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5. 侍女の呟き

皆様、初めまして。

バルシア帝国の皇家にお仕えしています、しがない一介の侍女でございます。


恐れ多くも、先月より、バルシア帝国第一皇女殿下様のお世話係を任命されました。1歳を迎えた王女殿下様は、既に皇妃殿下様のお美しさを受け継がれたようで、美しい銀髪にサファイアにも勝る宝石のような瞳がまるで天使…いえ、女神の化身です。


皇女様のお世話係に任命されてから毎日が幸せです。なぜかって?あなた方は美味しい酸素を吸う時、幸せになれませんか?つまりはそういうことです。



「皇女殿下。本日はこの後第一皇子殿下がいらっしゃいます。それまではゆっくりお休み下さい。」


『んぅー』



まるで私の言葉に返事するかのように、人魚の歌声よりも美しいお声を出された。くっ、なんと尊いのでしょうか…っ!


しかし皇妃殿下がご心配されていると耳に挟んだ噂があります。この歳にして大人しすぎる様子や、時たま私たちの言っていることを理解しているような態度に、もしかしたら皇女殿下は【持っている人】ではないかと。


【持っている人】というのは、いわゆる前世の記憶を持っている方達のことを指します。しかしその証拠となる印が現れるのは齢7の時。まだまだ先ですね…。


実はもう1つ気になったことがあります。それは、昨日より皇女様はきょろきょろと頭上や変な方向を見て反応しているのですが、気のせいでしょうか?


…はっ、も、もしや幼子にしか見えない"もの"が……!!


い、いえ落ち着くのよ。そう、きっと虫でも飛んでいたのでしょう。ええ。きっとそうです。って、まさに今も右側をきょろきょろ見られているのですが、虫と言うか虫が見えません……私もしかして老眼でしょうか?


ああ、お願いします皇女殿下。どうかこれ以上、老眼の私に見えない虫に反応しないでいただけますか。



『ぅーあ!あー』



ああ、会話をしている。なんということでしょう。

皇女殿下、そちらは壁です。お願いします、どうか虫であると仰ってください。全力で潰しにかかりますので。



__コンコン



「ひっ…」


「失礼するよ。おはようルティー!」



いいのか悪いのかばっちりとしたタイミングに来られた皇子殿下方。そそくさに壁際に控えて頭を下げました。


心臓が飛び出そうに驚きましたが、皇子殿下でよかったです。情けない声で皇女殿下のお耳を汚してしまいました。申し訳ございません。




「今日もかわいいね、ルティー!おはよう、よくねむれた?」


「ほっぺたが少し赤いね。ぬくぬくして眠れてたみたいで良かったよ。冷えないように毛布ごと抱っこしちゃうね。」



御三方の尊い光景に癒された私の脳内から、虫けらの存在は完全に吹き飛びました。

この光景がなんとも癒されます。美しい天使と女神の化身が戯れている。ここを天国と呼ばずなんと呼びましょう。



「アンナだよね。毎日ルティーを見てくれてありがとう。今日のルティーの服のセンスも素敵だね」


「!…い、いえそんな。美しき皇女殿下にお仕えすることができて、このアンナ、これ以上なき幸せでございます。」


「ふふ、よかった。実はルティーが2歳になる頃に専属侍女を決めようと父上達と話しているんだ。そして、僕は君を推薦したいと思っている。」



…………殿下、今なんと?



「勿論強制じゃないから安心して欲しい。ただ、君だったら僕も母上も安心する。よかったら考えてくれると嬉しいな。」



そう仰って、殿下は皇女殿下達のもとへ戻った。

暫く固まった私の脳内にて、"専属侍女"という言葉が永遠と繰り返された。





アンナ・バルタ


バルシア帝国の第一皇女、ルティシア・フィネ・イルネールの専属侍女として、その生涯を尽くして仕えることとなる、赤毛の女性の名である。








**********





_______よーし!じゃぁ〜今からかくれんぼをするよぉ!!僕が鬼で〜皇女様がかくれてねぇ〜!!




月も真上へ登った時刻。静まり返った皇宮で、ルークの声が響きました。しかし彼の声を聞こえるのは私しかいません。


てっきり日中に遊ぶのかと思いきや、かくれんぼのやり方を教わるや否や私はすぐさまルークを止めた。

なぜかって?赤ん坊の私がかくれんぼをできないからと、ランダムの場所へ私をワープさせて、ルークが探しに行くという方法を考えたと伝えられました。


絶っっっっ対にいけません!


第一、日中は基本私から目を離さない侍女もといアンナさんが傍にいます。突然私がワープして目の前からいなくなれば、間違いなく大騒動になりかねません。


第二、ワープ先に人がいれば、突然皇女が現れたとこれもまた大騒動になりかねません。


それを約1時間ほどルークに説明し、ようやく納得してくれました。しかしどうしても諦めきれないルークが夜中に遊びたい、と提案し、私はそれを飲まざるを得なかったです。押しに弱い、とはこういうことでしょうか。


しかしまあ、大騒動にならなければ問題ありません。……恐らく。




______ふふん大丈夫〜!!!僕、魔法得意だから!!ちゃちゃって、ワープさせちゃうよぉ〜!



『(本当に信じてますよ…?危ない場所は絶対にダメです。室内だけにしてください。人がいるところも避けてください。約束ですよ?)』




_______もうわかってるよ〜!じゃあいくねぇ!!




ルークの言葉に私は少し怖くて目を閉じました。「絶対見つけるから〜!!」との言葉を聞き、次に目を開けたらそこは壁一面本が並べられていました。






┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅


《登場人物おさらい》


●ルティシア・フィネ・イルネール(1歳)

▷▶バルシア帝国第一皇女。前世の記憶持ち。

銀髪に青い瞳。


●エドリック・ミラー・イルネール(6歳)

▷▶バルシア帝国第一皇子。金髪を青い紐で括り、前に流している。青い瞳。


●セヌア・アドレ・イルネール(4歳)

▷▶バルシア帝国第二皇子。肩まで切り揃えた金髪に青い瞳。


●ダイアナ・イルネール

▷▶バルシア帝国皇妃。銀髪を頭上でお団子にまとめている。金色の瞳。


●アスレイ・レヴェ・シュナー・イルネール

▷▶バルシア帝国現皇帝。金髪を後ろに流している。青い瞳。


●アンナ・バルタ

▷▶皇宮に仕える侍女。後にルティシアの専属侍女となる。赤毛のポニテに琥珀色の瞳。ソバカス特徴的。


●ルーク

▷▶正体不明の白い光玉。本人曰く300年は生きている。ルティシアに懐いており、ルークという名前を気に入っている。


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