいはしていた」
「部屋にこもって勉強でもしているのかと思っていたら、ゲームをしていたのかお前は」
数人のゲーマーの話を聞いていた海李は子供達に対して呆れたように言い放った、その返答に長男春樹は「息抜きだ」と言ってごまかしていた。
その子供3人と御陵屋敷の使用人が話している間に島にいる雪華はと言うと、ビックベアー10体をあっという間に瞬殺していた。そして有る程度の材料や資金源が集まったから帰ると言って、そのまま言えにテレポートした。
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戻ってきた雪華と一緒に夕食を食べながら、魔物の話やゲームでの話に興じた、
「お前が無慈悲なる魔女……とは」
「何ですか? 何か不穏な言葉を聞いたような気がしたんですけど……」
兄春樹の言葉に反応して、雪華は剣呑な威圧と悪意を感じる冷気を発していた。
「あぁ~すまん、間違えた、限界突破者だとは知らなかった」
「……春兄ぃもハイワールドしてたんですね」
「まぁ~時間がある時はな、オフラインでもしていた」
「そう、どこかのパーティにでも入っていたんですか?」
「まぁ一応、暁の刃っていう所に所属している」
「暁の刃……? あぁ~マキオさんの所か」
「リーダーを知っているのか?」
「マキオさんもスキルマスターでしょ、確かNo.13」
「あぁ、そうだ」
「それにしてもビッグスライムとは……何なんだ? 何でこのリアルでそんな魔物がでる?」
聞いてきたのは父親の海李である、雪華は父がゲームをしていたことを知らなかったから、かなり驚いた。
「父さんがゲームをしていたとは初耳なんですけど……」
「私だって子供の頃はある、オンラインゲームくらいはするさ」
「へぇ~以外」
「まぁ、よくお爺ちゃんとお婆ちゃんには怒られてたけどな」
「そうねぇよく叱ったわよ、学校の宿題をそっちのけでした日があってね、それ以来、宿題と予習・復習が終わらない限りゲームしよう禁止令をだしましたからね」
と笑って言った祖母の言葉に孫達は驚いていた、その中でも雪華だけが祖母の顔を見いて「目は笑ってない」と認識していた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。