21.『私』のこと
夜になり、すっかり辺りは宵闇に包まれた。
宿屋に着くと、当たり前のようにベッドが2つある部屋を1つ借り、
2人で階段を上がって部屋に入る。
鍵をサイドテーブルに置くと、2人でベッドサイドに腰掛け、
これもまた当たり前のように、寝る時の対策として、
アラタに状態異常無効と、物理や魔法ダメージ耐性アップの魔法をかけた。
アラタ「いつもありがとう、ひなた。」
ひなた「どういたしまして~。」
いつもの如く、平然と魔法をかけ終えて、サラッと返事をする。
アラタ「でもこれさ…。
ひなたは、何でもないように平然とかけてるけど、
どっちもすごい魔法だよな?」
ひなた「そうかな?…う~ん…そうかも?」
小首を傾げて悩み、曖昧な言い方をした。
アラタ「はぁ…いつもこうなんだからな。
…お前らしいけどさ。」
呆れたように笑う。
ひなた「あんまり実感ないっていうか…。
私にはできて当たり前だし。」
不思議そうに小首を傾げる。
アラタ「なぁ、お前のこと、聞いてもいい?」
ひなた「私のこと?」
アラタ「そう。なんか、全然聞いてなかったなって思って。
…今更なんだけどさ。」
ばつが悪そうに苦笑いする。
ひなた「…ええと…アラタくんと同じ、
現代日本の転生者。とか?」
アラタ「あ、それはなんか分かった。
オーシャンビューとか。
ひなた、それ的なニュアンスのやつ、いくつか言ってたもんな。」
ひなた「…う~ん…。
あとは、ゲームクリアを何度もしてるとか?」
アラタ「…は?」
私の言葉に、ポカンと口を開けて呆然とする。
アラタ「いや…なんだよ、『ゲームクリア』って…?」
ひなた「え? ほら、この世界って、
ゲームみたいな作り、してるでしょ?
こういうメニュー画面とか、ステータスとか。」
操作して、自分の所に青い半透明のウィンドウ画面を出し、
メニューを開いてみせる。
アラタ「いや、それは分かるけど…。」
ひなた「だから、そのままの意味だよ、ゲームクリアも。
このゲームみたいな世界で、エンディングを見るんだよ。
そしたら、ゲームクリアになって、また最初から始まるんだよ。」
アラタ「…本当にゲームみたいだな。」
ひなた「だから、さっきからそう言ってるよ?」
小首を傾げてクスッと笑う。
アラタ「そうなんだけどさ…なんか、実感湧かないっていうか?」
ひなた「ステータスとかよく普段から目にしてるのに?」
アラタ「いや、そうなんだけどさぁ…。」
頭を掻いて戸惑う。
アラタ「それと、『また最初から始まる』ってなんだよ?」
ひなた「ほら、あれだよ、『強くてニューゲーム』!
転生前の現代日本のゲームにもよくあったよね、この機能。」
アラタ「あぁ…ゲームのクリアデータを引き継げるやつか。」
ひなた「そうそう、それ。」
アラタ「…いや、それ…何度も繰り返してんのか?ひなた…。」
ひなた「そうだよ?」
コテンと小首を傾げる。
アラタ「…はは…どおりで強いわけだな、ひなたは…。」
納得しつつも、乾いた笑いをする。
アラタ「でもさ、『エンディング』っていうのは?
何をすると、そのエンディングになるんだよ。」
ひなた「う~ん…今のところ、『魔王や邪神を倒す』ことかな?」
アラタ「…は?」
私の言葉に、またポカンと口を開けて呆然とする。
アラタ「…いや…魔王?…邪神?
待て待て。それ…倒せんの?」
ひなた「私は倒せるよ?」
不思議そうに小首を傾げつつ答える。
アラタ「…あ~…うん。ひなたは、な。
…じゃあ、他の奴らは?」
ひなた「え?…う~ん…どうなんだろうね?
見たことないし、聞いたこともないから分からないかな。」
アラタ「…あ~…お前の規格外の強さはよく分かったわ…うん。」
ひなた「…?」
アラタの言葉に、より不思議そうに小首を傾げる。
アラタ「俺もお前くらい強かったら、何か変わったのかな…。」
ぽつりと呟く。
ひなた「う~ん…強くなるその前に、
死に戻りしちゃって、強くなれないんじゃないかな?」
コテンと小首を傾げる。
アラタ「ほんと…それな。」
力なく笑う。
ひなた「でも、今は私がそばにいるから、
前みたいに簡単には死なないでしょ?」
アラタ「そっちもほんと、それな。」
クスッと微笑む。




