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東の森8

 そしてそのままアリスは意識を失ってしまう。

 あの魔方陣は誰のものだったんだろう――。薄れゆく意識の中で、ふとその疑問だけが浮かんだ。



□□□□□



 目を覚まして最初に目に移ったのは、なんだかモサモサとした塊だった。

 ぼんやりとしながらそれに手を伸ばし、感触を確かめる。腕を少し動かすだけで激痛が走ったが、どうしてもこうしなければいけないような気がしてならなかった。

 緑色で、まるでマリモのようなモサモサの塊はどうやら細い糸のようなものでできていて、そっと撫でると案外ソフトな手触りだった。

 しばらく撫でていると、ガシャンという大きな物音がする。まだ膜がかかったような視界の中で、音のした方に視線をやると、ロイが茶器を落とした音だったらしい。

「………」

 ロイ、と呼びかけたつもりだったが、声が出ない。かすれたようにヒューヒューと喉が鳴るので、アリスは少し怖くなる。ねぇ、私の体どうなってるの? そう問いかけたくてもロイは慌ててどこかへ走り去ってしまったし、腕どころか体中が痛い。

「あぁ、ヘンリー様。こちらにいらしたのですね!」

 再びロイが慌ただしく入室してきて、撫でていたモサモサの塊を叩き起こす。どうやらマリモではなく人間の頭だったようだ。だとしたら失礼なことをしてしまった。

 アリスはお客様の前で仰向けに寝ている自分が恥ずかしくなり、せめてもと体を起こそうとする。しかし「動かないでください」という低く静かな声を聞いて再びベッドへと沈んだ。

 目の前のマリモ、もといヘンリーはその瞳までも深緑のような色をしていた。

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