14.平和な朝と凶悪な呪い
太陽が昇り始め、部屋の窓から柔らかな陽光が差し込んできた。
アラタ「ん…。」
その日差しにゆっくりと目を開ける。
アラタ「…」
眠気眼でぼーっとしたまま、ただ天井をしばらく眺めると、
顔を横向きにしてひなたの方を見た。
ひなた「…すぅ……」
こっちを向いて横向きになって、
小さな寝息を立てて寝ている姿が目に映った。
アラタ「ふっ…」
思わずクスッと微笑む。
アラタ(こんな平和で穏やかな朝を迎えたのも初めてだな…)
ひなたの姿をじっと見つめながらそんなことを思う。
アラタ(こうして、誰かが無防備に寝る姿を近くで見ることも。)
ひなたの姿を見つめ、穏やかな笑みを浮かべる。
しばらくそうして、ひなたをただ見つめていた。
アラタ「起きるか…」
そして、ひなたのベッド側の方のベッドサイドに腰掛けるようにし、
ベッドから降りる。
そして、歩き始めようとしたその時…
アラタ「…っ?!」
一気に視界が歪んだ。体がぐらつき、強い吐き気を催した。
アラタ(な…んだよ…これ…)
そのまま吐き、意識が朦朧としてくる…
体が傾いていく…
アラタ(…俺…また…死…)
ひなた「…ぅぅん…アラタくん…?」
起きたてで頭がぼーっとする中、飛び込んできた光景は、
アラタが吐いて、倒れそうになる姿だった。
ひなた「アラタくん…っ!!!」
一気に目が覚め、気づいたら反射的にベッドを飛び出し、
しゃがむように下からアラタを勢いよく抱き留めた。
アラタ「ぅ…ぁ…」
アラタの体から紫色をしたドクロマークのような炎が
いくつも出ては消えていく。
ひなた「これ、奈落への誘い…」
黒魔術の凶悪な呪い魔法…。
ひなた(私だって…浄化魔法を使えないわけじゃない!!)
アラタをぎゅっと腕の中へ強く抱き寄せる。
ひなた「穢れを祓え…
無垢なる天使の浄化…!!」
詠唱とともに、体から眩い光が辺りに放たれ、
アラタを純白の光が包み込むと、周囲に純白の羽と光の粒が
ふわりと舞い、禍々しい気を一気に吹き飛ばした。
光が落ち着いてきた頃、アラタの顔色が良くなり、
ゆっくりと目を開けた。
アラタ「…ぁ…ひなた…?」
まだどこかぼーっとした顔で私を見つめるアラタ。
ひなた「うん。もう大丈夫だよ、アラタくん。」
見つめ返して柔らかく微笑む。
アラタ「…俺…今…」
困惑するように、目を泳がせる。
ひなた「うん。もう大丈夫だから。」
そっと抱き寄せ、背中を優しくトントンした。
アラタ「…っ」
ぎゅっと強く抱き返し、私の肩に顔を埋める。
無言でただ、アラタの背中を優しくトントンする。
しばらくそうしていたが、
アラタがそのままずっと動かなくなった。
ひなた「アラタくん…?」
アラタ「…ごめん。なんか…色々込み上げてきて…」
私の肩に顔を埋めたまま、更に強くぎゅっと抱きしめてきた。
ひなた「うん」
優しい声色で返事をする。
アラタ「…俺…こんな…いつもいつも…迷惑かけてばっかで…」
泣きそうなほど震える声で、絞り出すように小さく言う。
ひなた「迷惑じゃないよ。私も解けたらいいなって思ってるって、
昨日も言ったでしょ?」
アラタ「うん…うん…っ」
こくこくと頷き、私のことをより強く抱きしめて肩に埋まった。
アラタ「ありがとう…ひなた…」
ぽつりと優しく呟く。
ひなた「うん」
アラタの顔に自分の顔を寄せ、目を閉じ、こくりと頷く。
アラタ「…はぁ…。ごめん…もう少し、このままでいたい…」
浸るようなため息をもらし、私の肩に顔を擦り寄せ、もっと埋める。
ひなた「うん、いいよ。アラタくんが落ち着くまで。いくらでも。」
優しい声色で言い、アラタをもっと抱き寄せた。




