騎士VS古い悪魔 1
「今の音は……」
王宮の中、王への報告を終えた後、騎士団に戻ろうとしている団長たちの耳に甲高い音が耳に入ってきた。音がした方を探るために、魔気の流れに集中して、音が発生した中心地を探る。彼らは音の中心地がこの王宮の敷地の門の方だということに気が付いた。このタイミングで、門の警備をしている兵士が、他の騎士を集めようとしているとなれば、その理由はおそらく、あの古い悪魔がこの王宮の前に来たということかもしれない。そもそも、一人で相手できる場合は、この音を鳴らす必要がないのだ。そうなると、やはり、あの悪魔が来たと考えるのが一番可能性が高いだろう。そして、その可能性に三人ともが辿りついた。そして、その可能性に辿りついた時点で全員の顔が青ざめる。一人で相手できる敵ではないのだ。
「急ぐぞ」
騎士団長の声は落ち着ているが、その顔はその声に似合わないほど青ざめている。しかし、それは自分たちも同じだと理解していた。なぜなら、顔が青ざめているだけではなく、手先足先が冷たくなっているのがわかるのだ。心臓は動機を起こしている。自分たちがこれから死ぬかもしれないという覚悟をしなくてはいけない。今までの犯罪組織からの刺客から人を守るとか、犯罪組織を攻撃するとか、そういうレベルの話ではなく、古くから恐れられている悪魔の相手だ。それも、殺すことができなくて、封印されていた者だ。そういった脅威から、この王宮を、この国を守らなくてはいけない。
彼らはその恐怖心を理解しながら、それでも彼らは戦うという選択肢を取るしかなかった。そして、それしか道はないのだが、それは彼らが自ら選んだことでもある。こういうことが起こると知りながら、騎士団に入ったのだ。ただただ格好いいから騎士団になったわけではない。
「やはり、時間稼ぎでしたか。仕方ありませんね。貴方たちの全力を出せるように待ちましょうか」
門番の騎士だけでなく、彼の周りには他の騎士が詰まってきていた。全員が剣を抜いて、古い悪魔の方に剣先を向けていた。最初に騎士と同じく、全員が恐怖心を持っていた。それは古い悪魔が、それだけの数の騎士に囲まれても、その場から動こうともせずに、彼らを注視しようともしない。彼らからのどんな攻撃も簡単に捌くことも回避することもできると思っているのだ。そして、騎士たちも悪魔との戦力の差を理解しているのだ。
「それだけ集まっているのに、私には勝てないと考えているのですか。貴方たちはそれだけ集まっても、私には勝てないと思っているのですか。同じ装備ということは、集団で戦う術を訓練してきたのではないのですか。それとも、誰も戦うつもりはないのですかね」
悪魔はいい加減、人数も集まって、そろそろ攻撃してくるかと思っていたのだが、一人も攻撃してこない状況に飽きてきていた。人数だけが集まっていて、剣を構えているものの、誰も攻撃してこないのだ。彼は技術や文化がどれくらいの進化をしているかを見たいだけなのだ。待たされ続えけるだけの状況に耐え続けることはできないのだ。しかし、この状況で今から仕掛けるのは、相手の行動に我慢ならなくなったとわかってしまい、気が短いと思われるかもしれない。そう思われるのは、自分より格下の相手の作戦に乗るような気がしてしまい、自ら攻撃することはできなかった。
そして、ついに団長たちが到着した。団長の視界の中には、全く動かず、剣を構えたままの騎士たちと、その正面につったままの男が一人いた。団長はすぐにそれが悪魔だと認識した。
「お前たち! 負傷者はいるか?」
「いえ、向こうからの攻撃は一度もありませんでした。こちらからの攻撃を待っているようです。ただ、イラついているようではありますが」
「よし、ではこれより、皆で攻撃を始める。相手は古い悪魔だ。我々はここで死ぬことになるだろう。だが、差し違えでも、この脅威を取り除かなくてはいけない。ここまでの訓練を思い出せ! 我々は脅威から国を守るためにやってきた! 我々が負ければ、この国は亡ぶだろう。だが、そんなことにはさせない! 我々の命と勝利と王へと捧げるのだ!」
団長の声に騎士たちは大声を出していた。声が重なり、辺りをびりびりと震わせた。
「ふむ。そろそろ、戦い時ということですかね。彼がこの者たちをまとめている者ですか。リーダーが来て、士気を高めていくのは昔と変わりありませんね。まぁ、昔は彼らが士気を上げているところに攻撃を放っていましたが」
騎士たちの様子を見て、悪魔は口角を上げていた。昔を思い出して、自分も温厚になったと考えたからだ。相手の行動を待つなんてことは昔はできなかったのだから。




