第二十三話
前回凄く中途半端なところで区切ってしまい、ラストまであともう少しだったので、前回分とラストを繋げて再度投稿しました。ご了承ください。
「今日は貴方に私の想いを伝えよう、そう覚悟を決めて来たので、貴方を探していたのですが、またしても貴方は見つからなくて…。貴方は隠れるのが本当にお上手だ。」
フィアナが見つからず、焦りと不安の渦に飲み込まれたときのことを思い出して、気分が低迷するのをグラズは感じ、自分から立ち込める陰鬱な空気を払拭しようとおちゃらけてみる。
「っ…えっ?」
息を詰め、そして絞り出すかのようなカスれた小さな驚きの声がフィアナからあがり、グラズはしばらく正面に向けていた顔をフィアナに向けた。
フィアナは、予想通り驚きの表情を浮かべていた。
鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情でも、なお愛らしい。
大きく見開かれた目は、よく見ればゆらゆら揺れているように見える。
グラズは、その目に吸い込まれたかのようにしばらくフィアナに見入っていた。
意図せず見つめ合う形になっていた2人だったが、しばらくしてようやくグラズが我に帰り、さりげなく視線を外したことでそれは途切れた。
グラズは考えていた。
フィアナが何に驚いているのかを。
そこでふと思い当たる節を見つける。
「もしかして、どこかで私が貴方を無視したかのような場面があっただろうか?」
「っ、いえ、そんな…。」
フィアナの反応からするに図星のようであった。
グラズとしてはもはや苦笑を禁じ得ないところではあったが、弁明はしっかりとさせてもらうことにする。
「実は目が悪くてあまり周囲が見えていないのです。」
「…目が、」
フィアナがうわ言のようにぽつりとこぼす。
「そうでしたか。目が悪くていらっしゃったのですね。知りませんでした。」
「えぇ、信じていただけないかも知れませんが…、」
「いえ、疑ってなどいません。」
あまりにしっかりとした口調に、驚いてフィアナの顔を見ると、意思の強そうなキラキラとした瞳とかち合った。
あまりの綺麗さに見惚れていると、すぐにフィアナの相形が崩れ、ふにゃりとした笑みが浮かぶ。
「笑った…。」
思わずつぶやき、グラズも自然と微笑む。
「えっ?」
「貴方の笑顔を初めて見た。やはり可愛いな。」
「っ」
フィアナの頬がさっと朱に染まる。
「泣いたり笑ったり、驚いたり赤くなったり、忙しい方だ。」
「グラ…、マルディーニ様の所為ですわ。」
今度はすねてみせる、そんなフィアナとの他愛もないやり取りに、グラズは胸の内にあたたかいもの広がっていくのを感じた。
「そうか、それはすまない。それと、私のことはグラズで構わない。そう呼んでほしい。」
「っ、はい。」
「…それで、」
とぼけた響きの問うような呟きにフィアナは小首を傾げる。
「他に誤解していることは…?」
「っ」
改めてそう言われると途端に恥ずかしくなる。
「いいえ。もう大丈夫ですわ。」
フィアナがはにかんで答える。
グラズはそんなフィアナを愛らしく想いながらも、努めて表情を引き締めた。
「そうか。ならば改めて聞いてくれ。」
グラズの有無を言わさない物言いにキョトンとしてしまったフィアナであったが、なんとなくグラズの改まった感じを察して、緊張を覚えながらも居住まいを正す。
フィアナが聞く姿勢になったのを見とりグラズが口を開く。
「貴方が好きだ。」
真剣な目に見つめられて、鼓動が跳ねるのを感じる。
「っ、私も。私も好きです…。」
「貴方を俺のものにしたい。」
グラズの明け透けな物言いにフィアナの目が揺れる。
「ずっと側にいてくれぬか。」
その瞬間、全ての不安が払拭されたフィアナの目からキラキラとした滴が零れた。
涙が次から次へと溢れ出し、言葉にならないフィアナ。
そんなフィアナを優しい眼差しで宥め、指で涙を拭う。
「返事は?」
漸く落ち着いたフィアナに問いかけられる。
またしても溢れそうな涙を瞬いて誤魔化し微笑んだ。
ありがとうございました。




