第106話 火山
23階層は洞窟で、ウルフの群が出てきた。数は脅威ではあるんだが、それよりもまたレオンとドランがトラップを踏みまくって大変だった。
アリサが斥候として動こうとするより先に勝手に二人が動くせいだ。わざとか? お前らわざとやってるんだろ?
一番疲れているのはココだ。二人がトラップを踏みまくるせいで、ココは常時結界を張ってくれていた。
毒は俺たちには効かないからいいとしても、矢が飛んできたり、氷や石などが飛んでくると怪我はする。
超回復があると言っても痛いのは嫌だからな。
24階層は湖で、またアシュレイが出してくれた船で渡っていった。6階層と違って端に陸もないし、船以外で向かうとしたら泳ぐしかない。水中に引き摺り込まれるのは怖いし、水の中など戦える気がしない。ということで、さっさと次の階層へ行くことにした。
「ジャーン! どう? これさ、アシュレイの装備見た時から憧れてたんだよね〜」
防熱難燃素材でできた黒く艶々した生地のブーツに鎧、ローブを羽織ってレオンが決めポーズをとった。
誰が一番格好いいかと言ったら、やはりアシュレイがダントツだが、レオンもなかなか様になっている。
そして、ドランがアイテムボックスから出したのは、全員分のドランお手製マスクだ。
「これはレオン、こっちがアリサ、これがココでこれがアデル、で、これがアシュレイで、こっちは俺だ」
同じものを人数分作ったわけではなかったようだ。
「はあ? なんだこれ」
俺が渡されたマスクには、『アデル』と赤ででっかく名前の刺繍が入っていた。自分の名前を晒しながら歩くとか嫌なんだが……
「可愛い。ドランありがとう」
「素敵ね」
「素晴らしいです」
「いいね〜」
アリサのマスクには端にウサギの刺繍が入っており、ココは花の刺繍だ、アシュレイのは蔓のような模様になっており、レオンのはポチの刺繍だ。ドランのは家紋っぽいものだった。
「なんで俺だけ名前なんだよ……」
「家紋にしようとしたんだが、分からなかった。時間もなかったから無難に名前にしておいたぞ」
どこが無難なんだよ。もっとも奇抜だろ……
せっかく作ってくれたのに文句を言うわけにもいかず、仕方なく俺は名前を晒しながら25階層の火山地帯に足を踏み入れることになった。
他の冒険者が見当たらないのがせめてもの救いだ。
「暑いね〜防熱ってくらいだから、これ脱いだら本当に火傷するんだろうけど、あれみたい。炎天下の車の中。ずっといたら熱中症になっちゃうやつ」
「サウナじゃなくて?」
「あ〜、サウナも近いかも。冷水浴びたくなるよね」
「プール行きたくなってきた」
「流れるプールとかいいよね〜」
レオンとアリサは何かまたよく分からない話をしているが、防熱のローブを着ていても本当に暑い。このマスクがなければ、息もできないんだろう。
長居はしたくない階だな。
レオンが冷気を広げると、それなりに冷えてはくれるんだが、8階層とは違ってマグマの場所は完全に岩にはなってくれない。
直線距離を最短で進むことは諦めて、たまに襲いかかってくる体が燃えているウルフや、鹿のような魔物を倒しながら下層への階段を目指す。
ドランは戦いたがったが、ドランが戦いだしたらマグマに落ちそうだ。いくら人間辞めているとはいえ、マグマに落ちたら死ぬだろう。ポチに睨みを効かせてもらい、ドランを抑え込みながら魔法攻撃で魔物を倒しつつ先を急いだ。
ポチ、お前は熱くないのか? ケルベロスだからなのか、ポチは防熱難燃の装備などなく普通に地面を歩いていった。マグマはピョンっと飛び越えている。
熱さに強いボディは正直羨ましいが、そんな魔物のような体にはなりたくない。
「次は涼しいといいね〜」
「そうだな。この暑さは長くいると体に堪える」
ドランも暑さには弱いのか。
「さっきの湖に潜りたい気分」
「危険ですよ」
「安全であれば私も潜りたいわ」
湖か。俺はどっちも嫌だな。ゴーレムが闊歩する神殿が一番よかった。涼しかったし空気は乾燥していたが、臭くも汚くもなかった。
「早く抜けよ〜」
「「「賛成!」」」
満場一致で俺たちは先を急いだ。
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