第49話 蒼き清浄の世界 4
「私の使い魔をいじめるな」
首がしゃべった。
そして、首の口から、べろりと舌が伸び、佐々木の持っている拳銃に巻き付いた。
「うわ」
僕は、佐々木が取り落した拳銃を、慌てて拾った。
「逃げなさい。すぐに」
悪魔が言った。
僕は、その言葉を聞いて、雅の手を取った。
そして、走り出す。
透子先輩を置き去りにして。
悔しかった。
涙が止まらない。
だけど。
今は雅を守る。
走る。
マンションの駐車場の陰に一旦隠れて、息を整える。
雅は怯えている。
気がつくと、手に拳銃。
たしか、ワルサーPPK。
第二次大戦のころから使われている、歴史のある拳銃だ。
とりあえず、安全装置をかける。
男のころは、こういうものが大好きだった。
本物に触ったことはなかったけど。
ずしりと重い。
だけど、今は、この重さが勇気になる。
僕はそっと背後を確認した。
追いかけてはこない。
だが、このままここにいていいとは思えない。
うん。まずは帰ろう。
「帰るよ。家に」
「うん」
雅がうなずく。
僕たちは、遠回りをして、ゆっくりと家に向かった。
案の定、というか、家の前には怪しい男の二人組。
多分、警察。
僕らは、何の理由で手配されているのだろう。
テロリストの関係者なのか。
ただ、真っ当な理由ではないだろう。
と、いうか警察の人たち、おそらくは真っ当ではない。
でないと。
透子先輩を躊躇なく撃つなんて、できるはずがない。
天使。
あいつの仕業か。
あいつが操っているんだ。
おそらく。
「さて、どうしようか」
僕が昔住んでいたアパートは、すでに他人の部屋だ。
「一度、うちへ行こう」
雅の言葉に、僕はうなずいた。
歩くと、ちょっと距離はあるけど。
僕らは再び、歩き出した。




