20.『ヘキラの想い』
ひなた「そろそろ髪も服も乾いてきたね」
自分の髪の毛を触ってから服をあちこち触り、確認する。
アラタ「そうだな」
アラタも自分の髪や服を触って同じように確認した。
ひなた「日も沈んできたし、宿屋探しに行こうか」
海辺の岩場から立ち上がって服を整える。
アラタ「だな。行こう」
2人で浜辺を後にしてシーベルクの町中へと再び戻った。
…
宿屋に向かう途中、不思議な雰囲気のお店を見かけた。
周りのお店とはなんだか少し雰囲気が違う気がする。
不思議に思い、フラフラとそのお店のそばに向かった。
アラタ「ひなた?」
後ろからアラタがついてくる。
お店の前に来ると店先の物を眺める。
キラキラした不思議な道具が、いくつもディスプレイに飾られている。
ひなた(用途がよく分からないなぁ…。
魔道具とか、そういうのなのかな?)
しかし、明らかになんかよく分からない置物っぽい物もある。
アラタ「面白いな、これ」
アラタも興味津々にディスプレイを覗き込む。
???「おんや。入っておいで~、嬢ちゃんたち」
開け放たれた扉の奥の方から、
のんびりとしたお婆さんの声が聞こえた。
ひなた「お邪魔しま~す」
その声に、遠慮気味にゆっくりと店内に入っていく。
アラタ「お邪魔します…」
続いてアラタもおずおずと店内に入る。
ひなた「わぁ…」
両脇の棚に並ぶ、数々の不思議な道具たちに感嘆の声が漏れる。
キラキラ輝くクリスタルのような物、
オルゴールのような形状の物、
変な顔をした置物…
アラタ「へぇ…色々あるな」
アラタも同じように感嘆の声を漏らして棚のアイテムを眺める。
店主のお婆さん「好きに見てっておくれ」
お店の一番奥の椅子で座るお婆さんが微笑んで声をかけてくる。
ひなた「はい、ありがとうございます。」
微笑んで返事をすると、再びゆっくりと店内の棚を見て回る。
そんな中、お店の角のサイドテーブルに乗った一つのアイテムが、
ふと目に留まった。
ひなた(これ…不思議。虹色に光ってる…何だろう…?)
しずく型のカット加工をされたその黒っぽい石のようなアイテムは、
見る角度によって微かに虹色を帯びていて、なんだか神秘的に見える。
ひなた「…綺麗。」
2つ並んで置かれていたそのアイテムの一つを手に取り、
顔の前であちこち角度を変えて眺めた。
店内の光を反射し、
そのアイテムは綺麗な虹色を本体にキラキラと浮かび上がらせる。
アラタ「ほんと、綺麗だな。なんだろうな、この石みたいなの。」
アラタも不思議そうにして横からそのアイテムを覗き込む。
店主のお婆さん「そのアイテムが気に入ったかい?
それは『ヘキラの想い』といってね、古式の通信アイテムなんだよ。
お互いに1つずつ持っていると、離れた場所でも魔力を流せば、
相手の居場所がその魔力の波動によって分かるって代物さ。」
店主のお婆さんが丁寧に説明してくれる。
ひなた(『ヘキラの想い』…通信アイテム。)
店主のお婆さんの説明を聞きながら、そのアイテムを眺める。
店主のお婆さん「まぁ、相当な純度の高い魔力を流さないと
反応しないから、今じゃできる人なんてほとんどいなくて、
ただの対の綺麗な飾り石になってしまったけどね。」
ちょっと切なそうに笑って、私の手元にあるそのアイテムを眺める。
ひなた(純度の高い魔力かは分からないけど、
この世界で何度もゲームクリアしてるし、
私の魔力って高いは高いよね。
…もしかしたら何か反応とか返ってくるかな?)
気になって、そのアイテムを手に持ったまま、
そっとそこへ魔力を流し込んでみた。
すると、その『ヘキラの想い』はキラキラとした虹色の光を強く放ち、
それが伝播するかのように、サイドテーブルに置かれた
もう一つの『ヘキラの想い』もキラキラとした虹色の光を放った。
アラタ「お?…すげぇ…」
感嘆の声を漏らし、
2つの『ヘキラの想い』を食い入るように見つめる。
店主のお婆さん「…おんやまぁ…!
初めて見たよ、こんな綺麗に光るところなんて。
ここ数十年一度も光らなかったのに…。
お嬢ちゃん、あんた、すごい子だねぇ~」
目を見開くと、店主のお婆さんも
私の手元とサイドテーブルの両方を見つめ、
感嘆の声を漏らした。
その光の後、サイドテーブルに置かれた
もう一つの『ヘキラの想い』の位置情報が
青色のウィンドウ画面にアイテム情報とともに表示された。
アラタ「すごいな。俺もできたりしないかな」
その画面を覗き込むと、アラタはサイドテーブルに置かれた
もう一つの『ヘキラの想い』を手に取り、
自分の魔力を流し込んでみた。
…が、弱かったのか、一瞬なにか淡い光を放っただけで、
何も起きなかった。
アラタ「あー…うん。やっぱダメか。」
ははっと苦笑いする。
ひなた「でも、こうやって2人で持ってたら、
私からはアラタくんのこと、どこからでも分かるようになるから
いつでもそばに行って助けられるね?」
アラタ「…『いつでもそばに』。」
自分の手元を見つめてぽつりと呟く。
店主のお婆さん「ふふ、だいぶ気に入ったようだね。欲しいかい?
どうせうちじゃ、誰も使い物にならないようなお飾りのアイテムさ。
久々綺麗な虹色の光も見せてもらえたし、いいよ、持っていきなさい。
良いものを見せてもらえた私からのお礼だよ。」
私とアラタを見つめて満足そうに笑う。
ひなた「え?いいんですか?ありがとうございます♪」
店主のお婆さんに笑顔を向けてお礼を言い、ぺこりとお辞儀した。
アラタ「え…マジですか?ありがとうございます。」
アラタもお礼を言ってぺこりとお辞儀をする。
その後、お婆さんのそのお店で、
MPポーションなどの消耗品アイテムをいくつか購入し、
そのお店を後にした。




