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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【募集中】面倒事対処 その03【仲間】

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スレ29 依頼現場は墓場



 ルーラスト……転移石に登録できる場所には、いくつかの制限があった。


 一定量の魔力が存在し、尚且つ意思を持つ生命体がいる。

 そして、転移する対象がイメージしやすい場所であることだ。


 そのため俺はしばらくの間、そういった場所を巡り続けていた。


 瞬間移動ができるゲームでも、一度行った場所であればその座標へいつでも行けるようになるのだ。


 場所を登録するだけであれば、ちょっと視界に捉えてその光景を教わった記憶術で憶えればいいだけだからな。


「──まあ、やっぱり何も起きないってのが平穏で一番良いことだよな」


 街を巡り歩いたが……少なくとも俺が知れる表面上の部分では、何事もなく平和な日々が続いていた。


 活気溢れる声が耳に、美味しい食べ物を焼く匂いが鼻に、沢山の人々の姿が目に……スリをしてきた子供との衝突を体で。


 金品の類は全部“虚無庫(ストレージ)”か魔道具の中に仕舞ってあったので、子供が俺から奪ったのはただの袋なんだけどな。


 こっちの世界ではスリも日常だ。

 アイツらは、そうしたイベントにさまざまな対処をしていたらしいのだが……中でも一部の者が取った行動がアレだったので、説明は控えておく。


「チャットもただの日常を漏らすだけになってたし……平和っていいよな」


 ここからが重大な話なのだが、街巡りの間は一度も『面倒事対処シリーズ』が更新されることは無かった。


 ……まあ、イベントが起きないと送られてこないらしいからな。


 最初の方にそれが送られてきたのは──あくまで召喚者と言う俺に付加されたタグがそのイベントを強制していたからだ。


 すでにそのイベントを終わらせた俺には、主人公のようなイベントは起きないだろう。

 アレだ、フラグが成立していないからまだ発生しないと言うヤツだな。


 主人公が来た瞬間に即座に何か起きるぞ。

 いちおう平和ではあったが、そのフラグの種っぽいウワサは一応されていたからな。


 魔王が云々魔族がえっちらほっちら……セリさん、元気にしてるかな?


  ◆   □  ギルド  □   ◆


 あっ、そうそう。

 今の俺は冒険者ギルドに登録していた。


 ステータスの貧弱ぶりから最初の内はいろいろとあったが、それでもアイツら仕込みの体術でやり越し、どうにか小イベント? もこなしたぞ。


「……えっと、どれにするかな?」


 現在、俺はとある街のギルドで依頼を探している。

 有り余る程に金はあるが、何もしないというのも暇だしな。


 せっかくなので依頼をこなすことで、日々の充足感を補おうとしているんだが……。


「薬草は見分けがつくし、魔物を倒すのも魔力が持てばどうにかなる。だけどもう何十回もやってる。残っているのは……これか?」


 今までに同じことを何回もやっていたせいか、なんだか作業染みてきて嫌になってしまうのだ。


 ローテーションを組んで今までやってきたのだが、その依頼をこなしたという経験を体が学習しているので結局飽きてしまう。


 成長はできないのに飽きるとは……やっぱり俺の体は少し不便なんだよな。


 ああ、薬草に関してはアイツらの内の一人にいろいろと教わったので知っている。

 錬金術師的なことをしていたらしいので、他にもさまざまなことを教えてくれた。


 一部はスキルや職業有りきの方法だったため、教わったこと全部ができるわけじゃないけどな。


「……人気が無いのか? まあ、生息する魔物からなんとなく分かるけど」


 その中で見つけた一枚の依頼、今までにやることもなくスルーしていた依頼を確認し、俺は受注することにした。


 ……いや、未知なる経験もまた、俺の知識となってくれる。

 こうした積み重ねこそが、成長できない俺にとっては楽しいんだろうな。


  ◆   □  移 動  □   ◆


 嗅覚をシャットアウトしていなければ、即座に胃の中身が出ていたかもしれないな。


 今居る場所には、それだけの力がある。


「とりあえず──“虚無限弾(ゼロバレッド)()追尾(チェイス)”」


 無限の数を誇る魔力の塊が、俺の下から離れて飛んでいく。

 対象は予め察知した──この場所の生存するもの全て。


 それら目掛けて、一斉に弾丸が放たれた。


「もう少し魔力を広げて……うわぁ、ここってどんだけ広いのさ」


 俺が居るのは、街の地下に広がる巨大な墓場である。


 なぜ誕生したかは分からないが、それが外に出るのを防ぐために生まれたのがこの街であるらしい。


 今までに訪れた街では、霊体にいろいろと思うところがあったので墓場に関する依頼を受けて来なかったが……いずれ襲い掛かって来た時のためにも、一度は経験しておこうと言うわけで受注したのだ。


 しかし、この場所はとても広大である。

 誕生と言う単語から分かると思うが、ここは迷宮として扱われていた。


 膨大な年月がこの場所を変質させ、今では巨大な地下迷宮となっているそうだ……最初は一層しか無かったらしい。


「死体の匂いってのは、どうにもなれないものだな。腐臭に耐えられない」


 俺は魔力で膜を作って防いでいるが、辺り一面からそうした匂いが放たれているので、冒険者からはあまり好まれていない迷宮だ。


 一定期間に一度、間引くために一気に放火や浄化をしているらしいが……その依頼時は風で匂いを飛ばす係が必ずいるらしいぞ。


 俺も風属性の何かが使えたらなぁ。

 魔道具ならいちおう所持しているけど、程良い風が出せないので使えないんだよ。


「うーん、この辺りの魔物は倒せたかな? なら、次の場所に行くとしようか」


 追尾が機能してくれるのは、あくまで魔力が広がる範囲内だけである。


 なのでいったん作業が終了したら、俺自身が移動して魔力が広がる範囲を変更しないといけないんだよ。


 この迷宮の攻略の模様は、アイツらへプレゼントしてやろう。

 ふっふっふ……。



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