22.魔王降臨、そして…
アラタ「いっそさ~、俺の幸運値ー99999なら
この不幸体質で魔王とか呼べそうな感じもしないか?
俺、一度も魔王なんて見たことないんだけど。」
ひなた「アラタくん…そういうこと言うと、『フラグ』立つよ?」
冗談半分に言う。
アラタ「あはは、なんだよフラグって。
魔王イベントのフラグか何かか?
こんなんでさすがに立つわけないだろ~」
面白いのかケラケラと笑うアラタ。
しかし突如…
宿屋の窓の外の景色が一瞬にして
紫色の瘴気に覆われ、
禍々しい気が辺りを包み込んだ。
???「ふはははは…我が魔王ガリオンだ!
脆弱な人間ども。」
辺りに響くような低い声とともに空中に闇の気が渦を巻き、
そこから黒いマントを羽織った
威圧的な態度の魔王が姿を見せた。
ひなた「ほらぁ…フラグ立ったじゃん…アラタくん」
アラタ「いや…フラグ回収、早くね?」
呆れる私、苦笑いするアラタ。
ひなた「う~ん…いっそのこと、魔王無視してみる?」
アラタ「それはさすがにまずくないか?」
宿屋の部屋の中で冗談半分にそんなことを言ってると、
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
???「魔王、そこまでだ!!僕が相手になってやる!!」
ひなた「…? この声…」
アラタと2人で窓の外を覗き込み、声のした方を見つめる。
夜道のど真ん中に、あのアークベルで会った勇者と
その仲間たちが立っている姿が見えた。
ひなた「勇者様だね~」
アラタ「…そうだな。あいつもこの町に来てたのかよ…」
アラタがあからさまに嫌そうな顔をしている。
勇者「この僕、勇者フィオがお前を倒す!!」
高らかに声を上げ、聖剣を魔王に向ける。
魔王「面白い。ならその『勇者』とやらから葬ってくれるわ」
不敵な笑みを浮かべると、手から邪悪なオーラが渦巻き、
勇者たちに黒い鋭利な闇の刃が雨あられと降り注ぐ。
勇者「…くっ!」
勇者は聖剣で防ぎ、仲間のヒーラーが防壁魔法を展開する。
…が、それも束の間。
勇者「うわぁぁ!!!」
僅か数秒で防壁魔法が破壊され、
勇者たちが闇魔法の前にバタバタと倒れた。
ひなた「…秒だったねぇ~」
アラタ「秒だったな…」
2人で同じことを呟いて呆れ顔をする。
ひなた「勇者だし、もうちょっと粘れるかと思ったよ」
アラタ「でも、『あいつ』だしなぁ…」
宿屋の部屋でのんびりとそんな感想を2人で言う。
魔王「フハハハハ!!その程度か? 骨のないやつらだ。
このまま全て葬ってくれる」
高笑いし、今度は両手から邪悪なオーラが渦巻く。
勇者「ひぃ…っ!!!」
その魔王の姿に、勇者一行が尻尾を巻いて慌てて逃げだす。
ひなた「あらら…逃げちゃった。」
アラタ「うゎ…あれで勇者かよ…」
アラタが呆れたようにため息をつく。
魔王「滅びよ」
魔王の両手から先ほどよりも遥かに広範囲の闇の刃が降り注ぐ。
ひなた「おお…っと。」
アラタ「うお…っ!!」
宿屋にまでその攻撃が降り注ぎ、宿屋の一部が破壊され、
その衝撃で部屋が大きく揺れた。
途端、宿屋からも町からも悲鳴が聞こえ始める。
宿屋の主人「みなさん、急いで避難してください!!」
部屋のドアを開けて叫ぶ。
アラタ「あ、はい。ひなた。」
宿屋の主人の後を追い、私の手を引いて部屋から出ていく。
宿屋の中も騒然とし、部屋から人々が飛び出しては
慌ててみんな1階へ降りていく。
ひなた(う~ん…)
アラタに引っ張られるまま、
ただ平然とそんな周りの様子をのんびり観察する。
そうしていると、あっという間に宿屋の外へと出てきていた。
魔王の闇魔法により辺り一帯は崩壊し、
人々が逃げ惑っていた。
アラタ「うわ…なんだよ、これ…」
止まって私の手を離すと、その光景に呆然とする。
ひなた(まぁ、『魔王』だからね~)
そんなことを思い、ゆっくりと辺りを見渡す。
魔王「全て消し飛ぶがいい」
不敵な笑みを浮かべ、魔王が両手を手前に構える。
そこからさらに大きな闇のオーラが集まり始める。
アラタ「お、おい…さすがにあれはやばいだろ…」
そんな魔王の姿を見て怯えだすアラタ。
ひなた「…う~ん…そうだね。町が全部吹っ飛んじゃうかも?」
魔王を見てコテンと小首を傾げる。
アラタ「シャレにならないだろ、それは…。
…つか、なんでそんなに冷静なんだよ、ひなた。」
ひなた「え?魔王なんて何度も倒したことあるし。」
今度はアラタを見てコテンと小首を傾げる。
アラタ「あぁ…うん。この騒ぎですっかり失念してたわ…。
そういや、お前、そうだったな…」
魔王「滅びよ、人間ども!」
魔王が不敵な笑みとともに両手を振り上げる。
ひなた「全てを無に還せ…
無差別なる消滅!!」
その瞬間、魔王に向けて片手を勢いよく振りかざす。
パリンッーー!!
まるで何かが弾けるように、
魔王の両手に集まった闇のオーラが音を立てて霧散した。
魔王「なっ…」
アラタ「…え?」
魔王もアラタも、今何が起きたのかと…
信じられない光景に目を見開いて止まってしまった。
魔王「今…何が起きたというのだ…。我の力が…消滅した?」
信じられないといった様子で自分の両手を見つめる魔王。
アラタ「そんなのアリかよ…。規格外すぎるだろ…ひなた」
ポカンとした表情でこっちを見つめるアラタ。
ひなた「罪人を捕らえよ…
光の煉獄」
アラタの様子も気にせず、両手を開き、
胸元に両手の甲を向け、指の先端を合わせて静かに詠唱する。
すると、魔王の周囲に眩い光を放つ檻が出現し、
あっという間にその中に魔王を閉じ込めた。
魔王「な、なんだこれは…?!」
あきらかに動揺して焦る魔王。
ひなた「その中で己の罪を悔いるといい…」
目を閉じて静かに言うと…
ひなた「断罪せよ」
目を開くとともに、その光の檻が強烈な光を放ち、
周囲を白く染め上げた。
魔王「ぎゃぁぁぁあああ!!!!」
断末魔の叫び声を上げ、
魔王の体がその光によって灰へと還っていく…。
魔王「こんな…はずでは…。我は…魔王…ぞ…。
貴様ら…人間など…に…っ…」
ほとんど消えかかったその体で、こちらを見つめて声を絞り出す。
ひなた「…」
ただ黙って見つめ、魔法を使い続ける。
そして魔王は灰となり、完全に消滅した…。




