古い悪魔 4
古い悪魔、アデガルザは町の中を探索していた。彼は町の中にある店に片っ端から入っていくようなことをしていて、開店してない店も多いが、彼はお構いなしで、扉を開けて、中を訪ねる。料理を作っている店がほとんどであることはわかった。
彼の中であまり大きな変わりないと思ったのは、彼らの着る服だった。彼が封印される前に見た人間たちの服と作りは変わらないように見えた。それもそのはずで、見た目には、腕を通す場所に首を通す場所、胴体が抜けて、下に履くものは足が抜ける部分がある。見た目の作りは大きく変わることはないだろう。市民が着る服はどの時代もそう大きくは変わらない。ファッションを楽しむことができる余裕のある者たちが一般的なものではなく、変わった格好をしているのだが、この町にはそういう者を着るものは王宮に住んでいたり、そこで仕事をしている者ばかりだろう。
「なるほど。中々面白い文明の進化を見ましたね。しかし、ほとんど食文化ばかりが進化しているようでしたが。まぁ、生存に必要なところから進化するのは当然と言えますね。建物も昔に比べれば、かなり頑強に作られているようですし。そこらの魔獣では壊すことはできないでしょうね」
彼はあらかた町の中を見て、そんなことを呟いていた。最初に入るのを断られたストルエン商家の店にも入り、中にある商品にひとしきり感動した。そして、彼は残りの訪れていない場所に行こうとしていた。
彼が来たのは学園だ。学園の門は扉があるわけではなく、誰でも簡単に入ることができる。彼は視線こそ向けられるものの、止められることなく、学園の中に入った。学園内には学生がいるが、彼にはその概念はなく、似たような恰好をした人たちが集まっているというだけだった。しかし、彼らは話している一人の話を聞いて、魔法を使ったり、武器を振るったりしている。それを見れば、人間を見てきた彼はある考えに辿り着いた。
「これは、知識や技術を若者に託しているというのですか。これだけの人に自身の技術を、知識を継承して、それらをより進化させているのでしょうか。これは、まさか、こんな方法を編み出すとは思いませんでした。子供だけに継承することは昔からありましたが、こんな沢山の人に継承する方法があるとは……」
彼はこの施設に感動していた。人間は種族としては弱い部類だ。寿命も短く、非力。種族としての特性も他の種族に比べれば、大したものではない。他の種族も人間が弱いと考えるのは、蓄えた知識や技術が短い期間で途切れる可能性が高いということだろう。人間は器用に、様々なことを覚え、使うことができるが、寿命のせいでそれを長く扱うことができなかったはずだ。だが、これだけ大勢にそれを教えることができれば、人間という種族としてみれば、他の種族に劣らない力を持つことができるだろう。
「あの時の、人間の言葉が真実味を帯びてきますね。私を殺すのは、人間だと言われたのを思い出しました。これを見れば、彼はこれだけの未来を見ていたのでしょうか。しかし、人間ごときが私を殺すことなどできるはずがないのですがね」
彼は学園の中を歩いて、食堂の中に入り、また食事をしたり、図書館に入り本を物色したりしていた。本を見れば、彼の知っている昔のことも記されていた。自身の昔の話がこの時代まで語り継がれてるのは面白かった。知識の継承は伝承も含まれていたことに再び感動を覚える。彼はこの学園という施設にかなり感動していた。壊すのが惜しいと思えるくらいには、人間の努力の結晶といえるものだろう。
「ああ、本当に惜しいですね……」
彼は学園から出て、この町の最後の建物である王宮に足を向けた。
「失礼します。ご報告があります」
ノックの音を共に、王のいる部屋に三人の騎士が入ろうとしていた。王が彼らを部屋の中に招くと、全員が暗い顔をしていたことで、王は報告の内容を察していた。しかし、報告を聞かないわけにも、報告を言わないわけにもいかない。
「先ほどの報告。古い悪魔、アデガルザが復活したというのは本当でした。現在は、なぜか町の中を見ているようですが、いつこの国が終わるのかわかったものではありません」
報告したのは、副団長だった。彼の他には、先ほど部屋の中に入ってきた騎士と騎士団長だ。団長もその表情はかなり暗いもので、マスカレードの警戒ばかりしていて、悪魔の復活を許してしまったことも悔いていた。あの仮面に執着していなければ、ギブラッドの行動にも注意を向けることもできただろう。だが、後悔している場合ではない。古い悪魔の対処をしなくてはいけない。勝てるわけがないと知りながらも、騎士団は戦わなくてはいけないのだ。




