第十一翔 〜心、解き放てば〜
最近色々忙しい!
悔しい!でも投稿しちゃう!
それではごゆっくりご覧下さい
「なんだ、そう言うことなら早く言ってくれれば良かったのに」
あれから、式町さんがスタジアムで起こった一連の出来事をしどろもどろに話してくれたようで、ファム達の誤解はすっかり解けたみたいだった。
『ようで』とか『みたい』とか推測を多用するのは、僕自身が20分くらい気絶していたからに他ならない。
「い、いえ実際私が原因ですし、謝らなきゃいけないのは私の方ですし…」
おずおずと縮こまる式町さん。
何かこのままだとまた謝りまくりそうだな…。
「永路さん、大丈夫ですか?」
少し気まずそうに亜季子ちゃんが話しかけて来た。
「うん、ちょっとふらつくけど何とか」
「そうですか、良かった…」
ホッと一安心した顔を浮かべる亜季子ちゃん。
…実はふらつくどころではなく、激しい頭痛とめまい、その他諸々の症状に見舞われていたのは内緒だ。
「よし、補給完了ッス。怪しまれたらいけないから、敢えて20%位までしかいれてないッスけど、問題ないッスよね?」
FGのエナジーコアから補給用ケーブルを引き抜きながら、鈴白が尋ねる。
…あれ?
「おい鈴白。お前今までドコにいた?」
さっき僕が処刑されていた時にはお前の姿がなかったぞ。
「…を…」
あ?
「手を出したら死刑だって、姉ちゃんに言われたから…」
…あ〜。そう言えばこの姉弟って鈴奈の方が格上なんだっけ。
まあ、それなら仕方ないわな…。
「す、すいません。気を遣わせてしまって」
また式町さんが頭を下げた。
まずいな。このままだとまた謝罪を連呼し兼ねない。
「式町さん。こういう時は謝るんじゃなくて?」
一瞬、僕の言葉に「ひぅっ」と反応した後、そうでしたと言わんばかりに首を振って。
「そ、その、ありがとうございました!」
一礼した後、僕を見る式町さん。
どうやらこれで良いか確認しているようだ。
「うん!」
グッと親指を立てて『上出来』の意を伝える。
すると、式町さんは今までにないくらい顔をほころばせた。
うおぅ……。普通に可愛いな。
「じゃ、じゃあ私はこれで失礼します」
帰還の旨を伝える式町さん。
彼女の事だから、『自分がこれ以上居ても迷惑がかかるだけかも』とか思ったのだろう。
別にそこまで気を遣わなくてもいいんだが。
「うん、気をつけてね」
「またいつでも遊びに来なよー」
おや、ファムが珍しく友好的だ。
「だって久し振りに雀羽いじれたし」
ああ、そう言うこと。
「お帰りならカタパルトを起動させますね」
と亜季子ちゃん。
気が回るのは流石と言ったところかな。
「ズナ達も手伝うよ」
「シロも行くッス」
亜季子ちゃんに続いて阿久原姉弟も制御室に入る。
「あたしも行くかな〜」
ファムも制御室に入った。
「ありがとうございます…」
呟いた式町さんの方を見ると、彼女の目には涙が溜まっていた。
「ど、どうしたの?」
僕ら、何か悪いことしたっけ?
「わ、私、こんなに優しくされたこと無くて。う、嬉しくて。で、でも、泣いちゃ駄目ですよね」
必死に涙を流すまいと耐える式町さん。
…ああ。わかった。
この子は昔の―――
「泣いて良いよ」
「え?」
僕の言葉に一瞬きょとんとする式町さん。
「君の心が泣きたいって思ってるから涙は出るんだ。その心を抑える必要はどこにもない。そう感じる心は君しか持っていないんだから」
それは。
僕を引き取ってくれた叔父さんの言葉だった。
「う、うぅぅぅ…………」
我慢出来なくなったのか、僕にもたれかかって静かに、でも粛々と涙を流す式町さん。
僕は彼女が落ち着くまで優しく背中をさすり続けた。
叔父さんが僕にそうしてくれたように。
やがて。
涙が枯れたのか、式町さんは僕の体からそっと離れた。
「もう大丈夫かい?」
僕の言葉に少し、でも確かに頷くいた。
「はい。ありがとうございます…えっと」
「ああ、まだ名乗ってなかったっけ。僕は進道永路。競翔科の二年生。永路でいいよ」
「は、はい…!あ、じゃあ私より一つ上ですね。私、競翔科の一年生なんです」
「そうなのか?」
「はい。だから私も四季って呼んで下さい」
「ん、わかった。じゃ、改めてよろしくな、四季」
「はい…!こちらこそよろしくお願いします、永路さん!」
握手を交わす四季と僕。
と。
「え〜い〜じ〜?」
はうっ!
後ろからとんでもなく禍々しいプレッシャーが……!
「カタパルトの用意が出来たから呼びに来てみれば…。ま〜たあんたは高圧電流喰らいたいわけ?」
「い、いや違う!違うぞファム!これは決していかがわしい行為とかそんなんじゃなくて、その、そう!アレだアレ!」
「アレって何よ」
「アレはアレだよ。ほらあのアレにアレしてアレでアレがアレなアレだ!」
アレ?『アレ』ってこう書くんだっけ?
「アレアレアレアレうっさい!だんだんゲシュタルト崩壊してきたじゃないの!!」
「うわあ、ちょっと!ネジ投げてくんな!危ない危ない危ない!」
その辺にあったネジを手当たり次第に投げてくるファム。
「あ、四季ちゃん。聞いての通りカタパルトの用意が出来たから、いつでも発進していいわよ」
「は、はい。ありがとうございます」
「いいっていいって!困った時はお互い様!」
話しながら四季にウィンクする。
その間にも僕への攻撃の手は緩むことはなかったが。
「それでは、カササギの皆さん、お世話になりました!」
カタパルトから勢い良く飛び出す四季。
心なしか、夕日に映えるその顔は笑っているように見えた。
続
く
!
いかがだったでしょうか。
さて次回。
どうなるかは斬鉄犬にもわかりません。
乞うご期待ってことで。
ここまで読んでくださった皆様に心より御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
それでは駄犬めはこれにて失礼します。
斬
鉄
犬
。