12.幸運値ー99999の効力
アリシアが騎士団長とともに去り、アラタと2人きりになった。
アラタ「でも、ひなた…本当にいいのか? ほら、予定とかさ…」
ひなた「うん、大丈夫だよ。何しようとか特に予定決めてなかったし。」
こくりと頷く。
アラタ「それならいいんだけどさ。
なんか、ずっと俺に付き合わせちゃってるなって思って申し訳なくて…」
ひなた「全然大丈夫だよ。私もアラタくんのその状態は気になるし、
なにか解く方法、見つかったらいいなって思ってるから。」
アラタ「あぁ、ほんとありがとう、ひなた。」
ひなた(緊急クエストの件もあるから、
実際、その問題が解決するまでそばにいないといけないし…)
あの、私の命と世界の命運の懸かったクエストのことを思い出す。
ひなた(アラタくんの幸運値を0に戻すのが達成条件。
できなければ私の命と世界が終わる…か。
改めて考えると、随分な重い任を一人に負わせてきたよね…神様。)
今更ながらに『これは人に負わせるようなことなんだろうか』
とか、思ってしまった。
ひなた(いや、後悔したわけじゃないんだけどね。)
そんなことを思っているとアラタが…
アラタ「なんか安心したら、お腹空いてきたな。
食堂に行かないか?」
ひなた「あ、うん、そうだね。」
そうしてアークベルの中央通りに向かおうとした時だった。
突然、2人の頭上の空から巨大な隕石が落下し…
アラタ「…え?」
ひなた「…っ!!」
一瞬で双剣を抜剣、そのまま剣技を放って無数の斬撃を隕石に放ち、
粉々に砕いた。
アラタ「…???」
あまりの早業に、目をぱちくりさせてポカンとするアラタの頭に、
小指サイズになった小さな隕石の欠片がコツンと当たって落ちた。
アラタ「ひ、ひなた…今…」
驚愕するアラタに目もくれず、
無言でそのまま静かに双剣を鞘に収める。
アラタ「え?あ…これ…もしかして…隕石…?」
混乱しつつも近くの小さい隕石を拾って見つめる。
アラタ「俺の幸運値のせいで起きた不幸…だよな?」
ひなた「たぶん?」
小首を傾げる。
アラタ「え?嘘だろ…。
あんな急なやつを一瞬で対処したっていうのか…ひなた…」
ひなた「そうだね」
アラタ「いや、『そうだね』って…そんな当たり前みたいに…。
俺一人だったら普通に死んでたやつ…。」
ひなた「ほんとだね。死に戻り回数増えてたかも?」
平然とまた小首を傾げる。
アラタ「ははっ…マジで頼もしいわ、ひなた。
いや、ほんと…ありがと。」
頭をかきながらお礼を言う。
ひなた「うん。それじゃあ、食堂に行こうか。」
こくりと頷いて中央通りに向かう。
…
しかし、この後も『馬車の暴走』、『料理に猛毒混入』、
『強盗が襲ってくる』などなど…
急に次から次へと不幸なトラブルが発生し始めた。
大して問題になるようなものでもなかったので
全部簡単に対処できたが…
ひなた(なんで急にこんな立て続けに…)
食事を終えて2人で歩きながらそう考えていると、アラタが…
アラタ「あ~…うん。まぁ、こんなもんだよな…俺だし。
聖女様のいるさっきまでが運良すぎたんだよ。
本来の俺ってこんな感じなんだ。
ほら、幸運値ー99999だから
こうやって普段だとあり得ないくらいに
次々と不幸がやってくるんだよ。」
ひなた「あ…なるほど?」
ひなた(これがアラタくんの『普通』なんだ…。
私がいなかったら今日だけで3~4回は死んでたってことかな…)
アラタ「ひなたがいなかったら、
俺、今日4回は死に戻り確定してたわ、これ。」
あははと苦笑いする。
ひなた(当たってた…)
アラタ「マジ、俺のそばにいてくれてありがとう、ひなた。
ほんと、お前がいてくれるってだけで心強いよ。」
こうしてアラタに降り注ぐ数多の不幸を退けていき、
夜になり、なんとか一度も死に戻りすることなく、
無事に宿屋に辿り着いた。
ひなた「すみません。
ベッドが2つある部屋を1つ借りたいんですけど…」
宿屋の主人「あいよ、ちょっと待ってな。今、確認するから。」
宿屋の主人が背を向けて空き状況を確認し始める。
アラタ「あ、いや…ちょっと待って。」
ひなた「ん?どうかしたの、アラタくん?」
後ろを振り向いてアラタを見やる。
アラタ「その…ほら…2人きりだし…
それに、俺とひなた…男と女だし、さ…その…。」
もごもごと言いづらそうに躊躇いがちに言う。
ひなた「え?うん。そうだね。それで?」
不思議そうに小首を傾げる。
アラタ「いや…だから、ほら…よくないだろ?
男女2人だけで部屋にいるとか…。」
ひなた「うん?
でも、私とアリシア様とアラタくんの3人で
同じ部屋に泊まったこともあるよね?」
また不思議そうに小首を傾げる。
アラタ「あるけど…いや、そうじゃなくて…
これは別問題だろって…」
ひなた「どうして? なんで今更、変に意識してるの?」
アラタ「いや…だから…」
宿屋の主人「あいよ、お嬢ちゃん、部屋の鍵。
202号室だ。」
アラタがもじもじしている間に
宿屋の主人が部屋の鍵を渡してきたので、
代金を払って鍵を受け取り、上り階段の方へ向かう。
アラタ「あぁ…! 聞いてたか、ひなた?!」
戸惑いながらも後をついてくる。
私は気にせず宿屋の2階へと上がっていった。




