「仕事? 人が怖いから明日やる。世界の謎? 人が怖いからどうでもいい。──全部、明日の私に託した」:コミュ力ゴミの異世界奇譚
最新エピソード掲載日:2026/08/06
――今日もまた、誰ともまともに話せなかった。
「私、リーゼロッテ・リーディスティは、極度のコミュ障である」
「……赤ちゃんの頃は、そんなことなかったはずなんだけどね」
誰に言うでもなく、独り言がこぼれる。
唯一の友達は、廃墟に住み着いた真っ白な猫だ。白いから、ゆきちゃんと呼んでいる。
「ゆきー、ご飯買ってきたよ」
その声を理解しているのかどうか、猫は「にゃあ」とだけ返してくる。
「はぁ……ゆきちゃん、今日もかわいいねぇ……!」
思いっきり頬ずりをすると、露骨に嫌がられた。
――死にたい。唯一の友達なのに。
……はぁ。今日もどうしようか。いつもの狩りにも、そろそろ飽きてきた。遠出でもしてみようか。それとも、傭兵ギルドに顔を出して出稼ぎでもする?
……人、いっぱいいるよね。怖いよね、ゆきちゃん。
やっぱり、ここにいよう。うん、そうしよう。明日にしよう。なんだか天気も崩れそうだし、濡れるのは嫌だし、何より――人がいっぱいいるし。
明日から、頑張る。
*
コミュ障主人公、リーゼロッテ・リーディスティ、通称リリィ。
尋常ではないアーツとマギアの使い手である。マグギアの力すら借りず、その身一つでドラゴンを撃ち落とすマギアの腕前に加え、世界屈指の戦士が集う国・アルファポリスで世界最強と謳われるクロス・サーチバル・フィリックスすら成し遂げていない――否、世界において不可能とすら言われている【中央大陸への単独到達】を、既に果たしている。
それほどの存在でありながら、コミュ障という一点が災いして、人間社会にまともに馴染めずにいる。
リリィの明日は、どっちだ。
第1話「拝啓、今日の私へ。予定はどうなっていますか?」
2026/08/06 18:55