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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ59 イケメンにはチートがセット



 ──グレイプニル、たしかに目の前の少年はそう叫んだ。


 北欧神話において、神殺しの神狼を縛り上げた最強の拘束具。

 さまざまな生物の特徴を代価とし、永劫的に失わせることで拘束力を高めた代物。


「……面倒なのが来たな!」


 俺のそんな予測が正しければ、ただ縛り上げるだけのスキルではない。

 それ以外のナニカ、もっと凶悪な能力を宿しているスキルだ。


「対価──すべての剣術スキルを消費」


「おいおい、マジかよ」


「“全身強化(フィジカルブースト)”」


 対価を告げた後、レイルの魔力がこれまでとはまったく異なる化け物みたいな量に膨れ上がった。


 そしてそれを、身体強化に費やし──俺の下へ急速に接近してくる。


「剣術を捨てるか……それであの動きに違和感を覚えたんだな。スキルがある動きがお前の剣術なんじゃない。剣術スキルが無い時こそ、お前の真の剣術が観られるのか」


「……なんで、そんなに余裕なのかな?」


「居るんだよ、世界には。お前なんてまだまだ足元にも及ばない、至高の剣士様がさ」


 ただし、この世界ではないけれど。

 実際『神速の太刀』だのと言って、知覚できない速度で刀を振るう奴もいたし。


 その際に学んだ直感、そして野生の勘。

 大まかに言えば第六感とも呼べる感覚を鋭敏化し、レイルの挙動を把握しているだけのことだ。


「ほら、俺からも行くぞ!」


「……遅いよ」


「仕方ないだろ、把握はしていても追いついてはいないんだからさ」


 浮かべていた武器を次々と手に取って振るうのだが、肉体的な強化が半端ないレイルには、一つとして通用しない。


 それどころか、速度による力も加わったため当たっただけでポキポキと武器が折れる。


「──“構造解析(スキャン)”」


 せっかくなのでレイルの剣も解析してみたところ、彼の剣はただ壊れないことにだけ特化した性能を誇っているらしい。


 素材もそれなりの代物を使い、一流の魔技師による付与が行われていた。


(しかしまあ、俺の武器ってどんな素材で作られているんだろう? 解析はしてもらっているけど、虚無属性を帯びただけの魔法で生成された代物って結果だろうし)


「──戦闘中に思案するなんて、ずいぶんと余裕なんだ……っ!」


「そりゃあ当然だろう。『思うこともできない空っぽの人形に、勝つための意志を抱くことはできない』……そう教わったからな」


 アイツに深い理由があってそんな発言をしたかどうかは分からないが、少なくとも俺には意味があるものだと理解した。


「魔力を払えばできるか──“構造複製(トレース)”」


「それは……ぼくの!」


「好い武器だな。お前の想念が強く宿って、使用者が最大限の力を振るえるように武器そのものが助力している」


 片手剣であるその武器を握るだけで、本当のレイルが振るう剣術が理解できる。

 少しムラがあるようだが、これまでの剣術とは明らかに異なる動きのようだ。


「まあ、こんな感じか……」


「くっ!」


「あとはこことここ、それにここをこうすれば良いと思うぞ。教わった剣術を我流で修正したんだと思うが、基盤となる剣術が女性用のヤツだったんだろうな。どれだけ修正しても、性別の差までは直せなかったわけだ」


「どう、して、そこまで!」


 剣聖や侍仕込みの劣化剣術とはいえ、見ていた分その経験がレイルを超えている。


 今は連続した驚きや戸惑いが彼の本領を発揮できないように雁字搦めになり、俺という雑魚から微ダメージを浴びているだけだ。


「知りたきゃ勝てよ。ほら、国賓の鎧女王もお前のことを見ているぞ。あっ、そこはもっと腰に力を入れて斜めに振れ」


「うぐっ……」


 少しずつ、俺に剣を弾かれる形で動きを修正されるレイル。


 痛みに顔を(しか)めているのか、それとも自身でも直された型が正しいのだと理解してしまうから苦しいのか……どうだろうな。


「ら、“光剣(ライトソード)”!」


「“闇剣(ダークソード)”」


 互いに剣に属性魔法を流し込んで、ぶつけあう──そして、ピタリと噛み合った属性の力が相殺される。


 これで理解しただろう、少なくとも攻撃魔法が通用しないことを。


「対価──ぼくの魔法スキル全部!」


 鈍った思考であれば、こんな結果を生む。

 俺も闇魔法でそれを手伝っていたし、そうなるのは仕方ないんだがな。


 そしてさらに強大となるレイルの力。

 魔力だけでなく身体能力も自ずと向上するのか、まだ“全身強化”を使わずともレイルの動きが加速する。


「獣の動きなんて、愚の骨頂だろ。ほら、ここをこうしろ!」


「ぐあっ!」


 力強く弾き飛ばすと、レイルは舞台の端まで吹き飛んでいく。

 キャーと上がる悲鳴、ブーと上がる非難。


 けどまあ、レイルはゴキゴキと骨を慣らしてすぐに立ち上がるんだが。


「対価──ぼくの武術スキル全部」


 さらに高めた力を使い、光速とも呼べる剣の舞を魅せる。


 その速度でフユツグとかが剣を振るえば確実に死ぬが、動きが単調なため予測して避ければそれで躱せた。


「そろそろ終わりかな? 条件も満たせたようだし、辱めるのは終わりにしよう」


 レイルの想いは剣が示してくれる。

 それを使って狂ったレイルを止める……ずいぶんとまあ、滑稽な話だよな。



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